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ランドセルに油性ペンで名前を書いた娘を見て失敗について考える

家族でご飯を食べていたとき。部屋のすみに、6歳娘がじいじから買ってもらった、新品のランドセルが転がっていました。「ランドセル出しっぱなしにして……もう!」と思いつつ、よく見ると……

目にしたときは驚きすぎて、

「えっっ??!!!?か、書いちゃったの?え?どのペン??!なんで???」

と、つい、まくしたてました。

でも周りで聞いてた小5、小3の兄たちも「わー!なんで書いちゃったの??」とざわざわしてきて、娘もだんだん不安な表情に。このままだと、娘は自分がいけないことをしたと思ってしまうと感じたので、この話はこれでおしまい。それ以上は何も言いませんでした。

失敗を笑い飛ばす家族

長男次男も「まあ、1年生はランドセルカバーつけるしねえ〜」と。夫は大ウケ。この家族でよかった〜と感じる瞬間かもしれません。

そもそも、新品のランドセルに大きく名前を書くのはいけないことでしょうか。娘からしたら、「自分の持ち物に名前を書いた」だけのことなんですよね、きっと。

そして、賃貸の家の壁に書かれたら私も怒っちゃうかもですが、ランドセルはあくまで娘本人の持ち物です。あとで後悔することになったとしても、そのときに気づきや学びがきっとあると思います。そもそもランドセルってどうせ汚れるし……。

自らチャレンジして失敗体験を

2020年に開校した「軽井沢風越学園」という学校があります。

どんな子どもにも幸せな子ども時代を過ごしてほしい。遊びが学びへとつながっていく、この人間の自然な育ちを大切にした学校をつくりたい。そうした思いをベースに私たちは、3歳から15歳までが一つの校舎で学ぶ「軽井沢風越学園(かるいざわかざこしがくえん)」を2020年4月に開設しました。(公式HPより引用)

創業者で、楽天の副社長を勤めていた本城慎之助さんの記事を偶然見かけました。

風越学園の考え方は、私が理想とする子育てや教育観とも近い。遊びや自然を大切に思っていたから、横浜から沖縄・竹富島へ移住できたのです。風越学園を作った方が中学生からラ・サールに通い、楽天の副社長まで務めた人というのが、なんだか意外に思いながら読みました。

園舎を持たずに野外保育を実践する「森のようちえん ぴっぴ」との出会いが、風越学園につながったとありました。森のようちえん……!私も横浜にいた頃、見学や体験に参加したことがありました。結局、我が家は一般的な幼稚園を選びましたが……。

「10人くらいの2~3歳児が森の中でスキーウエアを着て遊んでいるんです。お昼ご飯の時間になると、そのまま外で焚き火を囲む。焚き火では、焼きおにぎりと煮込みハンバーグが作られていて、鍋から出したハンバーグをアルミホイルにくるんで食べているんですね。みんな、寒いので座っていられなくて、立って食べるんですよ」

「ちょうど3歳になったばかりの男の子が手袋を外して、焚き火周りの岩に置くわけです。どう見てもちょっと火に近いなと思いましたが、スタッフは見て見ぬふり。案の定、手袋がぷすぷす焦げた。男の子は泣いちゃうんですけれど、そのスタッフが言うわけです。『先週は燃やしちゃったんですよ』と。それは、僕にとってかなり衝撃的でした」

失敗から得られる成長を2~3歳児から教えていること。安心して失敗できる環境を整えているスタッフ。保護者とスタッフとの信頼関係――。この手袋事件で頭を殴られたような気がした本城は、帰り道、こう思い至ったという。

「僕が今まで目指していた中高一貫校やエリート教育というのは、小さな成功を積み重ねるということを大事にしていた。でも、用意された成功や整った成功よりも、ぐちゃぐちゃでもいいから自ら進んでチャレンジした失敗を積み重ねていった方が、自信が育まれるのではないか

わかる……!!そうなんです。自らチャレンジした失敗体験。ただ、それを実現するには、周りの大人が教えない、叱らない、口を出さないことも大切なんだなと感じます。この森のようちえんのエピソードは象徴的ですね。

