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再現性を求めない

神山町にある「神山まるごと高専」の起業家講師としての仕事のため、徳島に向かっている道中にこの記事を執筆している。

起業家講師とは、「神山まるごと高専」の生徒に起業を身近に感じてもらうために行われる週1回の「Wednesday Night」に登壇する起業家たちのことを指す。詳細は下記をご覧いただきたい。

起業家講師は通常1年に1回神山に赴き授業をするのだが、私はこの1年半でなんと5回も徳島に足を運ぶことになった。最初は起業家講師採用担当との面談、2回目は高専開校前の学校ツアー、3回目は本来の起業家講師としての授業、4回目は生徒募集の一環としてのサマースクールでの模擬授業、そして今回5回目は受験希望者向けのオープンキャンパスでの模擬授業のためである。

まさかこんなに徳島に赴くことになるとは、私も思ってもみなかった。他の起業家講師に比べてもその頻度は格段に高いはず。もしかしたら私が一番高専と関わっている起業家講師かもしれない。

名だたる起業家の中で私が頻繁に呼んでもらえているのは、一番ヒマをもてあましておりかつフットワークが花から花へと移ろう蝶々よりも軽いことがその最たる理由であることは明々白々なのだが、生徒たちに話すことを考えていたり、また授業後に生徒たちからフィードバックをもらう中で、私が話す意味というのもそれなりにあるように感じることがある。

それは他の起業家のようにピカピカのキャリアの延長線上に今の姿があるわけでも、続けてきたあるひとつのことのプロフェッショナルというわけでもなく、それまでのあれこれを一旦“なかったこと”にして、専門外の、ただ自身の純粋な興味関心に基づいて、今の場所までようやく辿り着いた、という、私のキャリアにおける特異性が、ある意味においてはキャリア形成におけるひとつの可能性の提示となっているのではないか、と思うのだ。

もちろん、それは意図してできたことではなく、私にしたって“たまたま”でしかないので、再現性がある事象ではないのだが、そもそも再現性のあることにしか取り組めなくなったら、できることなどというのはグッと狭められてしまうのだ。


そう、再現性。

フレグランス業界で働きたい、あるいはフレグランス事業を展開したいと考えている人から相談を受けることがよくある。その人たちは私がどうやって今の場所に辿り着けたかということと、何をすれば私のようになれるのか、という2つの質問を往々にして投げかけてくる。それら質問の意図はなんらかの再現性を求めてのことだろう。

前者については包み隠さず話すものの、そこには多分に「運と縁」という要素が含まれるため、再現性からは程遠い。後者に至っては、私にだってよくわからない。

私に唯一いえることは、再現性がないことに挑戦する際は、下手に明確な目標を定めず、一歩進んだ先で考えて、自分ができること、やりたいこと、そしてその時に訪れる機会とを照らし合わせながら、次の一歩を決めていき、その積み重ねで当初は考えつかなかった、本当の意味で最適な道を見つけていくほかない、ということだ。

目標が明確だとそれが達成されなかった時に「うまくいかなかった」という結論になる。そういう意味では、私がフランスに行く際、「調香師になる」ということを目標にしていたら、今の私は調香師ではないという点において「失敗した」といえるだろう。

目標を曖昧なままにしておいて、少しずつ手探りでその都度その都度選択していき、その中で最適解を見つける、つまり、「うまくやる」ことが私は重要だと感じている。そういう意味で私は、とても「うまくやった」のだと思う。


こんな話を未来の高専生にすることがどこまで価値のあることなのかはよくわからないものの、聞いてくれる人のうちひとりでも思うところがあればいいな、と思いながら、今日も教壇に立ちます。

それにしても、今回はオープンキャンパスの模擬授業なので、学生の親御さんもいらっしゃる…いつも以上のプレッシャー…ドキドキ…

なんだか、授業参観前の新米教師の気分だ。


いってきます。


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