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奇跡や成功から学べるもの | GO AHEAD -僕の描く夢- 第37回

日本のモータースポーツ界にとって、いちばんのターニングポイントとなった出来事。

……わたしならこう答えます。それは、リーマン・ショックだと。

リーマン・ショックは日本のモータースポーツ界に計り知れないほどの影響を与えました。まるで、とてつもなく巨大なハリケーンのように。ひとつだけ確かなことは、あれから十年経った今もその衝撃から立ち直ってはいないということです。

しかし、あの狂騒が与えたものは、決して悪いことばかりではなかった。

今だからこそ、わたしはこう言い切れます。
あの恐慌による痛みは計り知れないほど大きかった。
わたしもスバルがWRCから撤退したことで、少年時代のヒーローだったペター・ソルベルグがシートを失うという一種の“絶望”を経験しました。

2018年12月5日、日本の自動車業界二番目の巨人であるホンダの「F1撤退」という発表はわたしの経験した絶望と同じほどの、いや、それ以上の絶望を多くの人々に与えたのです。

だけど、チーム代表のロス・ブラウンやドライバーのジェンソン・バトン、ルーベンス・バリチェロといった多くのスタッフたちは諦めませんでした。

代表のロス・ブラウンとCEOのニック・フライは、撤退したホンダチームを「ブラウンGP」として買収したのです。

その後に起こったドラマはまるでおとぎ話のような奇跡に満ちたものでした。

確かにエンジンはメルセデス・ベンツ製に変わり、ホンダが開発していたKERS(運動エネルギー回生システム)は搭載されませんでしたが、ブラウンGPの「初年度ドライバーズ&コンストラクターズタイトル獲得」というどん底から立ち上がった日本生まれの新チームが記録した最高の成果は今後も末長く語り継がれるものになるでしょう。

このことから、わたしが学んだこと。前置きが長くなりましたが、今日の本題はここからです。

ジェンソン・バトンの著書「ジェンソン・バトン自伝 ライフ・トゥ・ザ・リミット」では、当時起きたことが詳しく書かれていますので、このエッセイを読んで気になった方は是非ご購入ください。

https://www.amazon.co.jp/dp/4491036969/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_L0Z9CbT5F04DR

旧ホンダチームのメンバーたちは、2008年12月の撤退から翌年のブラジルGPでのタイトル獲得まで、まるでジェットコースターのような一年を過ごしてきました。その中でも歓喜と絶望を繰り返し、そこから偉大なる成果を勝ち得たのです。

そんな一年を見ていると、「どんな困難にも諦めてはいけない」というひとつのメッセージが浮かんできます。

ジェンソン・バトンの著書には様々な人物とのエピソードが多く収録されていますが、ジャック・ヴィルヌーヴやルーベンス・バリチェロといったホンダ時代のチームメイトたちとのエピソードは特に面白く、日本のファンにも馴染みあるものだと思います。もちろん、2004年と2005年のチームメイト・佐藤琢磨さんも忘れてはいけません。

諦めてはいけない、って、すごく使い古された言葉のようにも見えますが、実際にやろうとするととんでもないくらい難しい。後ろ盾がなくなり、すべてを失った(=絶望を経験した)人々にとって、諦めないことはもっともっと難しい。でも、諦めなかった。最高の成果を手にした。

こういう実際に起こった“奇跡”があると、それを見ている人々はめちゃくちゃ勇気を貰えるんです。

緊張に立ち向かうためのコツや、困難への向き合い方など、多くの失敗や成功を収めた人々の言葉はこれから頑張っていくための糧になります。

わたしにとって、キミ・ライコネンとジェンソン・バトンとペター・ソルベルグは永遠のヒーローです。

今をときめくヒーローたちから学んだこと。ちょっとマニアックな話にお付き合いいただき、ありがとうございました。

2019.06.05
Yuu

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Yuu
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