見出し画像

【詩】ちゃぷん、ぽわん

一人用の土鍋から
澄んだ昆布出汁の香りと
熱い湯気が立ち上る

その土鍋の昆布出汁に

ちゃぷん

と、湯豆腐が浸かっている

墨色のとんすいに
土鍋から昆布出汁を取り分け
醤油を少々垂らす

そこへ

ちゃぷん

と、湯豆腐をよそう

薬味も、濃いタレも要らぬ
昆布出汁と醤油の香りのみを纏った湯豆腐を
ひとくち

ぽわん

湯豆腐で、わたしは

ぽわん

となる

舌、口の内壁、喉、食道、胃腸
体じゅう、手足の先まで、脳の隅々まで

ぽわん

となる

これが、湯豆腐の醍醐味である

湯豆腐の第一効能は
大豆のたんぱく質を摂れることではなく
この、

ぽわん

なのだ

作品を気に入って下さったかたは、よろしければサポートをお願いします。創作の励みになります。