【詩】澱―おり―
澱が溜まっていく
怒りの、憎しみの、悲しみの、不安の、失望の、
諦めの、煩わしさの、疲弊の、孤独の、絶望の、
そういったものどもの、澱が溜まっていく
心だけでは飽き足らず
肺にも、澱が溜まっていく
数十年かけて蓄積した澱は、この肺を蝕み
澄んだ空気を取り込もうとしても
もはや、肺の奥まで換気する力は無く
それでもどうにか深呼吸の真似事をしてみたとて
ただ体内でほんのちょっと舞い上がり、撹拌されるだけで
また静かに、澱が元の場所へ降り積もるだけなのだ
澱が溜まっていく
呼吸ができなくなっていく
死とは、呼吸しなくなることだから
いつか、澱が私を殺すのだろう
それは、澱が肺を満たし、気管から喉へせり上がり
ついには口から溢れ出すときだろう
溢れ出し、溢れ出し
この身体が干からびて朽ちるほどに澱が溢れても
世界を汚染し尽くすだけの力も体積も無いだろう
澱が溜まっていく
怒りの、憎しみの、悲しみの、不安の、失望の、
諦めの、煩わしさの、疲弊の、孤独の、絶望の、
つまりは生きることの、澱が溜まっていく
そして、息ができなくなる
作品を気に入って下さったかたは、よろしければサポートをお願いします。創作の励みになります。