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【詩】我、奇蹟を願はれ

奇蹟を願はれた
露程も信じてゐない奇蹟を

奇蹟を願はれた
露程も望んでゐない奇蹟を

奇蹟を願はれるとは 己を否定されること
今のお前では駄目なのだと
普通にならなければ駄目なのだと

広い畳敷き
白けた心で
妄想で織り上げられた祈りを聞き

蝉時雨
冷えた心で
舌を刺す得体の知れない水を飲み下し

神を憎んだ

露程も信じてゐない奇蹟を願はれる者は
露程も望んでゐない奇蹟を願はれる者は
冷えた心から
血を流し続けるしかないだらう

開け放たれた障子戸の向かうで
空は紅く燃へ
爛れゆく色は
何時か見せられた マリアの涙の如く
矢張り
私を救ひはしなかつた

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