理解のレベル ~具体から抽象に至るまで~
1 数学において抽象的な理解とは
数学において、抽象的な理解とは、具体的なものの操作をせずに記号だけで計算することができることだと考えます。
銀林(1985)は、抽象的な理解に至るまで、4つのレベルがあると考えています。
4+3を例にして考えます。
レベル4が抽象的な理解です。
2 レベル1の重要さ
上述したように、抽象的な数を扱えるようにするためには、レベル1~3の段階を踏みます。
特にレベル1は、具体的なものを操作しますので、手を動かします。
このレベル1の操作で、概念をしっかり掴めるかどうかで、レベル4まで推移できるかがかかっています。
例えば、よく生徒たちはこういうことを言います。
「授業中は分かっていたのに、家で復習する段階になると分からなくなった」
これは抽象的な理解をするためのレベル1での経験が浅かったのではないかと思います。
他にも中学生や高校生が苦手な概念で、「関数」があります。
関数は、「1」や「10」のように、具体的なものを想像できません。
なぜなら「関数」は物ではなく操作そのものだからです。
なので、関数の概念を理解させるためには、教師がブラックボックスなどを使って実演したり、日常生活の中で関数といえるものの例を取り上げたりして、レベル1の体験を多く積ませる必要があると考えます。
3 数学を理解するために必要な「図」と「地」
ゲシュタルト心理学において、「図」と「地」という概念があります。詳しくはこちら↓↓
この考え方は数学の理解についても使えます。
数学の理解において、
「地」とは学習者の経験や生活環境
「図」はその経験から獲得した知識と見ることができます。
ここで大事なのは、
学習者に「図」を理解させるには、「地」に即してなければならない。
学習者は、適宜「図」と「地」を切り離せる程度に、「図」を理解しなければならない。
ということです。
例えば、「関数」を理解させるために自動販売機を例に出したとします。でも日常生活の中で自動販売機が当たり前にない国の子どもたちにそれを使って説明してもだめですね。
これが「図」を理解させるためには「地」に即していなければならないということです。
また「図」と「地」を切り離すことができなければ、新しい問題に出会ったときに、その「図」を活用できるかどうか学習者は分かりません。「図」について深く理解することが大切です。
4 最後に
上述したように、レベル1が大切だと私は考えています。
これは、小学校低学年にだけいえることではありません。
例えば、中学校3年生で学習する因数分解。
一般的には、いきなり数式を変形することから始めるでしょう。
ですが、レベル1の段階をこのように設定することができます。
このように工夫すると、因数分解とは具体的にどのような操作をしているのか理解が深まります。
学習が進んでいくと、より抽象度が高まるのが数学です。
だからこそ、教え手がいかに操作する重要性を理解して、授業の中に取り入れていくのかが重要ではないでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。