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【読書】リフレクション-内省の技術-

たとえ意見の異なる相手であっても、対話して協働したり、合意することというのは大切だと言われています。私も、そして大抵の人も、このことを”言葉”としては理解して賛成しますが、かといって、現場では人と意見が異なるときに、「とても対話ができない」、「そんなのあり得ない」という場面に遭遇するもの。

正直、感情的になって、距離をとったり、つい説得してしまったりとしてしまうことは日常茶飯事に起きるのではないでしょうか。

本書はそうした私の現実の葛藤に、具体的にどのようにアプローチしていけばいいのか道しるべとなるような本です。

熊平さんは、内省や対話を進める上で、”認知の4点セット”というガイドラインを提唱されている。概要はこちらをご覧いただきたい。

人の意見の背景には、その意見を形づくった、経験、感情があって、更には個人の価値観が紐づいている。聴けと言われても、「何を?」「どうやって?」となってしまって、表面的な質問スキルやペーシング、確認、繰り返しをすればよい等をやってみるということがあるように思うが、これだけだとつまりはどこに向かっているのか今一つわからない。認知の4点セットを頭におくと、ここを理解しにいくという目的が定まっていく。このことがまず重要であると思います。

次に、私にとって発見だったのは、相手のことを理解しにいくということだと片手落ちで、同時に自分のことも認知の4点セットで理解しに行くことが必要であるということ。

つまる対話には相手の理解と同時に、自分の内省がセットでないといけない。もっというと、自分の内省を進めながら、相手とコミュニケーションをしていくことで対話が成立していくのであって、一方的に傾聴だけしていれば対話になるということではないということ。

これは、コーチングでもカウンセリングでも、1on1でも、共通することではないだろうか。

自分が、相手と話をしているときに、相手の発言を聴いて、その奥にある「この人はそのときどんな感情だったのだろうか」「どんな経験がそう思わせているのだろうか」「そこにはどんな価値観があるだろうか」というのを深堀りしていく。

同時に、そのことを聴きながら、自分はどんな意見を持ったのか。どんな感情が起きて、それには自分のどんな経験や価値観が紐づいているのか。それを相手に(押し付けるのではなく)観点として伝えながら、自分と相手との背景の違いを場に出していく。

そのことで、ジョハリの窓でいうところの、自分が知らない自分の領域に対する理解が増えていく。新たな観点が増え、より解釈の幅が広がっていく。そのことで、新しい理解にたどり着くということが対話である、という風に私の中では腹落ちできたように思う。

単に認知の4点セットを使えばいいという理解でこの本を読むと少しもったいない気がしている。繰り返しになるが、相手の背景を聴くと同時に、自分の内省にも同じく認知の4点セットを用いて自己理解を深める。そうして相手と自分を理解していくことが、冒頭の私の葛藤、現場で起きる「とても対話できない」「そんなのあり得ない」ということに対して、思考停止せず、何か違うアクションをとれる、対処していく、ということにつながるのではと思う。

なぜなら、相手とのコミュニケーションとは、自分と相手との相互作用であって、相手の分析・理解ではないのである。自分が与えている影響を知ってこそ、相手と対話ができる。

是非一度、手にとってみていただけたらと思います。


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