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【読書】本日はお日柄もよく

原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」を読んだ。
人の心を動かすスピーチライターの話。自分も人前で話をする仕事をしているけれど、実は話す内容ではなく、誰が話をしているかの方がその場に与える影響が大きいという感覚、誰もが身に覚えがないだろうか。

その人が創り出す空気感。その人が話すと周囲の雰囲気が静謐になったりとか、明るくなったりとか。反対になんだか全然頭に残らないとか。

人材育成の世界ではそれをbeingという。あり方が大事。対比されるのはdoingで、こちらは何をするか。doingだけ真似をしてもぜんぜんうまくいかないと言われる。

自分のことを振り返ると、誰かに向けて話しているとき、人に届く言葉をしゃべれているか、そうでないかは自分で話しながらすでにわかっているところがある。
相手や場の反応からわかることももちろんあるけど、その反応をキャッチできるか以前に自分が人に届けられる状態になって話しているかで勝負は決まっているのではないだろうか。

この本の主人公は、元々はどこにでもいる普通のOLさん。だけどある結婚式でとても心に残るスピーチを聴き、そのスピーチをつくったというライターさんに惹かれ、その人の下でスピーチライターという仕事にのめりこんでいく。何か目標を持てず日々なんとなく過ごしていた人が、これだというもの、尊敬する憧れの存在を見つけることで、輝いていくストーリーとしても読めるけれど、私にとっては言葉を仕事にする人の心構えだったり、言葉そのものが持つ可能性、すばらしさを改めて感じさせてくれる本。

人に届く言葉というものは、その人の内側にある本当の気持ちを研ぎ澄ませていくことが大事。それが相手に届くbeingにつながる。

言葉は人の人生を変える可能性もある、ということを改めて確認するような素敵なお話でした。


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