「フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請問題」は日本にとっていかなる意味を持つか

昨日、フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相が共同で声明を発表し、フィンランドが速やかに北大西洋条約機構(NATO)に加盟する意向を示しました[1]。

また、フィンランドと同様にNATOに加盟していないスウェーデンも、5月16日(月)にアンデション首相が加盟申請の方針を表明する見通しであるとされています[1]。

ロシアと約1300キロにわたり国境を接し、第二次世界大戦中のいわゆる冬戦争や継続戦争などの歴史的な経緯もあるため、フィンランドはNATOには加盟せず、議会制民主主義と自由主義経済に基づきつつも軍事的にはロシアに配慮して中立を標榜してきました。

こうした政策は、第二次世界大戦後に独立国でありながらソ連の強い影響下に置かれ、国家としての主体性を制限されていたという事実を踏まえた、ある意味で「小国の知恵」と言えるものでした[2]。

しかし、ロシアによるウクライナへの侵攻は、フィンランドが長年にわたり維持してきた「小国の知恵」の有効性を疑わせ、結果として国防政策の根本的な転換をもたらすことになりました。

スカンジナビア半島の4か国のうちノルウェーとデンマークはすでにNATOに加盟し、ロシアに近接するフィンランドとスウェーデンが未加盟であることを考えれば、現下の状況からも両国が軍事的中立を維持することが難しいと考えたとしても不思議ではありません。

一方で、欧州諸国の多くはエネルギーを含む各種の資源をロシアに依存しています。そのため、ロシアが強硬に反対するNATOへの加盟は、エネルギー安全保障に影響を与える懸念があります。

このとき、目前に迫る軍事的な危機への対処と長期的な影響のいずれを選ぶかは、究極的には各国の国民に他ならず、他国民はその推移を見守るばかりとなります。

ただ、ウクライナ問題を契機として顕在化した米ロの対立が欧州各国に中立的な態度を許さないとすれば、事態は日本にとっても看過できません。

何故なら、もし東アジアにおける米中の対立が深刻になれば、日本は両国の間隙を縫って渦中の局外に立たない限り、旗幟を鮮明にする必要が生じるからです。

その意味で、今回のフィンランドやスウェーデンによるNATOへの加盟申請の問題は日本からはるか遠く離れた国での出来事ではなく、むしろいずれ起きかねない事態に備えるための、参照事例の一つとなります。

それだけに、両国の防衛政策の転換とその後の動向を、われわれは注意深く見守る必要があるのです。

[1]フィンランド加盟申請へ. 日本経済新聞, 2022年5月13日朝刊1面.
[2]フィンランド化, 国際関係・安全保障用語辞典 第2版. ミネルヴァ書房, 2017年, 277頁.

<Executive Summary>
What Is a Meaning of Finland and Sweden's Move to NATO for the Japanese People and Government? (Yusuke Suzumura)

The Government of Finland announces that they will apply to a member of the NATO and the Swedish Government is estimated that they will move to the NATO too In this occasion we examine a meaning of such movement for the Japanese people and the Government of Japan

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