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野球 遠投シリーズ5 Alan Jaegerさんの視点と意見

こんにちは! 遠投に関して選手に聞いているなかで、ご縁があってAlan Jaegerさんに直接お話を伺うことができました。今回はAlanさんの視点と意見ついて書いていきます。


Alan Jaegerさんとは誰なのか?

Alan Jaegerは、アスリートが試合で成功するためには、身体的スキルとメンタルスキルの両方を発達させる必要があるという原則に基づいてJaegerSportsを設立しました。
1991年以来、パーソナルトレーナー兼コンサルタントとして、2002年のサイヤング賞を受賞した投手を含む200人以上のプロ選手と協力してきました。 また、テキサスレンジャーズや2004年の全米チャンピオンのカリフォルニア州立大学フラートン野球チームを含む多くの学校や組織にコンサルタントとして活動してきました。

1990年からコーチとしてのキャリアをスタートさせたそうで、30年の経験があります。

色々な情報を発信せれていますが、その1つが投球肩を強くしていくため・維持していくために遠投が必要だと推奨しているものです。

ただ遠投はスローイングプログラムの一部であって、ウォームアップ・preparationとしてアームサークルとJバンドでエクササイズプログラムでしてから投げましょうとのことです。

日本ではJバンドを以下のリンクから購入できます。私もシーズン中選手達に使っていますし、選手個人が購入してるケースも多いです。

イントロダクションはここまでとして、視点・意見のまとめは以下からになります。

遠投をテーマに色々なお話を伺う中で3つのことが基盤にありました。

Individuality(個性)

Variability(変動性)

Adaptability(適応性)


Individuality (個性)

選手の個性をリスペクトする。ここでの個性というのは、選手の動き、キャッチボールの距離、ルーティンなど。選手にただ”プログラムを課す”のではなく、選手のルーティンについて多くの質問をする時間をとることが必要です。

メカニクス
ここでいう動きというのは投球のメカニクスのこと。みんながみんな同じメカニクスにはなり得ないし、ドラフトにかかるほどのパフォーマンスになったのは何か理由があるはず。

Alanさんはまた、選手を決まったメカニクスに当てはめるのではなく、選手を”free up (解放する)”ことが重要であると述べました。 

"Athleticism is the key to efficiency, effectiveness, and natural power."

その過程で出来あがってきたメカニクスをリスペクトすることが大切で、上記でもあるようにコーチ側が”これがいい”と思っているメカニクスを選手に当てはめないこと。

しかし、コーチとして選手のメカニクスをファインチューニングするサポート・能力は必要になります。この違いを理解しないといけません。

距離
今まで遠投をしてきた選手が新しいチームに入った時、チームによってはこれをしなさいといった包括プログラムがあるそうで、遠投ができなくなることもあるよう。距離や時間の縛りによって。

これは長い期間をかけて身体の基盤と肩をつくってきたのに、チームが選手のルーティンを制限していると、肩・肘のコンディションを維持することができません。 したがって、肩が弱くなってしまいますね。ということで遠投をしてきた選手であれば、継続させる。普段から120-140フィート(36-42m)ほどの距離を投げている選手であれば、遠投しなさいと言わず、普段通り継続させる。

しかし、Alanさんの意見だと、120-140フィート(36-42m)だと距離が短いのためアンダートレーニングになってしまう。高校生以上であればもっと距離を伸ばしていくべき、と30年の経験に基づいて提案されています。

コミュニケーション
こういった選手がしてきたことをコーチ側が知る・リスペクトするために必要なことは何でしょうか?質問をする・アンケートを取ればいいのです。コミュニケーションをとることです。そのステップを踏めば、選手たちの情報は得られるわけです。それで何かマイナスになることはあるでしょうか?

