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#382 サプライヤーは無理を押し付ける相手ではない

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

昨日から、「パーパス 意義化する経済とその先」を読んで考えたことをまとめています。

昨日の記事では、人々の消費トレンドとして、人間中心の消費から、地球中心主義の消費に遷移しつつある現状について、いくつか事例も交えながらご紹介しました。

特に企業は、どのようにお金を稼いだか、いくか稼いだかというよりも、稼いだお金を何に使っているか、が問われつつある。事業そのものも、社会課題解決を目指すもの、地球環境保全につながるものが支持されるようになるため、その企業の商品やサービスを使うことで、一緒に地球や社会に対してプラスの影響を与える(少なくともマイナスの影響を与える活動は支持されない)取り組みに対して、ますます消費やファンが集まっていく、という考え方でした。

まさに、企業の存在意義は、"Public Goods(公共財)"の提供から"Public Good(公共善)"の提供になりつつあります
だから、短期的な経済合理性で支持される取り組みだけでなく、長期目線での投資とリターンを考え、できるだけリターンが分かりやすくイメージできるシナリオが描けることが重要。単に「長期投資だから現在の収益は度外視で良い」のではなく、長期投資による現在と未来のリターンについて、具体的に示せることがますます大切になっていきます。エーザイのようにESGを組み込んだ損益計算書で企業戦略を公表したり、非財務諸表の活動それぞれに対して、何年後にどれだけの企業価値向上を見込んでいるかを公表する動きは、売上と利益だけでは選択できない選択を浮かび上がらせるので、ますます進んでいくと良いと感じたところです。

そんなパーパス経営の考え方ですが、今日は「他組織との関係性」と「従業員の価値観」に焦点を充てて、考えていきます。

目的を中心に置いて複数の企業が集まる社会

ここ数年でよく聞くようになった組織のビジョン・ミッション・バリューは、企業がありたい姿を一人称で表現する小さな船の行き先を示すものです。今後は、パーパス(事業の目的、自分たちの存在意義)という、あらゆるステークホルダーが共存する三人称で表現された大きな船を動かしながら進む、という考え方がより重要性を増していきます。

なぜなら、個社単体で解決できる社会課題が少なくなってきたことや、後述するような主に若い世代の仕事に対する価値変容が起こっているためです。

自社を中心におき、自社だけの利益を追求するビジネスではなく、社会的意義をビジネスの中心に置きながら、多様なステークホルダー(従業員、顧客、株主、サプライヤー、地域など)とともにエコシステムを構築するビジネスが支持されるようになりつつあります。

これ、言うは易しではありますが、実際超大変です。ステークホルダーが増えると調整も必要ですし、全体にとってのWinを構想しないといけないからです。

だからこそ、「顧客の課題」だけでなく「社会課題に対して自分はどう考えてるか?」を自分の言葉で話せることが必要だし、パーパスの実現をともに目指せるステークホルダーの選定がとても大切。

単純に、いま「仕事のお付き合いがあるから一緒にやる」ではなく、「この目的を達成するために巻き込むべき人は誰か?」を起点に考えて、参加者それぞれが主体的にリーダーシップを発揮して動けるチームであることが必須です。

サステナブルな他社との関係構築が必須

特に大きなマインドチェンジが求められているのは、「サプライヤーは無理を押し付ける相手ではない」ということです。

これまで、サプライヤーとの関係性は効率性が全てであり、リードタイムやコストを最適化するのがサプライヤーとの理想の関係と信じられてきました。

しかし、社会的意義がステークホルダーを集める中心にある以上、サプライヤーの関係にある組織や人も含めてその能力を最大限発揮できるような環境を整備することが必要です。

1円でも安く調達しよう、1分でも長く働かせよう、のスタンスでは、パートナーの能力を最大化できないだけでなく、そもそも優秀なパートナーを調達できません。

ビジネスの基本は、先に相手のWinを作ること。
自社の利益最大化のために、盲目的なコストカットを相手に強要している限りは、中長期的な取り組みとなる社会課題解決を最後までやり遂げるうえで前提となる、他社とのサステナブルな関係構築はできません。

「組織人」から「組織内自営業者」へ

1956年にウィリアム・ホワイトは、「オーガニゼーション・マン」、つまり組織人という言葉を掲げました。
1950年代のアメリカ企業のマジョリティを占めていた、ほとんどが男性で、企業のために個人的な目標やミッションを完全に押し殺して働き、その代償として高い年金、安定した収入、社会の居場所を享受することに長けた人の呼称です。

それから半世紀後の2002年、ダニエル・ピンクの「フリーエージェント社会の到来」では、組織人がもはや前時代的な働き方であると指摘しました。

それから20年以上経った現在、ダニエル・ピンクが予測した未来の兆しが見えつつあるものの、まだまた大企業や行政組織には「オーガニゼーション・マン」がマジョリティではないでしょうか。そうした組織では、新入社員に対して個性を尊重するよりも、個性を殺し、組織のやり方を教え込もうとします。

2023年、デロイトによる「Z ミレニアル年次調査」では、今の仕事を2年以内に離職すると考えるZ世代は40%に上っています。

出所 「2023年 デロイトZ ミレニアル世代年次調査日本版」
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/genzmillennialsurvey.html

世代という大きな物差しだけで議論するのは乱暴な面もあるものの、いわゆるZ世代と呼ばれる層では、「会社や上司の命令には無批判に従うべき」という意見に違和感を感じる人が多く、プライベートと仕事をあまり分けて考えない傾向があるのは、周囲を見ていても一定の理解ができます。

こうした人たちの最も重要なモチベーションは、お金ではなく、自分で自分をコントロールできるということ。本の中で「じぶん株式会社」という表現が出てきますが、個人をプラットフォームと見立て、何割かを所属先の企業での仕事に充て、他のリソースを自分の創造性を活かした仕事や副業にあてるなど、複数の仕事を並行して取り組むことがより一般的になりつつあります。
そうなると、自分が勤務する組織のみの利益追求のために、自分の能力を100%出し切ろう!とはなかなか思えないはずです。

所属組織のみにフルコミット型の「組織人」と「フリーエージェント」の間にある「社内自営業者」的な働き方は、私が理想とする仕事の仕方でもあります。

私自身、恥ずかしながら過去には「個性」を完全に押し殺した「組織人」に徹したこともありました。今振り返ると自分自身に嘘をつきながら無理をしていたと感じます。

もちろん、役割に応じた振る舞いが必要な局面もありますが、自分の信念といかに折り合いをつけるか。
特に、サプライヤーとの関係性においては、あくまでその人たちと一緒に成し遂げたいことの達成をコミュニケーションの中心に置きたい。

一見「甘い」という見られ方にもなってしまうかもしれませんが、お互いの役割・期待事項はきちんと明確にした上で、「相手に無理をさせる」のではなく「相手が喜んで協力したいと思える」コミュニケーション能力を磨きたいと考えています。30代のうちに身につけたいマネジメントスキル習得のチャレンジです。

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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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