小木友月

おぎゆづきです。小説と写真を投稿します。 自然と古い建築物とミステリーとホラーと考察も…

小木友月

おぎゆづきです。小説と写真を投稿します。 自然と古い建築物とミステリーとホラーと考察ものが好き。自然の多い所に移住したい。 ずっと書いていたい。楽しみたいし楽しんでもらいたい。よろしくお願いします。

最近の記事

「いびつな魂」第三章

※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちら 第三章 霊媒師らしいけど 1   テストの結果が返って来た。家に帰って部屋の勉強机の上にテスト用紙を並べると、そこに書かれたテストの点数を眺めて、わたしは思わずにやけた。叔父さんに早く知らせたくて電話を掛けると、すぐに出てくれた。 「ああ、真知ちゃん、ちょうどよかった。今度の土曜日に、霊媒師に会いに行くんだけど、真知ちゃんもおいでよ」  ん? れいばいし? 「テストの結果が返って来たんですけど、いい点がとれたんで

    • 「いびつな魂」第二章

      ※あらすじと第一章と各章へのリンクはこちらから 第二章 美術室の怪とアパートの怪 1  自分の偏差値で試験に合格できて、自転車で通える公立高校。そうやって深く考えもせず選んだ高校で、流されるままに日々を過ごしていたら、あっという間にテスト週間に突入していた。 放課後、いつもはロッカーや机の中に置いたままにしている教科書をのろのろとリュックにつめていると、いつの間にか教室は静まり返っていた。ふと窓から外を見ると、こことは対照的ににぎやかで、生徒が連れ立って

      • 「いびつな魂」第一章

        ※現在、第三章まで公開中。第八章で完結予定。各章13000文字程度。 ※各章へのリンクは本文の末尾に掲載。 第一章 叔父さんに会いに行く 1 夜。枯草に埋もれた古い日本家屋の前に、懐中電灯を持った一人の男が佇んでいる。男は玄関の引き違い戸に手をかけるが、長年の時間経過によって建付けが悪くなったのか戸はスムーズに動かない。男は力任せに戸を引いて、開いたすきまに体をねじ込ませて中に入っていく。 戸の向こうは土間。男は自分の足元やまわりを懐中電灯で照らす。ぼろぼろの靴がた

        • 「古い神社」建物にまつわる短編ホラー小説

          久しぶりに実家に帰り近所をぶらぶらと散歩していたわたしは、なじみのある風景が帰るたびに姿を消していくことに寂しさを感じていた。 通っていた小学校は立派な校舎に建て替えられ、田畑がつぶされ工場が建ち、スーパーや住宅も増え、交通量が増えた。発展するのはいいことかもしれないが、知らない町のようでどこかよそよそしく自分が歓迎されていないように感じてしまう。 懐かしさで胸が震えるような場所はないものかと考えを巡らせていると、町外れにある神社を思い出した。あそこなら昔のままかもしれな

        「いびつな魂」第三章

          「廃墟の落書き」短編ホラー小説

          土砂降りだからしょうがないよね。 わたしは頭の中で、そんな言い訳を繰り返しながら、侵入のタイミングを見計らっている。 廃墟の軒先に立ちつくす、登山用の装備をした一人の女、そして降り出した雨。 どっからどう見ても山登りに来た人が突然の雨に困っているようにしか見えない、うん、怪しくない。 さっきまでわたしは健全に登山を楽しんでいたけれど、雲行きが怪しくなってきたから、まだ遊び足りないものの早めに下山することにした。 山を下り、交通量の少ない国道沿いを駅に向かって歩いていると、雨

          「廃墟の落書き」短編ホラー小説

          「床挿し」家にまつわる短編ホラー小説

          明るく暖かいところで、のんびりと花見でもしたくなるような春爛漫のこの日に、わたしはそれとは正反対の薄暗くじめっとしたところに足を踏み入れようとしている。 しかも花見に行くよりもウキウキしながら。 数日前、「おもしろい物件みつけたよ」と友人から連絡が入った。 友人は不動産関係の仕事をしていて、おもしろそうな物件を見つけると、わたしにこっそり内見させてくれる。 ちなみにわたしとその友人が言う「おもしろい物件」とは、個性的な家とか、間取りが凝っているとか、そういう意味ではない。

          「床挿し」家にまつわる短編ホラー小説

          「夜の帳」連載小説

          わたしにはヨルという知り合いがいる。夜の帳が下りる頃、気まぐれにわたしの前に現れては、役に立つのか立たないのか分からない不思議な話を聞かせてくれる。 その話をヒントに、ちょっとだけわたしの人生が良くなったりならなかったりする、これはそんなお話。 語り手はわたし、聞き手はあなた、今宵は、はじまりの物語。 序章 はじまり 神様は木をつたって天から地に降りてくると知った小学生のわたしは、家の近所にある神社に一人で行っては、大きなご神木を見上げていつもつぶやいていました。 「神様

          「夜の帳」連載小説

          3/31「それぞれの新生活」ショートショート

          もうすぐぼくは、しょうがくせい。 ようちえんにはもういかなくて、しょうがっこうというところにいく。 そこがどういうところなのか、わからないけれど、パパもママも、じいじもばあばもうれしそうにしているから、きっといいところなんだ。 ぼくはしょうがっこうにいくのが、たのしみ。 どんなところなんだろう、はやくいきたいなあ。 春休みは宿題もないし、あったかくなって外でたくさん遊べるし、さいこう! でももうすぐ新学期。クラス、どうなるかな。 仲良しのあの子とは同じクラスになれるかな。

