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【倫理の指導案】功利主義(ベンサム・ミル)×これからの「正義」の話をしよう

本授業のターゲット生徒
物事をなんとなくで決定しがちな生徒

なんでそんなことをしたの?なんとなくです。
なんでそれがしたいの?なんとなくです。
どうしてそんなことを言ったの?わかりません。


自分のことなのに、自分でわからない?



|授業の概要|

分野:功利主義(ベンサム・J .S.ミル)
テーマ:これからの「正義」の話をしよう
目標:自身の正義観を考えなおすことができる

|筆者の紹介|

この記事を書いている人:
ゆとりんり
新卒で倍率100倍の民間企業に就職後、教員に転職
教員採用試験の採用枠1枠に1発合格
教採の勉強は働きながらの完全独学
ブログで「ちょっと変わった授業アイデア」まとめてます。


|このページの見かた|


\導入/

今回の授業はこの本に沿っています。

なんと、ベストセラー1位…。私は中古のところから安く買いました

キャプチャ


読むのめんどくさいという方はこちらがわかりやすいです!(25分で見れます!)

スライドも本の表紙に合わせて作成しました。授業冒頭で知っている人を確認してみましょう。

みなさん、こんなタイトルを本屋さんでみたことありませんか?本日は、正義について考えていきます。

スライド1枚目


目標の提示も最初に行います。たとえ話とともに、生徒にうったえかけると良いと思います。

みなさんは、電車に乗ってて、目の前にお年寄りの方が来たら席を譲りますか?→なぜ譲るのですか?

例えば、誰かによく見られたいから?それとも本心から譲りたいから?何を基準に判断したのですか?あなたの判断基準(正義観)って何ですか?今日は、そんなあなたの正義観を考え直してもらいます。

スライド2枚目



\展開(トロッコ問題)/

トロッコ問題の前にこんな話を入れてもいいと思います。少し怖い話なので、生徒に合わせて使ってください。

実際にこんな話がありました。船長は有罪となるでしょうか?

スライド3枚目

1884年7月5日、イギリスからオーストラリアに向けて航行していたイギリス船籍のヨットミニョネット号 (Mignonette) は、喜望峰から1600マイル(約1800キロメートル)離れた公海上で難破した。船長、船員2人、給仕の少年の合計4人の乗組員は救命艇で脱出に成功したが、艇内にはカブの缶詰2個以外食料や水が搭載されておらず、雨水を採取したり漂流5日目に捕まえたウミガメなどで食い繋いだりするが、漂流18日目には完全に底をついた。19日目、船長は、くじ引きで仲間のためにその身を捧げるものを決めようとしたが、船員の1人が反対した為中止された。しかし20日目、船員の中で家族もなく年少者であった給仕のリチャード・パーカー(17歳)が渇きのあまり海水を飲んで虚脱状態に陥った。船長は彼を殺害、血で渇きを癒し、死体を残った3人の食料にしたのである。
引用:Wikipedia『ミニョネット号事件(ミニョネットごうじけん)』

スライド3枚目


考えるきっかけを作ったところで、トロッコ問題に入っていきます。トロッコ問題は扱い注意です。一部学校では、「うちの子に人を殺させるつもりですか!」とクレームも入ったそうです。ですが、そんなことありません。

自分の考える正義が必ずしも正義とは限りません。自分がよかれと思っても、相手を傷つけることもあります。まずは、自分の正義観を確認してみましょう。

スライド4枚目


わかりやすくイラストを用意してみました。多数決をとり、1人の犠牲をとると選択した人には理由も聞いておきましょう。その結果(数と理由)は黒板にメモをしおきましょう。

線路にはトロッコ(電車)。このままいくと5人の作業員が犠牲になります。ですが、たまたまあなたがレバーの近くにいます。レバーを引けば1人を犠牲に、他の5人は助かります。あなたはどっちを選択しますか?どちらかに手をあげてください。(→メモしておきましょう)

スライド4枚目


先の質問は人数で考え、「レバーを引く」という生徒が多いです。しかし次の質問では「何もしない(=押さない)」が増えると思います。レバーがあるかないかの違いなのに、生徒の思考は変化します。

それでは場面を変えます。あなたはトンネルの上にいます。目の前にはガタイのいい人が。下には作業員5人がいます。あなたがその人を下に、自らの手で押すと5人は助かります。押さなければ、5人が犠牲になります。どちらを選択しますか?どちらかに手をあげてください。→メモ

スライド5枚目


状況を整理します。最初「数」を正義とし、レバーを引いたが、次の質問では「押さない」に変化している生徒がいます。その生徒に質問してください。「直接手をかけたくない」と、押さない生徒が多いです。

こんな人いませんか?最初は「数」を正義としたのに、二番目では変化した人。〇〇さん、あなたは何をもとに二番目は判断したんですか?あなたの正義観って何ですか(優しめに)?ペアで基準を共有してみてください。わからないも歓迎です。

スライド6枚目
スライド6枚目


最後に次につなげる発言を生徒に残しましょう。

そうです。自分の正義って、曖昧なんです。
数で決めているのか、意志で決めているのかわかりません。
だって、「バーがあるかないか」で変わるくらいですから。

スライド6枚目


トロッコ問題は、こちらでも取り上げています。「功利主義×桃太郎」こちらの記事はスライドも無料でダウンロードできます!!



