星のや竹富島 | よろこびに出会う
夫とは沖縄県にある最南端の島、波照間島で付き合った。当時、彼は季節労働をしながら旅をしていて、あともう少し互いに手を伸ばせば想いが届きそうだ、というときに彼は仕事で石垣島に行ってしまった。まるっと1カ月の間、石垣島の農家さんのお手伝いをするということだった。
わたしにとって八重山は大切な場所であったから、なんだかその場所で彼と顔を合わせないといけない気がして、気が付いたら石垣島に向かっていた。今思えば、たまたまとっていたお休み、迷わず買える価格の航空券、いろんなタイミングが重なった。思い返せば思い返すほど、旦那さんと一緒にいることの必然性がわたしをうなずかせる。そういうわけで、わたしは彼に会いに行き、そこで想いが通じ合ったというわけだ。
だから、この八重山旅行が彼との最初の旅となった。その大切な旅の行き先に、わたしは星のや竹富島を選んだ。今日はそのお話を書く。
石垣島からフェリーで15分。通勤していたころの気持ちを思い出しつつ、大切な場所に、大切な人と行く、この旅行に特別な期待が高まった。
竹富港で待っていてくれた星のや竹富島のスタッフに荷物を預け、集落入り口でバスを下りた。時間はお昼時、わたしたちはまず昼食を取ることにした。真っ先にわたしが提案したのは、そば処竹乃子。ここの八重山そばとじゅーしー(沖縄の炊き込みご飯)を食べさせたかった。道中、どんなに美味しいそばか彼に説明をしながら、わたしたちは歩いて島を移動した。
自転車もいいのだけれど、時間もあったし、折角なので歩いて回りたかった。季節は3月で、南風が心地よく吹いていた。
島の春は、もう夏のようで、デイゴの花が綺麗に咲いていた。デイゴが赤く、綺麗に沢山咲く年には大きな台風が来るという島の伝えがあるのだけれど、それでもやっぱり真っ赤なデイゴの花が見られて、わたしは嬉しかった。
集落を歩くこと15分ほど、目的地にたどり着いた。
しかし、、、休業日であった。島の飲食店はほとんどが不定休であることを思い出した。お店がやっているか否かは運なのだ。島の祭りや、学校行事、家族の都合、急な休みになることが多い。お店が休みで、残念だったけれど、島らしさに触れて、島に帰ってきた心地がしてちょっとホッとした。
ホッとなったのも束の間、わたしたちの空腹はピーク。急いで次なる候補へ向かった。次の候補にあげたのは、やらぼである。竹乃子からも近い。
“営業中”の看板を見つけてハイタッチをした。わたしたちは今日一番の笑顔で暖簾をくぐった。空腹の末に、たどり着いた小さな島の、小さな食堂でいただいた八重山そばは格別だった。
都会にいると忘れてしまうことを、この島は思い出させてくれる。数歩歩けば、お店があって、コンビニがあって、そんな生活をしている日々の中では、お店がただ営業しているだけで、こんなに喜ぶことはない。大げさかもしれないけれど、この島には本質的な喜びと出会えるような、そんな気がする。それは”生きる”という根底にある当たり前に近い喜びだった。上手く言えないけれど、細胞レベルで感じるようなことがこの島には溢れているのだ。
それは、ここでしか感じることのできない特別な気持ちなのだと、島を離れてから気付いた。
昼食を終えて、干潮を迎えたコンドイビーチへ向かった。どこまでも、どこまでも歩いて行ける気がした。果てしなく続く水平線を見ながら、自分の存在の小ささを感じた。でも、寂しさはなかった。またここに戻ってきた喜びと、なつかしさと、愛おしさがわたしを包んでくれた。心の中で「ただいま」とつぶやいた。
竹富島の集落の街並み、白砂の道、艶やかに咲き誇るブーゲンビリア、耳をすませば風の音が聞こえた。太陽が少しずつ傾いているのもちゃんと分かる。
そんな風に小さな島の豊かな時間を味わいながら、集落をぐるりと1周した。
昼が過ぎて、夏のように照らす太陽がおとなしくなって、わたしたちは星のや竹富島に向かった。暮らすように滞在する、その心の準備はもうできていた。
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