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経営と知財 #2-1 マクロ知財戦略、重要なのはルート選択

・知財と競争優位

知財で競争優位性を作るということは、
ある顧客への提供価値(目的地)に対して実現する手段(目的地に通じる道)を作った場合、その手段を守る壁(道に設けた関所のようなもの)を設けて他社の後発参入をコントロールできる状態にすることです。
その道を他社が通ろうとした場合に、関所のゲートを閉めて通せないようにしたり、幾ばくかのお金を取って収益を得たりします。前者は差し止め、後者はライセンス収入などにあたります。後者の場合はコスト優位性を担保することにもなります。

通常、ある価値を実現する手段は複数存在することがほとんどです。ビジネスに資する知財(特に特許権)には、以下3つの類型があります。
自分が作った手段だけではなく後から参入するであろう競合他社も見越して複数の手段を全て網羅的におさえておく「他社抑止」。開拓の先行者として一番優れた手段をおさえておき、それ以外は他社が通れる状態の「優位性確保」。何が一番優れた手段かわからないものの、自分が作った手段をとりあえずおさえておく「水路確保」。
ちなみに、ビジネスや技術の構造(ある価値に対してどんな手段が考えうるのか)がわかっていないと、これらのどれに相当するかが判断できず、優位性を担保できる知財を作ることができません。

fig 1

・効率的に競争優位を作るには

例えば、関東平野を開拓するイメージをしてください。東京から箱根湯本へのルートを作るとします。その場合、どこに道を作り、どこに壁(関所)を作ると、後発の開拓者に対して、「効率的」に「競争優位」の状態が作れるか。東京には縦横無尽の無数の道があり、小田原手前の大磯、二宮あたりで山があるため一旦道(ルート)が集約されます。小田原から箱根湯本へはさらに山が険しく道(ルート)が集約されほぼ選択肢がありません。この場合、どこに壁(関所)を作ると最も効率的に後から参入する他社を防げるか。容易に想像できると思いますがルートが限られるところに壁を作るのが最も効率的です。

fig 2

このルートの例は、ビジネスでは顧客へ価値を提供するまでのバリューチェーンだったり、技術でいうと処理のプロセス(例えば、センサーでセンシングして、AIが解析して、結果をユーザーに送信して、そのデータをユーザーが使う、のようなながれ)に相当します。どんな価値を提供したいか(どの目的地を目指すか)で道が異なりますし、提供する価値が決まっていたとしてもそれを実現するためのルート(どうやって目的地を目指すか)は無数存在します。

知財は先行投資であり費用も相応にかかりますので、いかに効率よく競争優位性を担保できるかは、繰り返しになりますが、その前段となるビジネスや技術の詳細な分析が必要です。最適なルート設計や、そのうえでどこに関所を設けるかを考えておく必要があります。


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