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52歳の女の“一番大きな買い物”。

コロナ禍の2020年、50歳になるというメモリアルイヤーに、自分の年齢とさして変わらない築年数のビンテージマンションを購入しました。家を買うなんて選択肢をまるで持たなかった私が、こんなに大きな買い物をしてしまうなんて。でも、今になってみれば運命だったんじゃないかなって思います。住むところとの出会いは、人と人とが出会うことと同じくらい深いなあって心底感じています。いつ、どこで、どのように出会うか。すべては縁。赤い糸で結ばれてるの。




ちょっとさかのぼります。

2016年。離婚を機に、それまで夫婦で暮らしていた分譲マンションを売却し、賃貸マンションに移りました。

当時、私には老犬のダックスフントがいて、愛犬のため階下に動物病院のあるマンションに住んでいました。建物は古く、駅からバスで15分という立地ではあったけど、家賃は手頃、間取りは広く、ベランダからは広い空が一望できるのが魅力でした。そして隣には大きな公園。そんな環境で、愛犬と質素な暮らしを続けていました。今から思うと人付き合いも悪いし、遠出をすることもなく、仕事以外はまるで引き籠もりのように、愛犬ファーストの生活を送っていたように思います。でも幸せだったんですよ、その時はね。


越して3年半後、愛犬を看取りました。離婚してからずっと、私の心の支えであった大切な存在を失い、本当に辛くて悲しくて後悔ばかりの日々がしばらく続きました。離婚したときよりも辛かった‥。




2020年3月のとある日のことでした。


ペットロスで気持ちが沈んで停滞していた私に、うちの母が突然「家を買いなさい」と、強く勧めてきたのです。近くに手頃な中古物件が売りに出されているからと。独り身で何があるかわからないんだから資産を持ちなさいって。でも、あまりにも唐突。家ってなによ‥笑。

正直、はあ?って感じでした。お母さん、私がそんな高い買い物できるわけないじゃん、って。でもあれこれ説得された末、まあ、見るだけはタダだからと、軽い冷やかしのつもりで内見してみることにしたのですが‥。


扉を開けて部屋に入った瞬間、とても不思議な感覚に包まれました。なんともいえない心地よさ。風通し、日の当たり、空気感。とてもいい“気”が流れているなあと感じました。そして、キッチンに立った瞬間、自分がここで生活をしているイメージがフワフワと浮かんできたんです。古いマンションだけど、リノベーションされた空間はシンプルで、床や建具の色、壁の素材、どれも私好みのしつらえになっています。ああ、ここは私のための場所。離婚して、愛犬を亡くして‥と、つらい体験を乗り越えようとしている私へのギフトかもしれない。そんな気さえしてきました。


内見を終え帰宅した私は、すぐさまパソコンを開き、資金と生活費のシュミレーションを立て始めました。こんな高い買い物、即決していいのかな‥なんて不安な気持ちも一瞬よぎりましたが、それよりも、前に進みたい、あの場所で新たな生活をスタートさせたい、という思いのほうが強くなっていて。そして、2度目の内見をした後、よし!買う!と決断したのでした。あの家も私を待っている‥と信じて。




今、3年目。この家に暮らし始め、本当にいろんな変化がありました。一番の変化は、“心構え”。地に足が着いたということ。結婚していた時は元夫に、別れてからは愛犬に。いつも何かに依存していたけれど、人生で一番大きな買い物をしたことで、ようやく一人前になれた感じがしています。そして、欲や気負いもなくなって、身の丈で堂々と生きれるようになりました。この歳で、やっとね笑。


それからね、なぜだか急にチャレンジ精神が旺盛になりました笑。家に流れる良い“気”が、私を前向きにさせるのかな。勉強してみたり、人との繋がりが広がったり‥。自分のペースでのんびりとですが、新しいこと、どんどん開拓しています。



仕事を終えて帰宅の途につき、家の鍵を開ける瞬間が好き。この家と出会えて良かった。何よりも母に感謝、感謝。

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