小木友月

おぎゆづきです。小説と写真を投稿します。 自然と古い建築物とミステリーとホラーと考察も…

小木友月

おぎゆづきです。小説と写真を投稿します。 自然と古い建築物とミステリーとホラーと考察ものが好き。自然の多い所に移住したい。 ずっと書いていたい。楽しみたいし楽しんでもらいたい。よろしくお願いします。

記事一覧

「いびつな魂」第七章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第七章 叔父さんの過去とわたしの隠し事 1  家に帰って部屋で制服から着替えても、まだ人型に触れた余韻が残ってい…

小木友月
7日前
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「いびつな魂」第六章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第六章 そして何かが現れて… 1  次の日、叔父さんとのことを引きずったまま、重たい気持ちで登校したけれど、凛と楽し…

小木友月
2週間前
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「いびつな魂」第五章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第五章 その人は見えている 1  凛と一緒にいるようになってまだ数日しか経っていないけれど、もとから交流はあったの…

小木友月
2週間前
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「いびつな魂」第四章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第四章 何かがじわじわと…… 1  叔父さんに買ってもらったスニーカーを履いて学校に行くと、いつもよりちょっと楽しい…

小木友月
2週間前
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「いびつな魂」第三章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第三章 霊媒師らしいけど 1   テストの結果が返って来た。学校から帰って部屋で制服から着替えると、リュックから…

小木友月
3週間前
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「いびつな魂」第二章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちらから 第二章 美術室の怪とアパートの怪 1   自分の偏差値で試験に合格できて自転車で通える公立高校。そうやって選…

小木友月
3週間前
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「いびつな魂」第一章

※現在、第七章まで公開中。 ※投稿後も、修正を繰り返しています。 ※各章へのリンクは本文の末尾に掲載。 第一章 叔父さんに会いに行く 1  夜。枯草に埋もれた…

小木友月
4週間前
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「古い神社」建物にまつわるホラー短編読切

久しぶりに実家に帰り近所をぶらぶらと散歩していたわたしは、なじみのある風景が帰るたびに姿を消していくことに寂しさを感じていた。 通っていた小学校は立派な校舎に建…

小木友月
3か月前
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「廃墟の落書き」建物にまつわるホラー短編読切

土砂降りだからしょうがないよね。 わたしは頭の中で、そんな言い訳を繰り返しながら、侵入のタイミングを見計らっている。 廃墟の軒先に立ちつくす、登山用の装備をした一…

小木友月
3か月前
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「床挿し」建物にまつわるホラー短編読切

明るく暖かいところで、のんびりと花見でもしたくなるような春爛漫のこの日に、わたしはそれとは正反対の薄暗くじめっとしたところに足を踏み入れようとしている。 しかも…

小木友月
3か月前
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「夜の帳」連載小説

わたしにはヨルという知り合いがいる。夜の帳が下りる頃、気まぐれにわたしの前に現れては、役に立つのか立たないのか分からない不思議な話を聞かせてくれる。 その話をヒ…

小木友月
3か月前
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3/31「それぞれの新生活」ショートショート

もうすぐぼくは、しょうがくせい。 ようちえんにはもういかなくて、しょうがっこうというところにいく。 そこがどういうところなのか、わからないけれど、パパもママも、じ…

小木友月
3か月前
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3/30「あなたの頭の中のイメージ、当てます」ショートショート

「今日はマフィアの日ということで、マフィアをイメージしてもらいます。いいですか、目をつぶって、頭の中でマフィアが高級そうな革のソファにどっしりと座っているところ…

小木友月
3か月前
6

3/29「サイコパス?」ショートショート

「これに似たような話、ネットで見たことある」 「あれだろ、サイコパス判断みたいな」 「そうそれ。夫の葬式のとき、葬儀会社の社員に一目ぼれした妻が、その後、我が子を…

小木友月
3か月前
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3/28「サイダーと魔法使い」ショートショート

しゅわわわわ。 氷の入ったコップにサイダーが注がれて、炭酸がはじける音が耳をくすぐる。 コップの中でゆれる泡がきれいで、幼いわたしは夢中になってそれを眺めている。…

小木友月
3か月前
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3/27「夜桜とうんちく」短編小説

近所にちょっとした桜の名所があるが、混んでいる日中にいくより、人が少ない夜に見に行くのがオレは好きだ。 ちょうど夕食後の暇な時間を持て余していたのでふらりと散歩…

小木友月
3か月前
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「いびつな魂」第七章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第七章 叔父さんの過去とわたしの隠し事 1  家に帰って部屋で制服から着替えても、まだ人型に触れた余韻が残っていた。馴染み深いあの感情はわたしそのものだった。  あの核の全てか、それともごく一部かは分からないけれど、あそこにわたしの負のエネルギーがある、そう直感がささやいている。  時間が経つほどにその確信が増してきて居ても立ってもいられず、上野さんの意見が訊きたくて電話を掛けた。すぐに出てくれたので挨拶もそこそこに全

