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【A tragedy in the airport②】



ルクセンブルク・フィンデル空港を出発して飛行すること約4時間。


イスタンブール空港に到着。


遂に、次の便で東京に帰ってしまうんだ。


前の座席の人々から、順次機体を降りていく。


ようやく、前に座っていたトルコ到着の人々が席を立って、

一番後ろの部分に座っていた私たちトランジット客も席を離れようとしていた。


すると、"Health Control"と背中に大きく書かれたジャケットを着た男の人たちが

「席に戻って、このまま待機してください。」

と私たち全員に言ってきた。


他のトランジット客の中には、すでに次の便の搭乗時間が迫ってきている人もいて、

機内から出られない状況に皆イライラが募っていた。


なんの説明も無いまま機内でひたすら待たされる。


そして、座席の窓から外を見るとなんと、

出発した時に預けた、成田に直接送られているはずのスーツケースが。


不可解な状況に不安が募る。



機内で待たされること約2時間。


トランジット客の中には、すでに搭乗時刻の過ぎている者もいた。


私たちの成田行きの便も、搭乗締め切りギリギリの時間だった。


ようやく、職員に誘導されながら機内を出ると、

やはり自分たちのスーツケースを運ぶよう指示され、そのまま急かされながら空港の中まで誘導された。


行先も、今なにが起こっているのかも分からない状態。

聞こうとしても、取り合う気配も無い。

ただただ指示にしたがって、ついて行くしかなかった。


大きなスーツケースとともに、しばらく空港内を移動させられ、

少し場所のひらけたベンチのあるスペースに集められた。


私たちトランジット客の一人一人の名前を呼び、

人数確認、そして検疫での検温。


そしてなんと、

そのまま一人ひとりのパスポートを取り上げられた。


名前を確認されるだけかと思って、警察にパスポートを全員手渡した。



しかしずっと自分たちのパスポートは帰ってこない。



「この後詳しく説明する。ベンチに座って待っていろ。」



とだけ言われ、警察は去っていった。



待つこと数時間。


夕方の便だったのでその時はもう夜になっていた。


水や食べ物を買いに行こうとするも、

お店はやってない。自動販売機でカードは使えない。

自動販売機でお水を買いたくて、換金所(トルコの通貨はリラ💰)に行くも、

パスポートが手元にないため換金さえ出来ない。



私たちは、接続の悪いWi-Fiで、大使館や知り合い、思いつく限り連絡をし状況を説明した。


しかし結局、ひたすら待ち続けることしか出来ず、

喉も乾き、空腹の状態で

なんと夜が明けてしまった。



翌朝、ようやく警察がやってきた。


どうやら、またルクセンブルクに帰らされるよう。


パスポートも取り上げられたまま、

ルクセンブルク行きの飛行機の出発まで待機し、

機体まで監視・誘導されながら移動した。

こうして、遂にお別れか、と思っていたルクセンブルクに、出戻ってしまったのだった。







結局、ルクセンブルク空港に到着してからやっとパスポートが返却され、

連絡していたルクセンブルク大使館の方々が空港に来て出迎えて下さった。


結論から話すと、知り合いの旅行代理店の方に相談し、最も可能性が高いと思われる方法、その日のうちにパリ経由羽田行きのチケットを予約し直し、なんとか全員帰国した。


この出来事で、

いつか旅行として行きたいと思っていたトルコもトラウマになってしまった。

そして、国家権力が動く時、人間の人間的な部分は無視され、

人権をも守られない状況が生まれてしまうということを思い知った。

また、今回この便に乗っていた日本人は私含めて8人。これがもし一人だけだったら、どれだけ心細かったか。

そして、もしルクセンブルクからの出発ではなかったら。大使館の方も、私たち一人一人にこんなに手厚く保護して頂くことは出来なかったかもしれない。


世界中が異例の状況に混乱している。

切迫した状況で、国が守ろうとするのはやはり自国民。

人間はやはり自分本位で、このような緊急時に面白いほど露呈する。

もちろんこんな対応ばかりではないと思う。

けど、少なくともこのような状況が起こっているのは事実。


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