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クールベさん・・・。

本来ならば、パナソニック汐留美術館で開催中の『クールベと海』展。緊急事態宣言のあおりをうけて、臨時休館がつづいている。観に行きたいと思っていたのに、行けないままになっている。

東京都の緊急事態宣言は6月20日まで延長されることになったけど、開館が再開される美術館や博物館があるとも聞いている。

そのため、ちょっと期待して、ウェブサイトを訪問した。しかしながら、パナソニック汐留美術館は、いまのところ臨時休館のままのようだ。このまま緊急事態宣言の解除まで休館がつづくとなると、会期が終わってしまう。とても残念。

上記の公式サイトには、延長前の緊急事態宣言期間だけ、担当学芸員によるギャラリートークがオンライン配信されている(つまり本日5月31日まで。まだの人は急いで〜!)。

陸の絵から海の絵へ。クールベ作品だけでなく、同時代の作家の作品も交えて構成されているようだ。落ち着いたトーンの壁面といい、帆船の模型や水着など絵画以外の展示といい、とても期待できそう。ギャラリートークの映像を観て、はやく実際に観にゆきたいと思った。

◇◆◇

せっかくなので、過去の展覧会図録を探してみた。クールベの回顧展は・・・なかったかな。クールベはわたしの好きな画家のひとり。思い出せないということは、回顧展は観ていないか、わたしの記憶にのこるほどではなかったのだろう。

見出し画像は、表紙に《出会い、こんにちはクールベさん》があしらわれた『魅惑の17-19世紀フランス絵画展』(と、かならず割り込んでくる同居猫)。2005年に損保ジャパン東郷青児美術館(当時)で観たもの。この企画展には、表紙の作品をはじめ何点かクールベ作品が来ていた。風景画は下の2点(図録より)。

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《アンブリュッサムの橋》と《ラ・トゥール・ド・ファルジュの眺め》。

あと、2010年にBunkamuraで観た『語りかける風景』展。クールベ初期の風景画《ルー峡谷の雷雲》が展示されていた。白い石灰岩と、影になった峡谷の対比が印象的。これも同展の図録から。

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クールベの作品ではないけど、クールベの弟子イポリット・プラデルによる《ガロンヌ河畔の風景》も紹介しておく。

当時、わたしが会場でのこした走り書きのメモによると、このガロンヌ川をユーフラテス川のようだと記している。

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わたしは内戦がはじまる直前まで、ちょくちょくシリアに出かけていた。滞在していたのは、ユーフラテス川のほとりにある町、ラッカ。そこから川をくだる方向に数十キロ、ほぼ毎日移動していた。

シリアでは、幹線道路を離れると未舗装の小径ばかり。川沿いは緑が豊かだけど、山地のほうに抜けると途端に植生がなくなっていった。この19世紀フランスの風景画に、水をたたえるユーフラテス川とその両岸の緑地を連想したというわけだ。

シリアでは、あまり風景を描く余裕がなかったのだけど、いくつか仕事中に描いたものがある。そのなかから、ユーフラテス川の河畔の様子がわかりそうなものを紹介しておく。

閑話休題。1ヶ月ほど前に、コンスタブル展にからめて、風景画について書いた。わたしのなかでは、ひそかに風景画熱が再燃している。

コンスタブルより、ひと世代若いクールベは、より積極的に写実主義をうったえ、みたままの光景を表現した画家だ。しばしば社会的な意味合いをこめて、より踏み込んだ表現で、反体制・反アカデミズムを標榜していた。政治的にも、急進的な危険人物とみなされていた。

最も傲慢な画家と自称して、写実主義(レアリスム)宣言をしたクールベ。人物画などはその姿勢が鮮明だったけど、風景画はそれほど露骨な表現ではなかった。しかしその裏には、彼ならではの鋭い視点が反映されているはずだと思う。

この『クールベと海』展は、そんなクールベの風景画をまとめて鑑賞できる機会だ。ほんとうにほんとうに、会期終了前に再開してほしい。

後日追記:
会期のこり2週間弱で、展覧会の再開が発表されました!

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