\展開(ベンサム・J.S.ミル)/

ここからはベンサム、ミル、マイケル・サンデルそれぞれの思想を共有していきます。

この本では、正義は3つに分けられるといわれています。授業はこの本に沿って3つの観点から、正義を捉えます。

『この授業はこれからの「正義」の話をしよう』を参考にしています。
この本で、正義は次の3つに分けられるとされています。
➀幸福の最大化
➁自由の尊重
③美徳の促進

スライド7枚目


1つ目、幸福の最大化です。幸福の最大化とは、つまり数です。幸福を数としてとらえ、計算します。

最初のトロッコ問題でみんながやっていたのが幸福の最大化です。
「数こそ正義」という考え方です。この思想の代表格が、ベンサムさん。

スライド8枚目


この「数こそ正義理論」は日常によくあります。生徒にも思い浮かべさせましょう。そして、リスクにも気づかせましょう。

数こそ正義って日常によくありますが、例を出せますか?隣の人と、出せるだけ出してみてください。そして、伴うリスクもあげてください。

スライド8枚目

なるほど、会議がそうですね。リスクについて、51:49で賛成が勝った場合。さて、数の正義に従うことは良いことでしょうか?

スライド8枚目

そこで、出てくるのが次の正義です。



2つ目の正義は、自由の尊重。これは、数ではなく、1人1人の気持ち・人権を尊重し、これからの行動を自分自身で決めることを正義とします。

51:49で少数派となった方に正義はないのでしょうか?もし、99:1になったら、この「1」に正義はないのでしょうか?次の正義は、この1人1人に注目します。そして、数ではなく、"自分で決定すること"を正義とします。

スライド9枚目


でも、個人が決定=なんでもOKではない。どこまでを正義として許すのか。これは考えなくてはいけません。

皆さんは「自分で決めることを正義とする」なら、どこまで許されると考えますか?
たとえば、「税金払わない。だって俺が決めたから」たとえば、「転売してもいい。だって私が決めたから」正義とはいえ、個人の自由はどこまで許されるでしょう?

スライド9枚目


ここでベンサムと比較されるもう一人をまとめましょう。功利主義といえば、ベンサムとJ.S.ミル。ミルは、質的功利主義と他社危害の原則をおさえます。

「自由とは、ひとに迷惑をかけなければなにをしてもよい」これがJ.S.ミルの考えです。そして、正義観について、ミルは質的功利主義を唱えます。快楽は足せず、正義とは、より質の高い方になります。豚より人です。

スライイド10枚目



\展開(マイケル・サンデル)/

3つ目の「美徳の促進」とは、『これからの「正義」の話をしよう』のなかで、マイケル・サンデル氏が唱える正義です。

美徳の促進とは「みんなで意見を出し合って決めたものが正義」となります。つまり、対話こそ正義ということです。

美徳の促進をクラス運営で例えるとこんな感じです。全員が意見を出して、"理想"をつくる。それにみんなで従う。これがマイケル・サンデル氏のいう正義です。

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美徳の促進は「みんなで意見を出し合って決めたものが正義」という考え方です。

マイケル・サンデル氏の理論を次のように解説しましょう。割と納得な理論です。

マイケル・サンデル氏の正義はこのような理論です。
①数は、少数意見の無視というデメリット。②質は、自由がいきすぎる可能性があるというデメリット。ともにデメリットが大きいです。だったら、それを知ったうえで話し合い、"これが正義"というものを決める。それを小さい時から教え込む。そして正義を実現する。

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\まとめ(サンデル理論を実践してみる)/

理想かのように思える理論ですが、実現可能なのか、実験してみましょう。そして、今回のターゲット(わからないで済ませる生徒)の意見も聞いてみましょう。先生側にも得のありそうな議論です。

グループ議論ののち、クラス全体で議論します。

みなさんにとっていい授業ってなんですか?理想を議論してみてください。それを正義とし、今後の授業で実現していくことにします?(笑)本気で。

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では、サンデル氏の正義が”正しい”のかというとそれも考えないといけません。本でも言われていますが、考え続けることが重要です。

最後になりましたが、美徳の促進にもデメリットはあるのではないでしょうか。そこを考えてみましょう。

スライド14枚目


これまでに公開した授業はこちらにまとめています。


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・ページ数:全14ページ
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