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【読書】心理的安全性をつくる言葉55

両利きの経営の提唱者である米スタンフォード大学経営大学院のチャールズ・A・オライリー教授は、カルチャーは「Patterns of Behavior」であると言っているそうである。

つまり、その会社の行動パターンや行動特性がカルチャーであるということになる。

うちの会社の雰囲気はよくない、変えたいというときにどうしたらよいか?

オライリー教授のご指摘に沿うと、その会社の社員一人ひとりの”行動が変わるように働きかける”ということがアプローチの方向性になるだろう。

人を採用したり、新たな仕組みを導入したり、ビジョンを策定したり…  様々な施策は導入したその先に、どんな職場の日常がイメージとして描かれているだろうか。

どんな発言が飛び交っていて、どんな行動が起きているか。Patterns of Behaviorのイメージを具体的に意図して導入していくとよいはずだ。

その意味で、本書で紹介されている55の言葉は、”心理的安全性をつくる”ために、使われる言葉として著者が学術的な知見と豊富な実践とを背景にまとめたPatterns of Behaviorの手引書のような位置づけであるように感じた。

心理的安全性のある職場が実現するとどんな日常があるか、体験したことがないとなかなかイメージがつかめない。理論はわかり、よいなと思っても、どうしたらよいかというところで止まってしまうかもしれない。もしも心理的安全性のある職場を目指したいなと感じた人は、本書を読みながら、それが実現された職場の日常を具体的にイメージすることに役に立つだろう。

「職場ではどんな会話がなされているか?」「上司と部下はどんな関係で、会議ではどんな発言がされているのか?」「クレームが起きたときはどうしているのか?」「新人が入社した時は?」などなど…それぞれのシーンに即してなぜその言葉を使うのかが意図を含め紹介されている。

本書では、心理的安全性とは「誰もが率直に、思ったことを言い合える」ことと紹介している。

この、”誰もが率直でいられる”ということが、私個人としてはハイライトすべきところかなと思っていて、本当にそうありたいのかという覚悟が目指すうえですごく問われるものだと思う。

仲が悪かったらもちろん、仲が良いがゆえに関係が壊れてしまうのではないか…と目的のために伝えるべき発言を飲み込んでしまうということも、望ましくないということになる。

もしも、心の本音の部分で、「自分の言うことを聞いてほしい。」「どこかで思い通りにしたい、させたい」という気持ちを手放すことができないとしたら、おそらく、ここにある55の言葉を実践してみたとしても、心理的安全性が思うように実現されるということは難しいし、機能しきれない。

もちろん、言葉が考え方をつくるということもあるし、デジタルに、0か1かというよりも、グラデーションのある世界でもあるのだろうとも思うけれども、思う通りにいかない難しさに直面する中で、諦めてしまうことも十分にあり得る。

この言葉を使いながら、自分の思想を点検してみる。半信半疑でも試してみて、現実に起きていることをみて振り返る。その中で自分の在り方を定めていくものなのかもしれない。

日本語を使う人は他の言語とは異なり、日本的なものの見方、カルチャーを自然に身体で体得していく。地方にある方言だってそうで、その土地の土着の気候だったり、生活習慣などの風習が言葉に反映されているものだ。

自分の言葉や行動には、自分自身の背景にあるカルチャー、価値観やマネジメント観がきっと反映されてしまう。言葉を使いながら、それを探求してみると多くのことを学ぶことができそうだ。


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