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【詩】笑う執行人

目には目を、歯には歯を
それ以上の報復をしてはならぬ
それ以上の罰を与えてはならぬ

子どもを放置して餓死させた親には
餓死の刑を

子どもを夜気に放り出して死なせた親には
凍死の刑を

子どもに薬物を投与して殺した親には
薬物注射の毒殺刑を

子どもを殴って殴って殴り殺した親には
撲殺刑を

執行人は、無邪気に笑う

死刑囚を鎖で繋ぎ、ぎりぎり手の届かぬところに
炊きたて飯と香しく温かな味噌汁を置きながら
死刑囚に冷水を機械的にざばざば浴びせながら
死刑囚の腕に、青く輝く薬物をじわじわ注射しながら
死刑囚の顔を体を手足を、機械仕掛けの金属バットで殴りながら

執行人は、無邪気に笑って問いかける

ねえ、いまどんな気持ち?
いまどんな気持ち?

執行人は突如、怒鳴りつける

お前がやったのはこういうことなんだよ!

そしてまた、執行人は無邪気に笑う

あ、怒鳴ってごめんね
怖かったねえ、よしよし
ねえ、いまどんな気持ち?
いまどんな気持ち?

目には目を、歯には歯を
子どもをわざわざ作っておいて
いたぶり殺した奴に情けは無用
けれど、目には目を、歯には歯を
それ以上の報復をしてはならぬ
それ以上の罰を与えてはならぬ
だから執行人も、これ以上のことはできないのであった
 



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