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大人の思い込みと子どもたちの偏見のなさを描く絵本「ちびっこちびおに」

たまたま息子が保育園で借りてきた絵本が、素晴らしい絵本でした。

人間の子どもたちと遊びたい鬼の子供が、服を着込んで正体をバラさないようにして人間の世界に近付こうとしますが、外で寒い思いをしている子どものためにあっさり自分の服を着せて正体がバレてしまい、でも人間の子どもたちはそんなこと一切気にせずに一緒に遊ぶ、というお話です。

「どんなことがあっても、これをぬいではだめよ。もしちびおにだなんてわかったら、ひどいめにあうんだからね」と念を押す鬼のおかあさんと、子どもたちの気にせず一緒に遊ぶ様子の対比が際立っています。

通常、鬼は人間世界に害をもたらす存在として描かれますが、この物語の中ではとても優しくて愛らしい存在として描かれています。

「こぐまちゃん」や「しろくまちゃんのほっとけーき」のシリーズで有名なわかやまけんさんの温かみのあるイラストで、人間と鬼の子どもたちが一緒に遊ぶ様子の見開きが素晴らしいです。ストーリーは「ちいちゃんのかげおくり」で有名なあまんきみこさん

あまんきみこさんの作品では、他にも代表作「おにたのぼうし」で優しい鬼が登場し、「にんげんって おかしいな。おには わるいって、きめているんだから。おににも、いろいろあるのにな。にんげんも、いろいろ いるみたいに。」という台詞を言うシーンもあります。

ダイバーシティとかインクルージョンとか差別意識とかそういう言葉を一切使わずに、物語と絵で本質的に大事なことを語ることができるということ。そして、これが1975年、いまから40年以上前に出版されたという事実。「日本は遅れている」とか聞いたようなことを言って諦める前に、こういった日本的な表現の素晴らしい作品がきちんとあるということを知るべきだなと思いました。

絵本の力ってすごいなと改めて。そしてこれを見つけてきてくれた息子に感謝です。

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