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月と初風

虫たちの音色が、薄まった夏の香りをさらに遠くへ運んでいく。

風の色が変わったことを肌で知る夜。

今日の雲は、表情豊かだった。

綿わたをゆっくり引き裂いたような雲と、小さな魚の群れのような雲と、ふかふかのクリームパンのような雲、他にも多くの雲たちが大きさも高さもばらばらに空に浮かんでいた。

広い空を見渡すと、どこもかしこも雲だった。

(描けないけれど)一枚の絵に残しておきたいほど面白く、(描かないけれど)描く前から筆を投げ出したくなるくらいに繊細で細やかだった。

ダイナミックな夏の雲がすでに恋しいけれど、これから出会える秋の雲も楽しみで仕方ない。


二日前の夜は晴れていた。
月齢20ほどの月があまりにも美しくて、じっくりと眺めながら物語を想像した。

書き出しはこんな風だ。

“雷雨が過ぎ去ると、ふたたびしずかな夜がやって来ました。
ひとつ、またひとつ。星たちが、雲の間からおそるおそる顔をのぞかせます。
湿った雲はだんだんとその重たい体をほどき、軽くなった身を風にまかせると、やがて小さく散っていきました。

星たちは安心したように、自分たちの光度を増していきました。
それぞれが、それぞれの位置で仕事を始めます。

“夜を彩る”

そんな素晴らしいお仕事を―。”



続きも少し書いていましたが、終えられそうにないので一部だけ。

今夜は曇り空です。残念。
夏と違って秋は明るい星は少ないですが、星座の物語の登場人物を数多く見つけることができます。
まだ夏の大三角も楽しめます。
そのあとは、ペガススの背にまたがって秋の星空の旅を楽しみたいと思います。


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