「いびつな魂」第六章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第六章 そして何かが現れて… 1  次の日、叔父さんとのことを引きずったまま、重たい気持ちで登校したけれど、凛と楽しくしゃべってその後は授業に集中して、そうやって高校生活に気持ちを置いていたら、叔父さんのことを思い出さずに済んだ。  休み時間になったので、後ろの席に座る凛と話をしていたら「まっちゃん」と呼ぶ声が聞こえたから振り返ると、隣のクラスで同じ中学出身のナカちゃんがそこに立っていた。 「まっちゃん、ごめん。国語の教科書、

「いびつな魂」第五章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第五章 その人は見えている 1  凛と一緒にいるようになってまだ数日しか経っていないけれど、もとから交流はあったので、わたしたちはすんなりと打ち解けられた。  凛は田丸さんと園川さんと仲違いしたわけではないので、四人で楽しく話をすることもある。わたしは他の人からも話しかけられる事が多くなって、一気にクラスメイトとの交流が進んだ。  今日もそうやって楽しく過ごして家に帰ると、わたしは部屋のベッドでごろごろしながら本を読み始

「いびつな魂」第四章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第四章 何かがじわじわと…… 1  叔父さんに買ってもらったスニーカーを履いて学校に行くと、いつもよりちょっと楽しい気分。少しだけ張り切って授業を受けて休み時間は叔父さんの本を読んで、こんなに叔父さんづくしなんてちょっと変かもしれないと心の中で苦笑いした。  午後からは美術の授業。美術室に移動して手持ち無沙汰で待っていると、開始のチャイムが鳴って準備室から先生が現れた。  先生は「今日はこれをスケッチするから」と言って教室の

「いびつな魂」第三章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第三章 霊媒師らしいけど 1   テストの結果が返って来た。学校から帰って部屋で制服から着替えると、リュックからテスト用紙を取り出して勉強机の上に並べた。  そこに書かれたテストの点数を見てわたしの顔は自然とにやける。叔父さんに早く知らせたくて電話を掛けると、すぐに出てくれた。 「ああ、真知ちゃん、ちょうどよかった。今度の土曜日に、霊媒師に会いに行くんだけど、真知ちゃんもおいでよ」  ん? れいばいし? 「テストの結

「いびつな魂」第二章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちらから 第二章 美術室の怪とアパートの怪 1   自分の偏差値で試験に合格できて自転車で通える公立高校。そうやって選んだ高校で、何の目標もなく流されるままに日々を過ごしていたら、あっという間にテスト週間に突入していた。叔父さんの本を読んでばかりで全然勉強していない。  放課後、いつもはロッカーや机の中に置いたままにしている教科書をのろのろとリュックにつめていると、いつの間にか教室は静まり返っていた。ふと窓から外を見ると、

「いびつな魂」第一章

※現在、第七章まで公開中。 ※投稿後も、修正を繰り返しています。 ※各章へのリンクは本文の末尾に掲載。 第一章 叔父さんに会いに行く 1  夜。枯草に埋もれた古い日本家屋の前に、懐中電灯を持った一人の男が佇んでいる。  男は玄関の引き違い戸に手をかけるが、長年の時間経過によって建付けが悪くなったのかスムーズに動かない。男は力任せに戸を引いて、開いたすきまに体をねじ込ませて中に入っていく。  戸の向こうは土間。男は自分の足元やまわりを懐中電灯で照らす。ぼろぼろの靴

「古い神社」建物にまつわるホラー短編読切

久しぶりに実家に帰り近所をぶらぶらと散歩していたわたしは、なじみのある風景が帰るたびに姿を消していくことに寂しさを感じていた。 通っていた小学校は立派な校舎に建て替えられ、田畑がつぶされ工場が建ち、スーパーや住宅も増え、交通量が増えた。発展するのはいいことかもしれないが、知らない町のようでどこかよそよそしく自分が歓迎されていないように感じてしまう。 懐かしさで胸が震えるような場所はないものかと考えを巡らせていると、町外れにある神社を思い出した。あそこなら昔のままかもしれな

「廃墟の落書き」建物にまつわるホラー短編読切

土砂降りだからしょうがないよね。 わたしは頭の中で、そんな言い訳を繰り返しながら、侵入のタイミングを見計らっている。 廃墟の軒先に立ちつくす、登山用の装備をした一人の女、そして降り出した雨。 どっからどう見ても山登りに来た人が突然の雨に困っているようにしか見えない、うん、怪しくない。 さっきまでわたしは健全に登山を楽しんでいたけれど、雲行きが怪しくなってきたから、まだ遊び足りないものの早めに下山することにした。 山を下り、交通量の少ない国道沿いを駅に向かって歩いていると、雨

