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読書日記(2024年1月)

さらさら読める再読本や、口当たりのいいエッセイばかりを読んだひと月だった。
仕事が忙しすぎて……ということでは全然なく、バルダーズゲート3にドはまりしているせいである。探索やゲーム内の書籍を読むのが楽しすぎて、年始から100時間以上プレイしているのにクリアまでまだだいぶ遠い。助けて。いや、やっぱ助けないで。

置かれた場所であばれたい|潮井 エムコ

 あなたが気持ちよく歌うそれは私の曲で、そのゴリラは私です。と喉まで出かかったが、たぶん相手には意味がわからない上に説明があまりにも面倒くさいので呑み込んだ。

私はゴリラ

noteでフォローしている潮井エムコさんのエッセイ集が出るというので勇んで購入。書籍化の過程をエッセイとして発信されているものも読んでいたので、手元に届いたときは「満を持して……!」という感じだった。ところどころ我慢できずににやにやしながら読む。
noteで読んでいた時はそれぞれ独立したエピソードに見えていたものが、本の形に連なることでなんというか、人の「人生」を読んでいるという実感があって二度おいしい。元気を出したいときに読み返そうっと。

物語のなかとそと|江國 香織

「いやあ、いいお骨を拾わせていただきました。私、もう長いことこの仕事をしておりますが、こんなに幸福そうなお骨は見たことがありません」

ほめ言葉――作家の口福 その四

収録作の一本一本が面白いことはもちろんなのだけれど、それらが集まった「1冊の本」として、『物語のなかとそと』はどこか特別だ。
虚構と現実が入り混じっているという状況が、ひとつの作品のなかだけでなくいくつかの散文をまたいで起こっているというのがキモなのだと思う。読みなれた江國さんのエッセイと、エッセイだと思って読んでいたら突然空想の世界に引きずり込まれる、夢の断片のようなフィクションと。その間に、ノンフィクションであるはずなのにぜんぜんそんな感じがしない江國さんの述懐(自分のお葬式でお骨を褒められたい、とか)が挟まってもう大変。何度読んでもつかみどころがなくて、もう一度読みたくなってしまう。

十二国記|小野 不由美

 最初に「ファンタジーを書いてください」と言われたときに、なんとなく楽そうだな、と思いました。実際に書き始めて、実は「ファンタジー」がなんなのか、ぜんぜんわからない自分に気づきました。(中略)
 結局、なんなのかよくわからなくて、首をひねったあげく、「異邦または、異邦人の物語」と勝手に決めることにしました。

『月の影 影の海』あとがき

1月頭、『月の影 影の海』の感想ツイートを契機に十二国記がTwitterを席巻しており(私のタイムラインでは)、猛烈に読み返したくなって読んだ。ツイートの中で描かれる陽子があまりに健気だったので、彼女が活躍するやつを……(『月の影 影の海』、『風の万里 黎明の空』、『黄昏の岸 暁の天』)。

初めて読んだ高校生のころは主に陽子や楽俊、泰麒ら若者主人公へ感情移入をしていたけれど、今読み返すと彼らを応援しながら、その周りの大人たちの信念や葛藤にさらに心打たれる。月渓や梨耀や李斎や、恭国王宮の名もなきげじょの長や。

以前も書いたけれど、小野さんのあとがきがとても好きだ。物語に対して潔癖で誠実な姿勢がにじみ出ていて。

ちなみに年始のタイミングで同時に、「十二国記シリーズの読む順番」がバズっていて、私なりのベストを思わず考え込んでしまった。
今のところ⓪①③②④⑥⑦⑧⑤→最新刊、です。自分が実際に読んだ順番にめちゃくちゃ影響されている。

それにしても本棚に並べて写真を撮るときに初めて気づいたのだけれど、ホワイトハート文庫のカバー、めちゃくちゃ丈夫だな!? 20年近く前に購入してから何度も何度も読み返しているのに、ぜんぜんくたびれていない。
それだけ長いこと読者が物語と付き合うことを想定しているということなのかしら。なんだかじんとする。

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