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ビジネスケーススタディーのヒント

みなさんは、ケーススタディーという言葉を知っていますか?
コンサルの面接、マネージャーへの昇格試験、人材アセスメントなんかで出てくるビジネスを題材とした問題みたいなものです。例えば、〇〇の会社は、かくかくしかじかの課題を抱えています。さあ、あなたならどうしますか?と言ったようなものです。私は、新卒採用で会社に入ってから半年くらいの時に、人材アセスメントの一環として、触れる機会がありました。当時は訳も分からず、行き当たりばったりで回答を作成し、めちゃめちゃなことを言ってしまいましたが、あれから幾分か修行を積み、頭の使い方が少しばかり見えてきました。後輩が似たようなアセスメントを受けて、ボロボロになったと言っていたので、フォローと今後ケーススタディーを解くことになる人に役に立つことを願って、私の備忘録もかねたケーススタディーのヒントを残しておこうと思います。

ケーススタディーを解く上で、ヒントになりそうだなと思うのは、次の3つです。
①メカニズムと課題を特定する
②課題を掘り下げて、仮説を立てる
③情報は仮説の検証のために使う

以下の文章では、この3つが一体どのようなことなのかを示していこうと思います。ただし、想定するケーススタディーは文章中で課題がなんとなく示されているものを想定しています。(だからと言って、これから述べる考え方が応用できないわけではないと思いますが。)

①メカニズムと課題を特定する
ケーススタディーはA4で10〜20ページ程度の文章やデータから構成されており、それをもとに企業の課題を解決することが求められるのが一般的なものだと思います。大抵の場合、これらの圧倒的な情報量を前にどのような分析をすればいいのか戸惑い、目についた情報に飛びつき、あれこれと数字をいじくりまわしたのちに、結局何も得られず時間ばかりがすぎていくといったことに陥りがちです。これを回避するために必要なのは、大量の情報を「一旦」無視することです。ケーススタディーに取り組む際に最低限知る必要のある情報だけを読み取ります。それは、「企業がどんなビジネスをしているか」と「何が課題となっているか」です。大量に情報がありますが、まずこの2点を捉えることに集中します。
「企業がどんなビジネスをしているか」については、まず、売り上げの構造が特定できるように集めるのがコツです。つまり、売り上げ=〇〇×□□を特定をします。例えば、対象企業がモノを売っているのであれば、売り上げ=製品の価格×売上個数となりますし、サービスを提供している企業であれば、売り上げ=サービスの価格×利用人数などのようになります。売り上げ=〇〇×□□を特定できると、企業という複雑怪奇なものをいくつかの変数と四則演算という形に落とし込んで、モデルとして簡単に理解できるようになります。モデルとして把握できていれば、メカニズムを捉えることができます。これは、考えの出発点を作るという意味で非常に役に立ちます。例えば、ケースの課題が売上の場合、価格の上がり下がりや、売上個数の上がり下がりに着目することができ、それを出発点として、思考や分析を進めることができます。逆に、メカニズムを捉えることができない場合、出発点が定まりにくく、目についた情報から思考を進めてしまうリスクが高まったり、時間が無駄になる可能性が高くなったりします。
次に、「何が課題となっているか」については、ケースの本文に売上や利益が落ちてきているなどの明らかに問題だとわかる記述があれば、大抵の場合、それについて考えを進められます。一方で、課題が明記されていない場合は、課題の特定をする必要が出てくるでしょう。そんな場合には、売り上げ=〇〇×□□を売り上げ=環境・{〇〇×□□}・環境に変えて、考えてみるとヒントが掴めるかもしれません。この式は、上で述べたモデルを拡張して、どんな環境下でメカニズムを働かせているかを考えるものです。環境の部分には文章が入ります。例えば、「業界全体が10%で成長している」と言ったものや「参入企業が増えてきている」などと言った企業が活動している環境を表すものです。環境を考えると、メカニズムが正しく働いているかを意識できるようになるでしょう。例えば、売上が伸びている場合、〇〇×□□は一見してうまく働いていると思えますが、伸びが業界成長率よりも低い場合は、〇〇×□□のメカニズムが他に比べて働きにくくなってきているという課題、つまり、競争力が低下しているという課題発見につながります。売上以外にも利益=環境・{売上ーコスト}・環境という式を考えてみても良いかもしれません。
このように、まず「メカニズムを捉える」ことで、思考の出発点を作り、「何が課題になっているか」を捉えることに集中すれば、大量の情報を前に圧倒されて、数字や文章をいじくりまわすという事態に陥る危険性が少なくなります。さらに、思考の出発点がはっきりしているので、現段階で必要な情報と不必要な情報を区別しながら、効率的にロジカルな思考をしやすくなるでしょう。

