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音楽活動とSNS、情報デザイン。

 大阪音楽大学に入学したばかりの頃。周囲を見渡してみると、SNSとの距離感に悩む仲間をよく見かけました。普段何気なく使っているSNSも、実際に「演奏会に来てほしい!」「自分の活動について知っていただきたい……」という場面になると、なかなか扱いづらいものです。

 私は高校時代からSNSアカウントを使った発信活動のお手伝いをしていましたが、自分自身の発信になると距離感を掴みづらくて、未だにもどかしい気持ちになることが多々あります。メディアや制作に携わる人であってもそうだからこそ、SNSの扱い方や情報発信には欠かせない画像、映像の作り方を最低限学べることも音楽大学には必要な課程に思えるのですが、スキルを学んでも演奏や歌唱で忙しい音楽家にとっては制作時間を作るのは極めて難しいことであって、それゆえにセルフプロデュースが上手く行かずに悩むケースも目撃してきました。

 発信方法、フライヤー・ポスターや動画づくりのハウ・トゥーは昨今色々と出ていて、ネットをちょっと覗いてみるだけでも「これは正しい」「ああいうのはダメ」といった記事が出てきますが、今回は私がお仕事で心がけていた基本的な部分を少し紹介してみます。広報やスタートアップに携わっている方にはわかっていただけると嬉しいですが、日進月歩で流行やテクノロジーが変化する時代なので、大切な部分は抑えて、あとは自己流で試行錯誤するのが良いのかなあ……というのが本音です。なので、あくまでも読み飛ばすくらいで。

 学生の音楽家の方がSNSを使うタイミングは、おそらく演奏会やイベントごと、プロジェクトが立ち上がった時が多いと推測されます。日常から意識的に使うというよりも、短期集中型でとにかく仲間やお客様に届かせることを目標に使っているパターンでしょうか。

 いわゆるアカウントを作りたての時期こそ、情報発信を上手く行うことで瞬発力を持たせてあげる、新鮮さを拡散することが大切ですが、資本力がない最初の段階でそれを行うためには、自ら発信することが必須です。仲間を巻き込んで、リツイートをしてもらって、まずは仲間内の小さなコミュニティを作ることがスタートラインです。

 たとえば、そのプロジェクトに合わないことや風変わりなことをやって「炎上」をしてしまったというケースをよく見ます。もしくは、法やマナーに逸脱したことや無意識のうちに炎上してしまった事例もあります。ここで大事なのは、自らがこれから発信しようというSNSで目標としたい人の手法を徹底的に分析すること。場合によっては模倣すること。

 どのように発信がなされているのか、どういう構造で拡散されていったのか、それをファンや消費者はいかに受容しているのか。

 分析までは行かなくとも、構造を知ることや観察することがヒントになる場合も多くて。少々大雑把なことを書きましたが、現代は大規模な拡散が生まれやすいがゆえに、作品や文化が急速に消費される時代です。クラシック音楽や芸術音楽を主とする音楽家は必ずしもそこに迎合するものではありませんし、消費されない芸術を発信することが大切ですから、より発信には敏感になる必要があります。

 反対に、ポピュラー音楽を専門としている方も同様です。ご自身の作品が拡散されていく中で、どのように消費されたいのか。どういう受け取られ方をするのかをコントロールするのも発信の役割です。

 なんだか面倒な内容になってきましたが、ぎゅっと纏めると単純です。「身の丈に合った発信をしましょう」というメッセージに尽きます。背伸びをする必要がなければ、やたらと自分のことを卑下する必要もありません。学生の発信で、下手を打たない限りは批判的に拡散されることは少ないです。だからこそ、あえて奇をてらうことなく、余計なものを削ぎ落として、そのイベントや作品の特色を純粋に発信することに集中してみるのが良いんじゃないでしょうか。

 最後に、もし私が特別に気を配っている点を挙げるとしたら、こういったところとか。

①フライヤー:動線を整える、フォントを使いすぎない、色は絞るなど
②動画:画面構成、テロップの見やすさ、音のバランスなど
③SNS:絵文字を多様しない、敬語を使いすぎないなど

 あくまでも広報自体ではなく、情報の組み込み方の話なので、「いかに違和感なく未来のお客様に情報を発信できるか?」に特化して挙げてみました。

 最後に挙げたのは、内容そのものは魅力に溢れているのに、フライヤーや動画がちゃんと練り込みきれていなくて、それで上手くコンセプトが伝わりきっていないイベントをよく見かける上に、私自身もそこの練度不足で上手くいかなかったイベントがあったので、自戒の念も込めた内容でした。

 本気で突き詰めれば何時間でも語れてしまう内容ですが、「自分自身の作品やコンサートを発信するなら」という観点に特化したものとして受け取ってもらえたらと嬉しいです。

 私は明日で大学を卒業しますが、ここ数日間の大学生活を振り返ってきた記事も含めて、少しでも何かの参考になればと思います。

 2023.3.23
 坂岡 優

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 いただいたサポートは取材や創作活動に役立てていきますので、よろしくお願いいたします……!!