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レビュー / 映画『前科者』犯罪者がいるわけじゃない、誰の中にも犯罪者の面とそうでない面がある ★3.8

最近観て好きだった『あゝ、荒野』の岸善幸監督作品ということで鑑賞。下調べせずに観たら若葉竜也、石橋静河、リリー・フランキー、木村多江、、って(わたし的)豪華キャストが揃っていて驚いた。幸せである。

▼あらすじ

警察官、弁護士、保護司、加害者、被害者、という様々な立場から「正義」が描かれていて、その曖昧さが立体的に表現されていてよかった。絶対的な正義なんてなくて、みんなそれぞれに正義がある。一つ一つに目を向ければ、どれも決して否定できないほど、それぞれなりの理由や背景がある。

同じように、「犯罪者」という線引きも、非常に曖昧なもので。「犯罪者」と「普通の人」がいるわけじゃなくて、誰でもの中に両方の面がある。そんなことも、教えてくれる作品だった。

そのことに気づかず、「立派な人」「駄目な人」という線引きで人を分けてしまうから、分断が生まれる。社会で優秀だと評価されてきた人ほど、そうした線引きをする癖があるような気がするね。そういう人が社会で力を持っていることが、今日の生きづらさを生んでいたりするのかな。

あとは、やっぱり憎しみの連鎖を終わらせるのは意思を持った優しさなんだよな〜と、『空白』と似たような感想を持った。意思を持って誰かが断ち切らなければ、それは永久に終わらない。逆に言えば、断ち切ろうという意思さえ持てれば、それは終わらせることができる。それってなかなかできることじゃないんだけどね、(少なくとも私にはまだ無理そうだぁ)
でも、その強さとも呼べる優しさを持てるようになるのも、誰かから受ける連鎖反応なのかもしれないね。阿川先生で言えば、真司くんのお父さんや、道端で見た保護司の人の優しさが連鎖して、彼女のそれが作り上げられたように見えた。

そして、福祉や法律で守れない人も、人の優しさでは守ることができる、という、『すばらしき世界』で感じたのと同じ、人の優しさへの希望みたいなものを見せてもらった。絶望させられるのも人なら、希望を与えてくれるのもまた人なんだよなぁ。

でも「人間に戻って」「人間じゃなくなる」みたいな発言が多く出てきて、いや、犯罪者も人間だよな?って思った。岸監督の人間の定義ってなんなんだろ〜、孟子的な世界観、「凡そ生まれて人たらば、宜しく人の禽獣に異なる所以を知るべし。蓋し人には五倫あり」ってところなのかな。

森田剛ってこんなにいい俳優だったんですか……小学生のころV6では剛君推しだった自分よ、お前の目は間違っていなかったぞ。有村架純の演技は観るたびにどんどん素晴らしさを増しているし、やっぱり演技のうまい役者さんが出ている映画が大好きです。

真司くんが眼福すぎてやべえ〜誰だこの俳優さん〜って思って鑑賞後に調べたら、うわぁ眼福すぎはんぱねえ〜って思ってた『ヤクザと家族』の翼君と同じ人だった。感動の再会。白髪の若葉竜也、茶髪ギャルの石橋静河と併せて楽しませていただきました。ご馳走さまでした。

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