【読書】〜青空と逃げる〜を読んで
辻村深月さん著書の本作。
自分が小学5年生のとき、当たり前のように友達と遊んだり学校に行ったり、家に帰ってご飯を食べていた。
その当たり前が突然、なんの前触れもなく崩れたらどうなるのか。
小学生の時にそういった状況が訪れたら、果たして素直に受け入れられるか。
僕は転勤族の父を持つので、小さい頃は何度か転校も経験している。
自分の知らない土地、学校やそこに通うまだ何も知らない生徒というのは、小学生からしたら間違いなく不安要素となる。
そんな状況が急に思いもしない形で訪れたらどうなるか。
突如訪れた日常の崩壊。そのさい家族はバラバラとなり、元いた場所にも暮らせなくなり、逃げるようにして母と息子は、様々な場所を転々とする。
新しい土地とそこで出会う人々との交流。母と息子の心境。父親への疑念。
様々な感情が渦巻きながら、必死に日常を取り戻そうとする家族の話。
逃げる親子。失踪する父。
舞台俳優の父は、ある日突然事件に巻き込まれ、そのまま失踪。ニュースにもその事件のことと、父の拳が行方不明であると報道される。拳の行方もわからず家族は心配する中、突如、母の早苗、息子の力の元に、芸能事務所の関係者と思われる人が現れる。
「父親を出せ。どこにいるのか知っているのだろう」
当然、このことについて何も知らない早苗は、彼らを追い返すが、それから何度も家まで来たり、早苗のパート先にも顔を出すようになる。
このままでは、いつか周りに迷惑が掛かってしまう。何より、すでに父親が事件に巻き込まれて失踪中であり、そのせいで怖い人に追われているという話が近所に出回っており、もといた場所には居づらい。
高知にいる知り合いが、彼女らの状況を知り、うちに来たら良いと言ってくれる。
これまでの日常は突然崩れ、ここから早苗と力の逃亡生活が始まることになる。
高知では、早苗の知り合いが勤めるお店がちょうど夏休みで掻き入れ時のため、人手を求めていた。早苗はそこで働きながら、力は普段とは違う場所に戸惑いながらも、地元の人たちに誘われてえびを捕まえに行ったりと、高知の自然を楽しんでいる。
力の夏休みはあと少しで終わる。そうなれば東京に嫌でも戻る必要がある。
どうするか考えている暇もなく、高知にまたしても芸能事務の関係者がやってくる。早苗と力は地元の人たちに匿ってもらいながら、迷惑を掛けてしまったという思いを胸にまた別の土地へと逃げていく。
様々な場所を転々とする中で、早苗の不安、力の不安とそれぞれが抱える不安が描写されているが、お互いにその不安は打ち明けることがで出来ず、それぞれの胸に抱えたまま、逃亡を続けていく。
まとめ
普段の日常がいつどんな形で崩れてしまうかわからない。
まだ小さな息子をこんな状況に巻き込んでしまったと思う母の心境、小さいながらに現実を受け入れようとし、自分なりに行動しようとする息子。
父親の失踪の真実もつかめないまま、いつまで続けたら良いのかわからない逃亡生活をする親子の心境は、悲しくて辛いが、現実をよくしようとする彼らの行動に、つい頑張れと、思ってしまう。
逃亡した土地で出会う人々との生活を通して描かれていく家族の行方はどうなるのか。
彼らの行動や心境を読むとついハッピーエンドで終わって欲しいと思っている。
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