          3/31「それぞれの新生活」ショートショート

          3/30「あなたの頭の中のイメージ、当てます」ショートショート

          「今日はマフィアの日ということで、マフィアをイメージしてもらいます。いいですか、目をつぶって、頭の中でマフィアが高級そうな革のソファにどっしりと座っているところをイメージしてください。できましたか、ではあなたのイメージを今からわたしが当ててみせましょう。 あなたのイメージしたそのマフィア、葉巻吸ってますよね?」 「吸ってる!」 「うわあ。すごい」 「当たってる!」 「まふぃあ?いめえじ?」 ぱちぱちぱちと拍手が起こってオレは成功したことにほっとする。 こんなもの超能力でも何

          3/30「あなたの頭の中のイメージ、当てます」ショートショート

          3/29「サイコパス?」ショートショート

          「これに似たような話、ネットで見たことある」 「あれだろ、サイコパス判断みたいな」 「そうそれ。夫の葬式のとき、葬儀会社の社員に一目ぼれした妻が、その後、我が子を殺しました。さてなぜでしょう?」 「サイコパスの答えは、子どもの葬式で葬儀会社の社員にまた会えるから」 「サイコパスじゃない人の答えは何?」 「恋するのに子どもが邪魔だから」 「それもそれで怖くない?」 「うーん、確かに」 「ちなみに、この妻はどういう行動をとるのが正解なの?」 「まずはその葬儀会社の社員本人に連絡

          3/29「サイコパス?」ショートショート

          3/28「サイダーと魔法使い」ショートショート

          しゅわわわわ。 氷の入ったコップにサイダーが注がれて、炭酸がはじける音が耳をくすぐる。 コップの中でゆれる泡がきれいで、幼いわたしは夢中になってそれを眺めている。 「よし、じゃあお父さんが今から魔法をかけます」 ちちんぷいぷいのぱっ! お父さんが魔法をかけると透明だったサイダーが緑色に変化する。 「メロンソーダみたい!」 わたしははしゃぐ。そんなわたしを見てお父さんは満足そうに目を細める。 緑色のサイダーは透明だったサイダーより甘さが増して、わたしはその甘さのとりこ。 こんな

          3/28「サイダーと魔法使い」ショートショート

          3/27「夜桜とうんちく」短編小説

          近所にちょっとした桜の名所があるが、混んでいる日中にいくより、人が少ない夜に見に行くのがオレは好きだ。 ちょうど夕食後の暇な時間を持て余していたのでふらりと散歩がてら見に行くことにした。 桜は昼と夜では違った表情を見せてくれる。 昼の桜は、清楚でかわいらしいイメージ。柔らかい薄ピンクに心も華やぐ。 しかし夜の桜はライトアップされてほんのり紫色に見えてしっとりと色っぽい。 そんな夜の桜をうっとりと眺めていると、ひとりでふらふらと歩く女性がこちらに近づいてくる。 「こんばんは

          3/27「夜桜とうんちく」短編小説

          3/26 「さすがです品子さん」超短編小説

          オレの彼女の品子は料理がうまい。 食品サンプルの会社に勤める品子は、良いサンプルを作るためにとても勉強熱心。 おいしそうなサンプルを作るには、おいしい料理をよく見て観察することが大切と考えているから、料理の研究も欠かさない。 料理の色つや形を研究するためにたくさん料理を作り、オレにもたくさん食べさせてくれる。それのうまいことうまいこと。 オレは品子がいないと生きていけない体になった。いや本音を言えば品子の料理がないと、だが。完全に胃袋をつかまれたってやつだ。 欲を言えば3

          3/26 「さすがです品子さん」超短編小説

          3/25「偽物の恋」超短編小説

          白熱電球のあかりが好きだ。炎のようなあたたかな光源を眺めていると、焚火を眺めているような気分になってなんとなく落ち着く。 蛍光灯やLEDにも白熱電球の色に近づけたオレンジ色の光を放つものがあるけれど、あれでは落ち着けない。やはり偽物はダメだ。本物にはかなわない。 ピロートークとでもいうのだろうか。 バーで出会った女性と情事を楽しんだ後のけだるくまどろんだ時間、ベッドで寝ころんだまま、柔らかな光をともす電燈を眺めながら俺がそんなことを言うと女性はゆったり笑いながら言った。 「

          3/25「偽物の恋」超短編小説

          3/24「私のマネキン」短編小説

          人里離れた山奥に、一軒の豪邸がある。2階建ての洋館だ。 そこには50代の女性が一人で住んでいた。 女性は豪邸の一階にある大広間で優雅にお茶を楽しんでいる。 30畳はゆうにありそうな大広間。床には高級そうな絨毯が敷かれ、天井には光輝くシャンデリア。天板が分厚い豪華なテーブル。そして何脚かの椅子。 50代の女性はテーブルの中央の席についている。残りの椅子にはデパートの服飾売り場でよく見かける真っ白なマネキン人形がそれぞれいろいろなポーズをして座っている。女性とマネキンの前には

          3/24「私のマネキン」短編小説

          3/23「スジャータの恋人」ショートショート

          仕事が終わり、疲れた体を引きずるようにして、わたしは会社から駅へ向かって歩いていた。 ああ、だめだ、今日は疲れすぎた。 わたしはひと息いれたくなって、途中にある某コーヒーショップに寄ることにした。 入店して注文したコーヒーを受け取り、椅子に体を投げ出し魂が抜けたかのごとくぼんやりしていると、斜め向こうに座る一人の女性が目に入った。 あれ、あの人は…… 恋人らしき男性と楽しそうに談笑しているその女性がわたしの記憶をかすめた。 顔を見ればピンとくるのに、名前が思い出せない

          3/23「スジャータの恋人」ショートショート