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【詩】いつか菓子折を

歓喜も開放(解放)も、始まりの中にはない
歓喜も開放(解放)も、終わることの中にしかない

いつか終われると知っているから
いつでも終わらせられると知っているから
どうにか始まりの中に飛び込んで
どうにか続けていられる

いつも、何に対しても
“これ”が終わることを夢見ていた
入社初日、まだ仕事の大変さにも人間関係にも悩まず疲弊もしていないのに
いつか自分の意思で退職する日に菓子折を配ってまわることを妄想しては
そのことだけを励みに心を浮き立たせていた

いつかこの生を終える日も
菓子折を配ってまわりたい
わたし、やっと辞められます!
って、満面の笑みを振りまいて、高級クッキーを配りたい

いつかちゃんと終わりが来る
ああ、なんて喜ばしく軽やかなことだろう
いつまでも続いていくことほど恐ろしいことはない
終わらせられるかどうかもあやふやなままじゃ
恐ろしくて何も始められやしない

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