みんなちがって、みんないい
この三連休は、名古屋ラシックでの「サロンドパルファン2024」の店頭に立っている。
地方の三越伊勢丹グループでの「サロンドパルファン」は、他の部署から販売応援が来てくれるのが嬉しい。「サロンドパルファン」の開催前に販売応援の方々向けに開催する勉強会にも皆真剣に取り組んでくれるし、実際に店頭に立ってみて「香水の販売、難しいけど楽しい!」と口を揃えていってくれる。
特に名古屋は普段店頭に立っていない、内勤の方々が販売応援に来てくれる。内勤とはいえ皆販売経験があるので、接客が上手なのはもちろん、久しぶりの接客を存分に楽しんでいるようだ。「やっぱり店頭楽しいから戻りたい」なんて声も聞いた。
お客さんがいない時は販売応援の方々とあれこれ話す。最初はこちらが香水やブランドの説明をしたり、接客のコツなんかを話すが、だんだん関係ないことへと脱線していく。そうすると、みなさんそれぞれになかなか個性的であることがすぐにわかる。
特に今回は、とある女性社員のオタク生活が私の心を捉えて離さない。
その方は高校生あたりからアイドルオタクになった。最初はジャニーズの…誰だったかな、亀梨クンだったかな、とにかく誰かしらからハマり出し、今でいうところの「推し」を乗り換えていきながら、だんだんと有名無名様々なアイドルを、その時々で愛ているとのことだった。特にのめり込んでいる時は、仕事のない日はほぼ必ず遠征して「推し活」をし、その地で酒を浴びるように飲み、名古屋に戻っては仕事をする、ということを繰り返しているらしい。ギリギリでいつも生きていたいのだろう。
私はアイドル等にオタク的にハマったことが人生で一度もないので、彼女の話の大部分がイマイチ理解できていないのだが、話を聞く分には面白く、人はこうも違うものなのか、というのを改めて実感しているところだ。
中でも特に理解が及ばないのが、彼女の「システム」だ。この「システム」という呼称は私がつけた。
学生の頃は有り余る時間を全てバイトと推し活に費やしていた。時間的な制約がほとんどないので、アイドルのスケジュールに合わせてバイトと推し活に時間を割り振ることができていたのだ。
それが社会人になると、当然ながらそうはいかなくなる。特に彼女が勤めているような百貨店は、土日は出勤になることがほとんど。そうすると有名なアイドルだとなかなかスケジュールが合わなくなってしまう(らしい。私はそのあたりのことがよくわからないので彼女からの受け売りなのだが…)。
そこで彼女は、平日でも推し活のしやすい、地元名古屋を中心に活動しているアイドルに乗り換えたのだ。こうして社会人になった今でも、彼女は推し活を心ゆくまで楽しんでいる。
生活スタイルに合わせた推し活を可能としてくれるアイドルを“自動的に”推せるようになる「システム」ということになるが、私の理解はここで追いつかなくなる。「推し」というのは、なんらかの“琴線に触れる”部分があり好きになるものであるとばかり思っていたので、「推し活がしやすい」という理由でそのアイドルを好きになるということが全くわからないのだ。
つまりは、この「システム」においては、「推し活がしやすい」ということこそが“琴線に触れる”部分であり、それこそがそのアイドルを「推す理由」になる、ということだ。
ここまで読んで、読者の皆様は理解できるものなのだろうか…?私にはちんぷんかんぷんなのだが…
彼女の説明によると、「推し」そのものが大切なのではなく、「推している自分」というのが重要らしい。推しのために体力を削ってライブやイベントに行くことが善であり、有り金を叩いて自身の懐が寒くなるのに愉悦を覚える、ということのようだ。その前提に立てば、推す対象はわりと誰でもよくなってくるのは理解できなくはないが、そもそもの前提条件を私はうまく理解できない。理解ができないゆえに、私は彼女の話を非常に興味深く聞いている。不思議な人がいるものだ、と。
とはいいつつも、きっと彼女にしたって私のことを理解できないはずだ。香水が好きだからそれを仕事にしようと思い仕事を辞め渡仏し、紆余曲折を経て自分のフレグランスブランドを立ち上げ、日々大変なことがありながらもどうにかこうにか生きている、というのは、彼女の理解を大きく超えているだろう。
「みんなちがって、みんないい」(金子みすゞ)のだ。頭では分かっていても、本当にこの事実を理解できているのかと問われると、昨今のあれやこれやを鑑みる限りにおいて、そうはいえないだろう。そんな今、改めて金子みすゞの詩を読んでみるべきかもしれない。
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