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書評 #89|自由研究には向かない殺人

 自由研究の題材として過去に起こった事件を据え、その全貌解明に向けた一挙手一投足を追った作品。イギリスの片田舎という決して大きくはない舞台で起こる群像劇。特に治安が悪いわけではないが、事件が常に脳裏をよぎり、コミュニティに根づいた人間関係や習慣から伝わる閉鎖的な雰囲気も重なり、ちょっとした恐怖感が常に広がる。

 力強く、颯爽と。そんな言葉が似合う主人公のピップ。賢明で物怖じしない姿勢が道を開き続ける。女子高生の自由研究に関係者がここまで口を開くとは思えず、好都合なことがしばしば起こるが、物語の面白味と優秀さが損なわれることはない。そこには期待に違わぬ結末があり、読者を飽きさせない怒涛の展開が用意されている。

 人種や性差別と戦い、正しいことを全うしようとするピップ。SNSを駆使した調査は時代性も感じさせてくれる。


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