②課題を掘り下げて、仮説を立てる
メカニズムと課題を特定したら次に行うと良いのが、「課題の掘り下げ」と「仮説を立てる」ことです。課題がわかった段階で、大量の文章からじっくりと情報を得たくなりますが、この気持ちは一旦抑えてください。情報に飲み込まれてしまう危険性が高いです。例えば、ケースの課題が売上の場合、メカニズム的には、価格か売上個数のどちらかに問題があるだろうということは掴めます。しかし、ケースの文章を見ると、やれ、競合はどうとか、サービスの質がどうとか、ユーザーからのアンケートはどうとか、などの売上に関わる情報は山ほど出てくるでしょう。そうすると、情報を同じ重要度で認識してしまい、情報を捌きにくくなり、本質を捉えることが難しくなります。そこで、これを回避するために、「課題の掘り下げ」を行います。
課題の掘り下げ」は、①のステップで捉えた課題を、より詳細にしていく作業で、イメージ的には、課題の根源を捉えようとする感じです。たとえば、売上の場合は、〇〇×□□という式の〇〇や□□は何から構成されているかを考えます。製品の売上個数だったら、「10代の売上個数+20代の売上個数+・・・」や「低価格の製品売上個数+中価格の製品売上個数+高価格の製品売上個数」、「日本での売上個数+アメリカでの売上個数+・・・」などの構成要素に分解することができます。もっと頑張って「10代の低価格売上個数+10代の中価格+10代の高価格+・・・」のようにより細かく考えてみても良いです。このようにして、課題を分解して、構成要素を特定したら、やっとケースの文章を眺めてみましょう。ただし、眺める部分は、課題の構成要素に関する部分に集中します。構成要素の特定がうまくいっていれば、文章や数値などの中に、それが課題の原因となっているという記述が見つかるでしょう。それが課題の根源となっているものです。残念ながらそれが見つからなかった場合は、文章全体をボやーっと眺めて少しだけ手がかりを得た上で、構成要素の特定をやり直してください。
課題の根源を見つけられたら、次は、なぜ根源となるものが発生してしまっているのか「仮説を立てる」と良いです。ケースの文章を見て、ヒントを得ながら考えても良いですが、提示された情報に思考が引っ張られてしまい、視野が狭くなる可能性もあるので、一旦は文章を見ないで考えてみると良いです。例えば、上にあげた例で、課題の根源が「20代の売上個数が減っている」にあったとしましょう。この場合、例えば、下記のようなことが仮説として挙げられるでしょう。
・20代の人口が減っている
・20代に需要がなくなっている
・20代のセグメントを競合に奪われている
・需要と関係なしに、製品の出荷数が落ちている
などなど。(他にも色々あると思いますが、、、)
ここで、ケースの文章を読んで仮説に当てはまる記述がないかを探してみてください。仮説をサポートする記述があった場合、課題の根源を発生させている現象を捉えたと言えるでしょう。ない場合は、文章をざっと眺めて、自分の考えで見逃している点が無いか確認してみましょう。この時に、フレームワークを使うと見逃しを発見しやすくなるかもしれません。さて、原因となっている現象を捉えたら、次に行うことは、なぜその現象が起こっているか「仮説を立てる」ことです。最初に行ったようにメカニズムを捉えられれば良いですが、「20代に需要がなくなっている」メカニズムというものは、なかなかすぐには思いつきません。ここからは、自分の経験や知識、フレームワークなどを参考にしたりケースの文章をヒントにしたりして、仮説を考えてみるしかありません。そして、いくつか仮説が立てられたら、文章を読んで、仮説をサポートする記載があれば、「原因となっている現象」を引き起こした現象を捉えられていることになります。仮説を立てる→情報を見つけて検証するという作業を何回か繰り返すと、課題の本質部分にアプローチできる可能性が高くなるはずです。課題の本質を発見したら、それに対するピンポイントな解決策を考えていけば、ケーススタディーにうまく対処しているという印象を与えられるでしょう。

③情報は仮説の検証のために使う
ここまで読んで気づいた方もいるかもしれませんが、私のアプローチでは、「思考する→情報を解釈する」という流れを繰り返しながら、ケーススタディに対処していきます。この理由の一つは、何回か述べましたが大量の情報に飲み込まれないようにするためです。大量の情報から重要な情報だけを抜き出して、構造的に組み上げてストーリーにして説明するというのは、素人には簡単なことではありません。試しに、ここまでの文章で私が重要だと述べたこととその理由を思い返して、自分の言葉にしてみてください。パッと出来るものでは無いですよね。「情報を得る→思考する」という流れは、情報の意味合いに慣れていない人には難しいのです。初めてみる情報の重要な部分を素早く捉えて、構造的に述べるというのは、よっぽど頭のキレる人か普段から訓練を積んでいる人が成し得る技なのです。一方で、文章を読む前に、こんなことが書かれているだろうなとか、そうだとすると重要になりそうなのはこういうポイントかもしれないなという仮説を持つとどうでしょうか?自分の考えと情報を照らし合わせるので、素早く重要な情報にアクセスして記憶に留めて置けるはずです。また、新しく得た情報で自分の仮説や考えを進化させていきやすいでしょう。考えを述べる際はどうでしょうか?「情報→思考」の流れと異なり、情報に接する前に思考が進んでいるので自分の言葉で説明しやすいと感じるはずです。構造的に整理しやすくなっているのがわかるはずです。ケース面接や人材アセスメントでは、考えを発表する必要があるので、その時に自分の考えを的確に伝えていけるでしょう。

長くなってしまいましたが、ここまでが私がケーススタディーに対処する上で助けになると思っていることです。繰り返しになりますが、次の3点です。
①メカニズムと課題を特定する
②課題を掘り下げて、仮説を立てる
③情報は仮説の検証のために使う
ケーススタディだけでなく、仕事に役に立つこともあるので、頭の片隅にでも置いておいて、たまに思い出してもらえるだけでも嬉しい限りです。ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございました。

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