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あなたが自分の人生に真剣になれない理由.

・はじめに

将来に不安を感じるのに、自分の人生に真剣になれない」という相談を受けたので、今回は「人生に真剣になれない理由」を僕なりに解説していきます.

まず最初に言っておきたいことが2つあります.

人間の脳は人生に真剣になることが苦手である
脳は目的達成における最高のツールである

上記の2つです.
あなたが人生に真剣になれないのは、それが人類の脳に機能として備わっておらず、本能が全く使えないからです.
これらの点を押さえた上で本文を読み進めていただければ、より分かりやすくなるはずです.

・脳がいつでも味方であるとは限らない

 人間は他の動物と同じように脳を持っている.
この脳という器官は自分の生存率を上げることと、種の繁栄のためにあると言っても過言ではない.

つまり脳を持つ生物は全て自分の脳に助けられて生きていると言える.
しかし現代を生きる人類にとっては「自分の脳はいつでも自分の味方である」とは言い切れない.

そして多くの人が自分の人生に真剣になれず、人生に役立つと考えられる行動を面倒だと感じてしまうのは、脳の機能による影響が大きいと考えることが出来る.

・脳はカロリーが大好き

 自分の生存率を上げることが脳の存在目的の1つであると先述した.
その存在目的を果たす代表的な機能として、学習能力記憶能力がある.
私たち人類が狩猟採集民族だった約2万年前までは、次のように機能していた.

狩猟採集民とバナナ
男性の狩猟採集民が1人いたとする.
彼は文字通り狩猟と採集をして食料を得ており、動物を狩ったり、果物や木の実を採集して生きてきた.
ある日、彼が食べ物を探して歩いているとバナナを見つけた(彼はバナナを見たことも食べたこともない).
彼はそのバナナを採集し、住処に持ち帰って食べた.
後日、彼は再びバナナを探して同じ場所を訪れたが、以前と同じ木にバナナはなかった.
そして彼はバナナを追い求め、その木の周辺のジャングルを、何日も訪れた.
そして再びバナナを見つけ、幸福感と達成感を味わった.


<この話で重要な点>
・彼が狩猟採集民であること
・バナナが高カロリーな食物であること
・再びバナナを探して同じ場所を訪れたこと
・バナナを探すために努力したこと
・再びバナナを見つけ、幸福感と達成感を味わったこと


彼は初めてバナナを食べた時、とても美味しいと思ったはずである.
なぜならバナナは高カロリーな食物であり、カロリーは生存に欠かせないものだからである.
脳はカロリーを摂取する重要性を理解しているため、より多くのカロリーを含むものを食べた時ほど美味しく感じるように自分を作り変えてきた

そして生存に欠かせないカロリー(バナナ)を再び摂取するために、その木の場所を覚え、再びその木を訪れた(学習・記憶能力).
しかしバナナがなかったので、周辺のジャングルで何日もバナナを探した.
カロリーを摂取したいという欲求(モチベーション)があったからこそ、猛獣や敵が潜んでいる可能性のあるジャングルを歩き回れたのである.

そして再びバナナを見つけ、その欲求が実現したとき、彼は幸福感と達成感を味わった.
これは後日、再びバナナを見つけて食べたいという欲求を自分に抱かせるために、脳が報酬系という部位を働かせて、幸福物質の1つであるドーパミンを分泌させたからである.


つまり、脳の機能の1つである学習・記憶能力は、高カロリーな食べ物の見た目を覚え、それが手に入りやすい場所を記憶し、再び同じ場所を訪れて摂取するための能力だと言える(もちろん他の目的もある).

・脳は面倒なことを嫌って避けようとする

 焼肉が好きな人が多い理由は、先ほどの「狩猟採集民とバナナ」の話から分かると思う.

焼肉が食べたくて店に入り、注文をしようとしたとき、店員が「注文をする前に、この漢字練習プリント(漢字100個)を終わらせてください.注文はその後です.」と言われたら、あなたは素直に漢字練習プリントに取り組むだろうか.

つまり、あなたは焼肉を食べるために不必要であるはずのプリントに取り組むか、ということである.
恐らくほとんどの人が「いや、今すぐ注文を聞いてください」とか、「店を出ます」というように反応するだろう.

それは「焼肉が食べたい」という目的に対して「漢字練習プリントに取り組む」という条件が不釣り合いだと感じるからである.

人間の脳は目的と条件の不釣り合いを感じる時ほど面倒さを感じ、それを避けようとする

・脳は「遊ぶこと」が大好き

 脳はカロリーと同じくらい「遊ぶこと」が大好きである.
それは人間が遊びを通して狩猟採集という生きる手段を身につけてきたからである.

つまり脳は狩猟採集こそ生きる手段であるということを理解しており、自分にその手段の習得を意欲的に進めさせるために、遊ぶことが好きな自分に作り変えていった(遊んでいるときに幸福物質ドーパミンを分泌させた)のである.

つまり脳は「目的」と「手段」の両方を知覚し、それらが自分にとって重要だと判断したとき、目的を達成することに長けた自分へと作り変えることが出来る、ということである.

ゲームに中毒性がある理由は、
的確な目的、目標の設置
目的を達成するための努力とプロセス
目的、目標を達成したときの達成感
という3つのポイントが揃っているからである.
再びゲームがしたくなる理由は、再びバナナが食べたくなった狩猟採集民と同じように、脳が重要だと判断してドーパミンを分泌させたからである.

