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【詩】アンバランス

地軸の傾いた地球のてっぺんに
片側にしか傾かないシーソーひとつ

今日も、愛を履き違えた人間たちが
「愛してる」「愛してる」と叫びながら
腰掛けたシーソーと地面の間に愛する者を挟み込んで
ぐりぐりとすり潰している

ここは、片側にしか傾かないシーソーに支配された世界

すり潰された被害者が血まみれになりながら
シーソーの下から何度も何度も声を上げて
ようやく、本当にようやく
加害者は、ちょっと腰を浮かしてみて
「もうしない」と善人面をする
ここは、そんな世界

何十年も愛に見せかけた暴力を楽しんだ加害者が
してはならないことを今更ながらやめただけで
傍観者という名の加担者が
「もうじゅうぶん反省したのだから」と加害者の頭をなでなでする
ここは、そんな世界

そうして甘やかされ増長した加害者が
そのうち「まだ許してもらえない」と被害者面を始める
ここは、そんな世界

体じゅうをすり潰され、血まみれになった被害者は
血まみれで傷も癒えぬまま、いつものように
我慢と譲歩を求められる

水に流せ
歩み寄れ
いいかげん忘れろ
もう散々謝っただろ……etc.

「ごめんね」のあとの「いいよ」を強要されたなら
幼子だって、その理不尽さに怒りを燃やすだろうに

ここは、片側にしか傾かないシーソーに支配された世界

だから今日も、地軸は傾いたまま

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