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恋の終わる音①

 また好きだった人との別れを経験した。

音も無く、静かに、しかし着実に忍び寄っていた。

こんな日が来るなんて、付き合う前のときめいた胸の鼓動を感じていた時の自分は微塵も想像していなかっただろう。

今はとても胸が窮屈で、息がいつもより浅い。

過去の美しい記憶が。

どうすれば離れずに済んだのか、後悔の追憶が。

寂しい夜、メリーゴーランドに私だけを乗せて、

それぞれが縮まることのない距離を保ちながらぐるぐると回っている。

これに似た気持ちは、これが初めてではない。


 最初に経験したのは、大学一年生の2月。

友達の紹介を経て知り合った一個上の先輩、大学で初めて出来た恋人であった。

正直付き合い方は綺麗とは言い難い。

形はどうであれ、私は先輩に惹かれていた。

二週間ほどが経った。

その時にはもう私には‘‘恋人‘‘と呼べる存在はいなかった。

理由は、単純。

【相手をよく知らずに付き合ったこと】

“付き合ってから知れる”なんて甘い、らしい。

「合わないと思ってたんだ。別れよう。なかったことにしてほしい。」

『これから2人で合わせて行けないのかな、、。』 

なんて言葉には出来ず、家で1人トイレにいる時にお別れLINEを受け止めた。


『なかったことになんか出来ないよ。』と思いながら。

「そうだね、こちらこそごめんね。

もっとよく知ってから付き合うべきだったね。」

と返し、食い下がる度胸も無く潔い終わり方を選ぶ。

そんな自分が悔しくもあり、なぜか誇らしくも感じた。

この時、初めて胸が窮屈になる感覚を味わった。
 


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