そして、話は戻って、嬉しくて嬉しくてランドセルに名前を書いちゃった娘、完全に尊いですよ……!!ハートマークも見れば見るほどじわじわとかわいくて。

小さな失敗で大きなダメージ

この出来事を経て、思い出したことがあります。

私自身が幼稚園生の頃、東京都町田市の団地で暮らしていました。当時周りには、スキマ時間でチラシ配りの仕事をしているお母さんが多く、私の母も友人と手分けしてチラシ配りをしてたのをよく見ていたんです。

ある日、団地の1階に積み上げられたチラシが置いてありました。私はそれを友達と開封して、勝手に近所のポストに投函して回りました。母たちを見て憧れてたのでしょう。

このチラシは団地で一人暮らしをしていた、ちょっと気難しい雰囲気の母より年上の女性のものでした。

「あんたたち、なんてことしたの!!!」

私と友達はその女性からガッツリ怒られました。母たちも謝っていた姿が記憶に残っています。

こんなこともありました。

小学生になって、友達と可愛いメモ帳やシールを分けて交換するのが流行りました。1冊まるまる同じページが続くメモ帳。友達と交換することで、たくさんの可愛いメモ帳を手に入れることができるのです!

さらに、それぞれメモ帳を切り分けたものを10円くらいでお互いに売り買いしよう!ということに。友達5〜6人と約束して、メモ帳を持ち寄ってお店のように並べて販売会を開きました。記憶がおぼろげですが、学校で休み時間にしていたと思います。

これを見た担任の先生に、こっぴどく怒られました。定年間近で、ヒステリックな怒り方をする女性でした。

「学校でお金のやりとりはいけない」
「友達とお金のやりとりは悪いことなんだ」

子ども心に、こう思うようになりました。

私は、一つ何かを失敗すると二度と同じ失敗はしたくないと思う子どもでした。幼い頃のささいな失敗。忘れてもいいのに、今でもしっかり覚えている。失敗を避ける子どもだったので大きな失敗はしないものの、たまに失敗をしたときの自分への衝撃が大きくて。

自分が良いと思って動いたら、怒られたり、失敗したり。いくつかの失敗体験を経て、

「私は自分の判断で動いたらダメなんだ」「私の意思で動くと失敗する」

との思い込みが作られていきました。何かを選ぶときに、周りの意見や評判がすごく気になってしまうのです。

そのため、新卒で入社した頃は本当に苦労しました。たとえば、デザインAかBのどちらが良いのか。自分で決めたら自分の責任になってしまう。それがとにかく怖くて仕方がなかったんです。必ず上司や先輩の意見を聞いていました。細かく報告・連絡・相談をするのは良い部分もあると思いつつも、意見が分かれたら混乱することもしばしば。

子どもが生まれたら選択の連続

ところが、子どもが生まれたらあらゆる選択の場面があります。「離乳食はいつから始めるのか」「保育園どこに申請するのか」「ゲームは何歳から始めるのか」……小さなものから大きなものまで決断ばかりの日々。

今思うと恐怖心との戦いでしたが、子育てや教育にまつわる本を読み、子育て講座に参加し、夫や両親の声を聞きつつ、なんとか自分たちで考えて選んできました。それでも、例えば部屋の片付けがどうやってもうまくいかない、料理がいくらやっても好きになれないなど、今でも悩みはつきませんが……。

それでも、子育てを始めて、さらに長男が4歳〜9歳までの専業主婦の期間は、失敗したとしても、他人から怒られるわけではありません。家族だけだから、ある意味安心して失敗のできる環境だったのかもと気づきました。子育ての日々は、子どもの頃に安心して失敗体験をあまりしてこなかった私を、ほんの少しずつながらも成長させてくれているように思うのです。

この期間を経てフリーランスのライターになったから、今、なんとかやっていけているのかもしれません。そして改めてこう書くと、全て自分で決めなくてはならないフリーランスが自分に向いているのかと疑問もわいてきますが。毎回決めるのにすごく時間がかかるのを自覚しています。例えば旅先の宿ひとつとっても、決めるのってあまり好きではありません。

ランドセル一つから、思いもよらない思考にたどりつきました。さあ、これからアルコールで拭いてみます。落ちるかなあ……。

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ある日の娘ファッション。そういえばこんな子どもらしいゴテゴテファッションで出かけることも、私は必ず止められてたように思います。すくすく育て〜!

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