ということで、個性をリスペクトするためにコーチ・スタッフは選手としっかりコミュニケーションをとって質問して、今までのルーティンを把握すること・維持させるが大切になります。


Variability (変動性)

遠投をする上で、離れていく時は山なりに投げるよう伝えています。理由としては、"stretch out"を感じること。徐々に距離が遠くなるため、負荷も徐々に上がります。そのため、force productionに必要な肩の可動域も徐々に増えていきます。

それ以外に、山なりに投げるとき、投げる角度やアームスロットが変わると言われています。マウンドからのピッチングと比べると当然ですね。

ですが、その違いをネガティブに捉えられることがあります。他にも色々な理由があるにしろ、その一つに120フィート(36m)以上投げさせないスローイングプログラムがあります。

選手が普段からその距離のキャッチボールでパフォーマンスを維持しているのであれば、そのままでいいのです。遠投シリーズ3で書きましたが、コーチの方がリリーフ時代120フィート(36m)以上投げなかったと言ってましたね。

投げる角度やアームスロットの変化
なぜAlanさんはこれをポジティブだと伝えているのでしょうか?理由は、

"Developing Athleticism and Feel."

だそうです。

AlanさんのいうAthleticismとはアスリートならではの身体の強さや身のこなしといった意味で、Feelとはボールのかかりや自身の動きを感じる能力やアウェアネスといったものです。

距離が遠くなり投げる角度が大きくなっていくと、自ずと可動域も大きくなり”feel”することが多くなります。 このように、選手が離れていく時と近づく時で小さく変化するリリースポイントに適応する必要があるため(しかもボールが相手の胸へ届くように)、この変動性は利点として機能します。 また、心身の認識を促進するものでしょう。

出来ていないとボールが届かなかったり、あちこちに行ったりするでしょう。その場合、距離を縮めましょう。初めは120-140フィート(36-42m)くらいかもしれませんが、徐々に遠投距離も伸びていくはずです。

その過程でだんだん身体の使い方も、負荷に耐えられる骨・軟部組織のキャパも上がり、肩も強くなります。(遠投シリーズ4でも書いたように、ちゃんとリカバリーしたらの話です。)

遠投を通して変動性に適応できるように鍛えているといったことですね。

Dynamic Systems Theory
これは組織適応の観点の他に、Dynamic Systems Theoryにも繋がると私は思っています。

簡単にまとめるとオーガニズム(選手、関節)、タスク(投げる、投げる距離)、環境(天気、フィールドの状況)を自身の脳が整理した結果、動きが生まれます。その動きのフィードバック(体内外の情報)を得て、修正する。それを何度も繰り返す結果、動きが最適化されて、動きを習得(モーターラーニング)すると言われています。

そういうMovement VariabilityやDynamic Systems Theoryの観点から、遠投をすることで起こるアームスロットの変化へ適応することはピッチングにとってポジティブなものと言えると思います。


Adaptability (適応性)

これはコーチの方々に対してのメッセージでした。個性の部分に繋がりますが、コーチ側が選手のルーティンに適応することが大切。選手をコーチ側が用意しているプログラムに当てはまるのではありません。

もちろん、若い選手やユース選手はそもそも自分のルーティンがまだなかったり、分からないと思います。その場合は選手とコーチが対話をしてルーティンを作るわけです。それを試して、振り返って、アップデートを繰り返して、ルーティンを固めていくわけです。

そのためにコミュニケーションをとること、協力する姿勢、信頼関係をつくることが必須なわけです。Alanさんは選手の声を聞くことが本当に大切だとおっしゃってました。

似た内容の記事を過去に書きました。興味がある方はどうぞ。

やはり、人間性なんですね。

Alanさんは強い信念、理由、経験があるから自身の意見を信じている訳です。ただ、肝心なところは、彼のところへ来る選手達を純粋に気にかけ、考えていることにあります。


まとめ

Alanさんとのインタビューでのテイクホームメッセージは、

"Throwing is an art"
選手個人をリスペクトする、ここでのアーティストは誰か、そして質問をしてください。
"Listen to your arm"
日々の肩・肘の調子を感じ取り、投げる距離、量、強度を決める。
"The arm will thrive if you feed well."
(遠投をして)負荷をちゃんと与えると肩・肘は成長する。


読んでいただいてありがとうございました!




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