見出し画像

わたしたちの“代表の代表”を選ぶということ

 ウォーターゲート事件の影響によってリチャード・ニクソンが辞任した時、ジョン・F・ケネディが暗殺された時を除くと、アメリカは四年に一度、必ず大統領が変わる可能性がある。だが、日本は選挙によって総理が落選する可能性はないとは言えないが、選挙で落選することはまずない。基本的に内閣は議会の多数を占める与党の代表によって構成され、辞任の際も総理が自らの判断で内閣総辞職を決断することがほとんどだ。

 一昨日の朝、2021年10月から内閣総理大臣を務めてきた岸田文雄さんが次の自由民主党総裁選に立候補しないことを表明し、実質的な退陣を表明した。これにより、次の総裁選を経て、日本に新しい内閣総理大臣が誕生することになる。

 政治に何を求めるかは人によって違う。急速な改革を求める人がいれば、穏やかな変化を求める人もいて、現状に満足している人や政治を取るに足らないものと切り捨ててしまう人もいる。

 ただ、選挙にはきっと行った方がいいだろうと言いたい。日本の制度だと総理大臣は直接選べないが、総理大臣になるかもしれない議員や政党を選ぶことはできる。現状では自由民主党をひっくり返すことは難しいかもしれないが、ほかの政党やその政党に所属する候補者へ投票することで、国会で今よりも存在感を発揮させられる。別にあなたへ「政治に関心を持て」と押し付けているのではなく、選べる権利を自ら放棄するよりも、きちんと使った方がより良い生活を実現できる可能性が高まるよねという話。これは声を大にして薦めたいと思う。

 そんなわけで、新しい内閣が誕生する秒読みが始まったのだが、あなたは次の内閣に何を期待するだろう?

 昨日もフォロワーさんのスペースでいろいろな話を聞いたが、同じ政党や候補を支援する人でもかなり求めるものが違うので、無数にある課題をどこまで汲み取るかはやはり難しいところだろう。明日の生死に拘る、あるいは、国家としての豊かさに関わる部分は優先してほしいという声が勝るだろうし、一部の人たちにはすぐにでも実現してほしい部分は賛否が二分することもある。ただ、国民の一パーセントも支持していないとしても、それが「支援すべきではない」と瞬時に紐づけられないのも確かで、こういった部分も内閣の色が現れる部分だ。

 極端な話、どのような政党が政権与党になったとしても、荒唐無稽な法案が無数に議会を通ることはない。近年の選挙結果を見るとわかるように、そもそも日本はいずれかの政策に偏りすぎた政党を有権者の多数は支持しづらいし、仮にこのような政党が政権与党に加わったとしても、そういったことが実現できるほど長く政権は握れない。かなり偏った主張を行う少数政党は時々現れるが、ドナルド・トランプのような候補がいきなり現れてかき回すことはないから、自分の投票する基準が「政権を託したい党の候補者」である方は基本的に第三党くらいまでの政党に入れておくと安心である。(急激に増えることもなければ、10分の1に減ることもまずない)

 選挙の話を長々としてしまったが、いまが時代の分岐路にあるのは確かだ。日本は緩やかな衰退期に入っていて、急激に衰退することはあっても、急激に発展することは考えづらい。

 だからこそ、不確実な変化よりも、現状の保守と明らかに見合わなくなった部分の穏やかな変化を求める人が多い。もはやあまり適切ではない表現だとは感じるが、いずれかのウイングの色が強い政党や候補者よりも、穏健そうな候補が選ばれやすい。比例代表の一位に思いっきりエッジの効いた候補を据える戦略もあるものの、そういったことをする政党が支持を集めるかと言えば、きっと支持は集めない。

 また、より正攻法的な民主主義に目を向けると、デモやシュプレヒコールは非常に重要な行動で、民主主義の一部として無くてはならないものだが、時代や流行にかかわらず、日本で積極的な行動や行動を主体とする政党が主流になるかといえば、ちょっと難しいのだろうなあ……とは感じている。社会全体として、政治に主体的な興味を持つ人自体がマジョリティーではないのもあるし、そもそも集会自体を「うるさい」「めんどうくさい」と思っている人が決して少数派ではない現状を踏まえると、そこを動かすのはかなり時間がかかるだろう。

 ただ、だからといって、あなたがすべてを諦めてしまうのは絶対に違う。諦めた人ばかりの社会は停滞どころか衰退しかないし、行動した人だけが何かを変えられる。選挙はすべての有権者が政治に直接携われる唯一の機会だ。

 わたしも選挙の結果にがっかりすることもあるが、それでも、毎回選挙に行くし、デモやタウンミーティングに参加する。自分自身が一票を託した候補者は落選してもずっと追いかけるし、一般人に戻った後も応援する。選挙は当選したから、与党になったからといって全てを信任するわけではないし、賞賛も批判も同じようにされるべきで、こういった建設的な議論ができる社会こそ、きわめて現代的だと考える。

 次の選挙も必ず行こう。総理大臣が変わる時に、あえて選挙の話を。

 2024.8.15
 坂岡 優

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 いただいたサポートは取材や創作活動に役立てていきますので、よろしくお願いいたします……!!