人は他者のためにしか働けない
「僕は今、時間の全てを世の中をよくするために使いたいんだ」
大学院の同級生が同窓会で口にした上の言葉が忘れられない。その言葉には一点の曇りもなかった。彼は今、とある企業の社長として多くの従業員を抱え、世の中をよくするべく日夜時間と頭脳と労力を注ぎ続けている。
この記事を書き始めたのは日曜日の朝のスターバックス。福島にある「Optical Yabuuchi」での店頭接客に向かう前の朝ごはん、「粗挽きソーセージパイ」を注文した直後に、「やっぱりシナモンロールにすればよかった…」と思ったものの訂正できなかった気弱な私は、きっと記事を書き上げた後ミスタードーナツにてポン・デ・リングを頬張ることだろう。
チョコファッションかな…やっぱり。
と、そんなことはどうでもよくて。
昨日は終日「Optical Yabuuchi」の店頭にいた。福島でのはじめてのポップアップはどうなることかと思ったが、多くのお客さんにお越しいただいた。
いい眼鏡屋さんでのポップアップは毎回うまくいっているようにふと思った。それは眼鏡屋さんが他の業態以上にお客さんとの距離が近いことに起因しているのかもしれない。
特に今回ポップアップをしている「Optical Yabuuchi」はその客層の広さに驚かされる。老若男女とはまさにこのこと。そしてそれに対応できる商品ラインナップと接客があるからさらに素晴らしい。
店頭に一日立っていて、このお店が地域のために存在していることを強く実感した。単純に視力矯正器具の提供にとどまらず、お店に来る老若男女をどうおしゃれに、可愛く、カッコよくするか、ということに真剣に向き合っているのだ。さらに、会社としては眼鏡屋の枠を超えて、地域活性化のために様々なことに取り組んでいる。
福島のもうひとつのçanoma取扱店である「kawl.」も、実は「Optical Yabuuchi」の店主さんに紹介してもらった。地方だと商圏が被るという理由でその地域に複数店舗の取扱店を持つことを嫌がられることもあるが、そんな細かいことは気にせずに好きなブランドを取り扱えるようにするという寛大な対応だったように思う。結果的に、Kawl.でçanomaを知ってくれた多くのお客さんが今回のポップアップに足を運んでくれた。きっと逆の送客も普段から起こっているのだろう。
閉店後「Optical Yabuuchi」の店主やスタッフの方々と飲みながらあれこれ話をした。そんな中で冒頭の言葉を思い出しながら、ふと、人は「他者のため」にしか働けないのではないか、と思った。つまり、本質的には、人は人の役に立たないことはできない、ということだ。
ふと思っただけで、そこに強い確証があるわけでも、それを説明できるロジックがあるわけではない。ただ、私が今まで仕事で関わってきた素敵な人たちは、皆一様に、誰かのために働いていた。それも、本気で。それは漠然と「社会に貢献したい」とか「困っている人を助けたい」というのとは違い、よくしたい対象が明確にあり、かつそこに愛があるように感じられた。そしてそういう人たちの行為の中に、本質的な「仕事」を見た。
過去の経験から帰納的に導き出されたひとつの仮説でしかないが、私は今、“なんとなく”そんな気がしている。それは、私自身の仕事においても、直接他者を思っていなかったとしても、結果的にそれが私の外にある社会への貢献となっていないと意味を感じられないし、そもそもそういったことはできないように思われるところからも、それがいえそうだ。
誤解のないように付け加えると、「仕事は他者のためにされなければならない」といっているわけではなく、「人はそもそも他者や社会への貢献なしに仕事をすることができない」ということをいいたいのだ。だから会社は社員に愛社精神を持つように教育し、軍隊では愛国心を持つように訓練されるのかもしれない。それは仕事をする大きな意義になるのだろう。
もしそうだとすると、私が仕事をしている背景にも、人や社会に対しての貢献がある、と私が感じているところがある、ということになろうし、実際にブランドを立ち上げる時から常にそれが念頭にあった。私は私自身の社会に対しての貢献を「世にいい香りを送り出すこと」だと定義しており、これからもそれをし続けていこうと考えている。
世の中をよくしていきたいという気持ちは、年々高まっている。まだ冒頭の彼のように、自分の時間全てを社会をよくなるために使いたい、と思えているわけではないが、そうなる日が近い将来、もしかしたら自分に訪れるかもしれない。そうなったら、きっとブランドのあり方も変わってくることだろう。
その日が来ると信じて、一歩一歩、着実に歩みを進めていこうと思う。
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