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人生史「ポケモン」から「カコモンへ」第四章@ポケモンルネサンス①

 関正生先生にのあとを追い、私はついに塾講師になります。採用試験を受け、配属された教室は、私が想像していた以上に居心地の良い職場でした。やがて塾講師として担当生徒との授業を重ねていくうちに、私はポケモンよりも大事なものを見つけることになりました。

情熱の火を絶やさないために

 前章をお読みいただいた方は、私が指定校推薦で大学に合格しているといいうことにお気づきだと思います。そして、読者の中には「一般受験も経験していないのに塾講師なんて務まるの?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。ただ、この「一般受験を受けていない」という点こそが、私の強みだと考えています。言い換えると、私には「燃え尽きる」可能性がないのです。

 大学の周囲を見渡すと、あれほど苦労して受験勉強をして入学したはずの人間が、サークルのメンバーと遊びほうけていたり、寝坊して授業に来ないというケースは少なくありません。彼らはきっと燃え尽きてしまったんです。高校時代にあれほどメラメラと燃え盛っていた情熱が、一般受験という戦場ででパッと弾けて消えてしまったのです。もちろん、先の見えている学生は、合格をつかみ取ったその後も情熱の火を絶やすことはないでしょう。しかし、私自身、自分が後者のような人間になれる自信はありませんでした。もし、一般受験で合格したとしても、その成功体験の余韻に浸って、先に進まなくなる危険性がありました。ただ確かに、受験に落ちるリスクを恐れたというのも一つの理由でした。しかし、やはり指定校推薦という選択肢を選んだ最大の動機は「情熱の温存」でした。今となっても、この選択は間違っていなかったと断言できます。

ついに塾講師に 

 年が明けて間もなく、ちょうどセンター試験を受ける少し前、私は某個別指導塾の採用試験を受けました。「指定校推薦」というのがバレると採用に不利になると考えた私は、指導科目として挙げていた文系科目の対策としてセンターの過去問を各10年分復習したうえで採用試験に臨んだものの、出題された問題はほとんど中学レベルであり拍子抜けしてしまいました。また、当初希望していた教室ではなかったものの、新教室の講師として即日採用となりました。

 採用面接のために勉強していたこともあり、センター試験本番ではかなりの好成績を残せました。その後、2週間くらいだったと思います。私は、配属先の教室に初出勤しました。そこでは、想像よりも10歳ほど若そうな見た目の教室長と、後に教室全体のリーダーとなる女性の先輩講師、N先生と出合いました。これから始まる新たな生活に私は胸を躍らせました。開校からわずか2か月ほどの教室であったため、ほとんどオープニングスタッフのような扱いでした。その後初めて参加した研修では、およそ10人ほどの講師が参加していました。どの方もとてもいい人たちでした。私が高校の制服を着た状態で参加したこともあってか、様々な先生に話しかけていただきました。これほど居心地の良い職場環境だとは思っていなかったので、次に出勤する日が楽しみで仕方ありませんでした。

時計が逆に進む感覚

 高校の卒業式が終わると、ついに授業ができる日がやってきました。これでもかと念入りな授業準備を重ねて授業に臨んだのをよく覚えています。N先生に後ろで見守っていただきながら、授業を進めました。生徒が理解できるまで解説する難しさを学ぶと同時に、生徒の「分からない…」を「分かる!」に変えられた時の喜びを知りました。高校時代にバイトしていた某チキン料理店では、時計ばかりを見ては「早くシフト終わんないかな」ということばかりを考えていましたが、塾での授業は一瞬で時間が過ぎていきます。逆にもう少し授業をさせてくれと思うこともしばしばです。「これ以上の天職はない」そう確信しました。

→次の記事(ポケモンルネサンス②)に続きます

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