脳が「遊ぶこと」を好むようにできているからこそ人間は多くの遊びを生み出し、遊んできたのである.

・「人生に役立つこと」v.s.「遊び」

 多くの生物と同じように、人間の脳は何十年も未来のことをコントロールすることに慣れておらず、それどころか、そのための機能や能力を発達させてこなかった.
そのため、自分の人生に役立つものや、大事だとわかっているものが目の前にあっても、「遊びを好む」という脳の原始的な機能、本能に負けてしまう

人間の脳は「未来の自分に役立つもの」よりも、「今の自分の生存率を上げる行動」を優先する.
それは先述したように、脳には未来のことをコントロールする機能が備わっていないことと、人類が狩猟採集民族だった頃と比べて、脳がほとんど変化していないことが原因である.

約2万年前と比べてほとんど変化していない脳が考える「今の自分の生存率を上げる行動」は、現代の環境ではほとんど通用しない

つまり、人類がかつて狩猟採集民族だった時代では「遊ぶこと」は極めて重要だったが、現代では重要度合いが大きく下がっている.

現代を生きる私たちは、「遊ぶことが重要」と本気で思っている脳や本能と上手く付き合いながら、「面倒だと思い、苦痛を感じるけど人生に役立つと言えること」を実践して、それを日常において習慣化していかなければならない.

・「なれない」ではなく「離れている」

 「真剣になれない」と思い、考えている人は多いが、実は「なれない」のではなく、「真剣なことから離れている」というのが正しい

現代の社会において、「遊ぶこと」よりも「人生に役立つもの」の方が重要である.
しかし脳は「人生に役立つもの」よりも「遊ぶこと」を、より重要だと思っている.

脳は自分にとって重要なものを好きになるように自分を作り変え、重要でないものに関心や興味を持たないように自分を作り変える
脳は「人生に役立つもの」に対して面倒な感情を自分に抱えさせ、それを避けさせるのである.

・まとめ

それではまとめに入ります.
現代の人類において、自分の人生に真剣になれない人が多い理由は以下になります.

①脳は未来をコントロールする機能、能力を発達させてこなかったから

②脳は「人生に役立つこと」よりも「遊ぶこと」を重要視しているから

③  ②が理由で「人生に役立つこと」を面倒に感じ、避けてしまうから

④脳を説得できていないから


上記の4つになります.

それでは④の「脳を説得できていないから」について解説し、今回は終わりにします.

・脳を説得すれば真剣になれる

 脳が「目的」と「手段」を知覚し、それらを重要だと判断したとき、その目的を達成することに長けた自分に作り変えていくと先述しました.

脳は狩猟採集民だった頃とほとんど変化しておらず、それが原因で「遊ぶこと」を優先してしまう、ということも書きました.

では、本来なら面倒に感じ、避けてしまうはずの「人生に役立つこと」を日常的に実践できている人々は、どのようにその習慣を手に入れたのでしょうか.

答えは「説得」です.
脳に対して「これはとても重要だ」とわからせるのです.

これにはコツがあります.
それは、「すでにある欲求と結び付けて行動する」ということです.

例えば、承認欲求は他者から重要視されたり、評価されたり、自己評価の向上を望む欲求です.
この承認欲求と結び付けて行動すると、次のようになります.

本を読むなど、勉強して得た知識を人に教えたりして「すごい」とか「ありがとう」と言ってもらう.
そうすると、勉強という「人生に役立つこと」で人の役に立ち、自己評価が上がり、それが承認欲求を満たすことに繋がって快感を得ることが出来ます.

この快感こそが幸福物質の1つであるドーパミンです.
ドーパミンには中毒性があり、再び同じ行動がしたいという欲求を抱かせる効果もあります.
この性能を上手く利用できれば、勉強が好きな自分を作ることが出来るというわけです.

しかし注意しておきたいのは、この方法を何度もやっていくうちに承認欲求が増大してしまうという点です.
自分と他者の折り合いと、自分の欲求と目的の線引きをしっかりしておきましょう.


以上、これが「目的」と「手段」を脳が知覚し、重要だと思わせるための「説得」です.
この説得は自分の人生に大きな変化をもたらすほど、影響力のあるものです.
ある意味取扱注意ですが、リスクを取らなければ何事も得られません.

・おわりに

いかがだったでしょうか.
今回は「人生に真剣になれない理由」と「脳の機能」の関係性について解説してきました.

ちなみに、人類が狩猟採集生活から農耕生活に移行し始めたのが約2万年前になります.
「2万年経っても脳が変化していないのは変だ」と思われた方もいらっしゃると思うので付け加えておくと、人類は約600万年という長い間、狩猟採集生活を送ってきました.

2万年と600万年、、、脳が変化していないのも納得ですね(笑)

あなたが今どんな日常、習慣を送っていようとも、必ずより良い方向を目指すことができます.
未来とは「今」の連続です.
未来を見据えながら今を大切にすることが、未来を築くことに繋がります.


人生に真剣になるというのは、案外遠い未来のことを意味する訳ではないのかも知れませんね.
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!


「あなたが自分の人生に真剣になれない理由.」

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