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『進化思考』

生物学は多くの物事に影響を与えていると思っています。
直接的にも間接的にも。

生物学と一言にいっても遺伝子や生体構造といったいわゆる分子生物学や解剖学、生理学の分野から進化や生態系について取り扱う進化学や生態学などその範囲は膨大です。

今回は思考を進化と結び付けた一冊、『進化思考』について書いていきます。

進化とはランダムな変異と自然淘汰である

進化とは簡単にいうと「自然淘汰の結果」です。

どういうことか。

そもそも進化には突然変異が必要になります。
突然変異とは生物の設計図である遺伝子(DNA)にエラーが入り、予定していたものとは違うものになってしまうことです。
青いザリガニや白いアルビノの蛇などは突然変異です。

基本的に突然変異は長く生きることができなかったりとデメリットしかありません。
しかし、稀に他の種よりも有利になる変異が出てきます。そして有利になるということはその分子孫を残しやすくなり、子孫も同様にその子孫を残しやすくなります。
結果として長い年月をかけてその変異が種の大多数を占めるようになり、それまでの種は自然淘汰により駆逐されます。

これが進化です。

進化思考とは変異と適応の繰り返し

では進化思考とは何なのか。

一言でいうと、
変異と適応を繰り返して創造していくこと
です。

適応の思考:適応状況を理解する生物学的なリサーチ手法
変異の思考:偶発的なアイデアを大量に生み出す発想手法

この適応と変異を繰り返していくことで創造を高めていきます。
まるで生物が遺伝子の変異を起こし、環境に適応し、より洗練されたスタイル、メカニズムになっていくように。

違いとしては生物の進化は完全ランダムなのに対し、進化思考は変異の仕方を環境に適応させる方向に選ぶことができます(ただし人類が生物の進化に関与すると自分たちが望んだ方向に進化するように手を加えてしまいますが…)

変異は9通り

では実際に進化思考の変異をみていきます。
変異は下記の9通りです。

・変量:極端な量を想像してみよう。
・擬態:欲しい状況を真似てみよう。
・欠失:標準装備を減らしてみよう。
・増殖:常識よりも増やしてみよう。
・転移:新しい場所を探してみよう。
・交換:違うものに入れ替えてみよう。
・分離:別々の要素に分けてみよう。
・逆転:真逆の状況を考えてみよう。
・融合:意外なものと組み合わせよう。

個々の例を書くと長くなるので省略しますが、実際に生物の変異もこの9通りしかありません。

適応は4種類

では次に適応です。

納得できる確かな方向を確かめる手段、それが適応の思考です。

適応は下記の4種類になります。
なお気をつけて欲しいのが変異は9パターンあり、それぞれが独立してる(組み合わせも可能だが)に対し、適応はこの解剖(内部)、生態(外部)、系統(過去)の観点から見つめ、予測(未来)につなげていく必要があります。

・解剖
内部の構造を観るための観点。形態学・解剖生理学・発生学的な観点で、内部に秘められた機能や作られ方を理解することで、モノがすでに備えている可能性を発見する。
・系統
過去からの影響や文脈を観るための観点。そのものがどんな経緯をたどって、どう進化を遂げてきたか。その進化図を描き、過去から私たちがどう影響を受けたのかを探る。
・生態
外部との関係を想像する観点。動物行動学で生態系を俯瞰する方法によって、周囲の人やモノの関係性を探り、マクロなシステムとしての構造を発見する。
・予測
未来を明確かつ希望あるものとして創造するための観点。データから導き出すフォアキャストと、未来にゴールを設定するバックキャストによって、未来を現実に近づける。

変異と適応を繰り返し研ぎ澄ませていく

ではこの変異と適応をどう活用していくのか。

簡単です。
この変異と適応をひたすら往復するだけです。

変異と適応を繰り返すことでアイデアはどんどんらせん状に昇華されます。

下記は本書の一節です。

創造は成長する。これは、エラーばかりを繰り返す赤子が、しだいに、きちんと成長した大人に近づいていくプロセスに似ている。変異と適応を往復し続けると、最初は偶然にすぎなかったアイデアが徐々に必然的な理由を帯びるようになり、ついにはまったく揺れ動かない強固な思考の結晶にまで育つ。それが創造という現象だ。できあがったものは、完成された、論理の結晶のように見えるかもしれない。しかし忘れてはならないのは、既存の考えを疑い、偶発的な変異に挑戦し続けてこそ、新しい創造の種が生まれることだ。

あなたもぜひ変異と適応を繰り返してみてください。

本書には変異と適応それぞれの個別の例も書かれていますし、今回は載せてませんが図も載っておりとてもわかりやすく書かれています。

厚い本ですが最後まで楽しく興味深く読める本なのでぜひ。

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