「床挿し」建物にまつわるホラー短編読切

明るく暖かいところで、のんびりと花見でもしたくなるような春爛漫のこの日に、わたしはそれとは正反対の薄暗くじめっとしたところに足を踏み入れようとしている。 しかも花見に行くよりもウキウキしながら。 数日前、「おもしろい物件みつけたよ」と友人から連絡が入った。 友人は不動産関係の仕事をしていて、おもしろそうな物件を見つけると、わたしにこっそり内見させてくれる。 ちなみにわたしとその友人が言う「おもしろい物件」とは、個性的な家とか、間取りが凝っているとか、そういう意味ではない。

「夜の帳」連載小説

わたしにはヨルという知り合いがいる。夜の帳が下りる頃、気まぐれにわたしの前に現れては、役に立つのか立たないのか分からない不思議な話を聞かせてくれる。 その話をヒントに、ちょっとだけわたしの人生が良くなったりならなかったりする、これはそんなお話。 語り手はわたし、聞き手はあなた、今宵は、はじまりの物語。 序章 はじまり 神様は木をつたって天から地に降りてくると知った小学生のわたしは、家の近所にある神社に一人で行っては、大きなご神木を見上げていつもつぶやいていました。 「神様

3/31「それぞれの新生活」ショートショート

もうすぐぼくは、しょうがくせい。 ようちえんにはもういかなくて、しょうがっこうというところにいく。 そこがどういうところなのか、わからないけれど、パパもママも、じいじもばあばもうれしそうにしているから、きっといいところなんだ。 ぼくはしょうがっこうにいくのが、たのしみ。 どんなところなんだろう、はやくいきたいなあ。 春休みは宿題もないし、あったかくなって外でたくさん遊べるし、さいこう! でももうすぐ新学期。クラス、どうなるかな。 仲良しのあの子とは同じクラスになれるかな。

3/30「あなたの頭の中のイメージ、当てます」ショートショート

「今日はマフィアの日ということで、マフィアをイメージしてもらいます。いいですか、目をつぶって、頭の中でマフィアが高級そうな革のソファにどっしりと座っているところをイメージしてください。できましたか、ではあなたのイメージを今からわたしが当ててみせましょう。 あなたのイメージしたそのマフィア、葉巻吸ってますよね?」 「吸ってる!」 「うわあ。すごい」 「当たってる!」 「まふぃあ?いめえじ?」 ぱちぱちぱちと拍手が起こってオレは成功したことにほっとする。 こんなもの超能力でも何

3/29「サイコパス?」ショートショート

「これに似たような話、ネットで見たことある」 「あれだろ、サイコパス判断みたいな」 「そうそれ。夫の葬式のとき、葬儀会社の社員に一目ぼれした妻が、その後、我が子を殺しました。さてなぜでしょう?」 「サイコパスの答えは、子どもの葬式で葬儀会社の社員にまた会えるから」 「サイコパスじゃない人の答えは何?」 「恋するのに子どもが邪魔だから」 「それもそれで怖くない?」 「うーん、確かに」 「ちなみに、この妻はどういう行動をとるのが正解なの?」 「まずはその葬儀会社の社員本人に連絡

3/28「サイダーと魔法使い」ショートショート

しゅわわわわ。 氷の入ったコップにサイダーが注がれて、炭酸がはじける音が耳をくすぐる。 コップの中でゆれる泡がきれいで、幼いわたしは夢中になってそれを眺めている。 「よし、じゃあお父さんが今から魔法をかけます」 ちちんぷいぷいのぱっ! お父さんが魔法をかけると透明だったサイダーが緑色に変化する。 「メロンソーダみたい!」 わたしははしゃぐ。そんなわたしを見てお父さんは満足そうに目を細める。 緑色のサイダーは透明だったサイダーより甘さが増して、わたしはその甘さのとりこ。 こんな

3/27「夜桜とうんちく」短編小説

近所にちょっとした桜の名所があるが、混んでいる日中にいくより、人が少ない夜に見に行くのがオレは好きだ。 ちょうど夕食後の暇な時間を持て余していたのでふらりと散歩がてら見に行くことにした。 桜は昼と夜では違った表情を見せてくれる。 昼の桜は、清楚でかわいらしいイメージ。柔らかい薄ピンクに心も華やぐ。 しかし夜の桜はライトアップされてほんのり紫色に見えてしっとりと色っぽい。 そんな夜の桜をうっとりと眺めていると、ひとりでふらふらと歩く女性がこちらに近づいてくる。 「こんばんは