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人前で話す事を極端に苦手とする人間が少し変われた瞬間

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人前で話すことを極端に苦手とする人間が自分を変えるために踏み込んだ世界

前回の記事では私が自分を変えるために踏み込んだ大学で、コテンパンに心を握り潰された話をした。

大袈裟に聞こえるかもしれないけど
わかって欲しい、私には相当辛い一件だった。

しかし、結果として私は学校を辞めなかった。

何故か、それはこれまで自分が必死に続けてきた学びをそこで辞めてしまいたくなかったからと、一緒に頑張ってきた仲間の存在だった。

がむしゃらに勉強をし続ける日々
そして週末には仲間達と飲みに行っては夢を語る。

今思うとあの時私は超青春してた。

私の通う学校では年に1度"Speech day"という日があった。文字通り、みんなの前でスピーチをしないといけない。しかもクラスメイトだけでなく、誰でも見られる。スピーチをする部屋のドアは開放されていて誰でも自由に出入り出来るのだ。
なので、普段はクラスの違う生徒や受付のお姉さん、自分が履修していない教科の先生も見に来たりする。

テーマは『自分の好きなもの』だったと思う。

スピーチの入りはきちんと聞き手の興味を引き付けるセンテンスを入れて3分程で、という条件がついていた。

人前が怖い私にとって、不特定多数の大人数の前で英語でスピーチなんて失禁してもおかしくないくらいの恐怖である。いやほんとに。

でもこれを越えなければ単位が取れない。
やるしかないのだ。

確か私は『音楽』をテーマにした。
当時どこに行くにもiPodを持ち歩き家の中でもイヤホンを付けて音楽を聞いていたのでよく親に怒られた。会話が出来ないと。
洋楽はリスニングを強化するのに使えたし、日々のストレスを発散させる為によく友達とカラオケにも行った。

スピーチ原稿はすぐに出来た。
私にとっての壁はスピーチを作成することではない。発表することなのだ。

Speech dayがどんどん近づくにつれて緊張も増してくる。逃げたい。という気持ちが強くなってくる。

ある日学校の空き教室でスピーチ原稿とにらめっこしていたら、自分が履修している科目の先生が声をかけてくれた。

『hi,yuyu スピーチの調子はどう?』

私は思わず…

『正直やりたくない、怖すぎて逃げたいよ(笑)』

と本音を漏らしてしまった。

するとその先生は言った。

『怖いと思うのは、自信がないからだよ。原稿を見せてごらん…うん、よく出来てるよ。ここの言い回しを変えたら、ほらもっと良くなった!これで原稿は僕のお墨付き!これだけで、だいぶ気持ちが落ち着かないかい?』

先生は続けた

『いいかい、自信の無い人がスピーチしている時って聞いている人も大丈夫かな?って不安になってしまうんだ。自信なくスピーチしている人の表情はとても怖い顔をしているんだよ。そうするとね、不思議とオーディエンスも同じように、しかめっ面でスピーチを聞いている事が多いんだ。緊張しながらスピーチをしている最中、ふとオーディエンスを見た時、みんながしかめっ面してたら君の緊張は更に増してしまうだろう。』

『じゃあ、どうしたらいいか。君自身が笑顔でいるんだ。君が楽しそうに笑顔でスピーチをすれば見ている人達も不思議と優しい顔で君のスピーチを聞いていてくれるはずだよ!』

『あと、スピーチは原稿を読み上げるんじゃない。君の言葉でオーディエンスに語り掛けるんだ。だから手元の紙にはアウトラインだけ書いておくんだよ。1字1句間違えないように!って思っていたら余計に緊張しちゃうからね。』

私は衝撃を受けた。

人前で話すことが苦手だったけど、人前での話し方を教えてもらったのは初めてだったからだ。

何だか凄いことを聞いたような気持ちになった。
大丈夫かもしれない。
原稿もOKって言って貰えたし、漠然とした恐怖は少しだけ無くなったような気がした。

そして迎えたSpeech day

もちろん死ぬほど緊張していた。
いつでも吐ける。それくらい全身全霊で緊張していた。

私は仲の良い友達に、自分のスピーチの時に前の席に座って見守っていてくれないか。とお願いしていた。

私がスピーチが苦手だと知っていた友達は快くOKしてくれて5人まとまって前の席に座っていてくれた。

さあ、始まる。
私は震える足に無理矢理力を込めて壇上に上がった。

『Hello、everyone』

私はスピーチを始めた、するとオーディエンスからも

『Hello』『hi』とチラホラ挨拶を返してくれる。
と、突然その時誰かが言った

『Hi,yuyu! How are you?』

え?これからスピーチを始めるって時に何?誰?

驚いて顔を上げると、目の前の席で私にスピーチの仕方を教えてくれたあの先生がニコニコしながらこちらを見ていた。

そうだ、楽しく、笑顔で!

そう思い出した私は

『Hi,Paul.緊張し過ぎてどうにかなりそう。毎日こうやって人前で授業してるあなた達のメンタルどうなってるの?』

と、冗談めかして返事をした。

すると会場がわっと笑いに包まれた。

その瞬間、本当に不思議なことにすーーっと恐怖心が消えた。
残っているのは心地よい緊張感だけ。

今まで恐怖でしか無かった人前が、一気に温かいホームに変わった。みんなが私の一言で笑ってくれた。それだけでこんなに温かいムードになるのか。

その後のスピーチは、多少の言い間違いやおかしな発音があったと思うけど和やかに進められて無事終わった。

Speech dayの後、色んな先生から『良かったよ!』と声をかけてもらえた。以前、私の名前を覚えてなかった先生も『よくやったわね、yuyu』と声をかけてくれた。

この日、私は人生で初めて恐怖心無しで人前で話すことが出来た。とても大きな、意味のある大切な1日となった。

たった一度の、でもとっても大きな成功体験。
今でもあの時の温かいムードは忘れられない。

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