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松尾友雪〈Yusetsu Matsuo〉
2024年10月14日 16:13
芥子の花ひっそりと思い出す。この詠う子宮に押し出される前のヒソヒソと泳ぎ出した魚は束縛の中に眠るだけで抵抗は細やかな呼吸だ微睡の中、光と影が響き合う「煙れ、意味を破壊した発想よ」月の泡腫れ上がる体が詩の糸で記憶に塞がれている。剥離する途端、音もなく追いかける斜めの涙が溶けるから砂濡らす私は泳いでいる穴だ。追いついてくる針を止めて屈折して広がり詩詠う眠りは冷蔵庫で性交
2024年9月29日 16:28
長い夏が過ぎ去り風に含まれる短い秋が雲を千切る。厭世的な芸術至上主義者がタバコをふかして斜めになった建築物の内部に入って行く。何色を求めて空は赤く染まるのだろう?月は自他の境界が曖昧で自分を恒星と勘違いする。だから時に美しい君が留学をすると寂しくなるから、コロナになれば良いと祈った。呪いを解く物語がないなら誰かを呪う物語を書きたい。他人をどうしても許せないのなら誰かを罰する詩を書けば良い。惑星はゆ
2024年5月4日 16:50
この街にあるいくつもの孤独な睡眠が並べられたドミノのように倒れて行けば、爽快な目覚めになるに違いない。「詩は歌詞ではないから鼻歌にはなれないのさ」と巻貝が云った。不安定な記憶に課せられた秩序が綺麗に崩壊したら詩は正常に認識されるだろうか?分断されたスクランブル交差点、スマホを掲げる外国人観光客とタバコを吸っている浮浪者をカメラが盗み撮り、夜空は抽象画のようだ。人それぞれだから言い争いなんて無意味だ
2024年4月28日 13:06
炭酸水に時計草を溶かしてしまおう。無数のエモい言葉。感動と感謝と奇跡も植物と一緒にアイスティーに混ぜよう。そうやって毎日を誤魔化しながら筋肉痛を堪えるのだ。君の欺瞞で植物が萎えてきたら書き溜めた日記を燃やして肥料にするよ。猥褻な言葉や卑猥な日常が、真っ赤な余白と化学反応を起こして憎しみの糧になれば私達の会話にも少しは意味が芽生えるのかも知れない。君はデリカシーに欠け、私は秘密がなさすぎる。悪は凡庸
2024年1月24日 14:33
惑星から滑り落ちる君は今日はどこにしがみつくのだろう?私はいつも通り孤独に活字を追っている休日は途方に暮れ文字を書くのだが結局は何も追いかけていない。あるのはドーナッツのような奇跡と冷たい足跡だけだ。どれだけ推敲しても足音はついてくる。自分という影を振り切ることはできない何にしがみつこうと。
2023年11月26日 15:31
雨が降るたびに寒くなりある日冬が到来した。冬はカモミールの香りがして私は小さな咳を溢した。点線で繋がれた曇り空をなぞると、綻びからすぐにでも夜空が出てきそうだ。呪ったり呪われたりしながら少女達は走って行く。そうしていくつもの血液が枯れて行き君は生きて行くだろう。生きることは恐ろしい孤独から孤独へ吸い込まれて行くようだ。水槽にいる生物を根こそぎ食べてしまっても空腹は治らない。君は怒りながら生きて
2023年11月7日 06:13
ガラクタを積み上げて 遠くの海へ鼓動を投げた どこか遠くの戦争へ向けて何も出来ない私は投げたテンポは遅く、日常は溶けてしまいそうだ雨の日の明け方コーヒーを淹れて尋ねる私は平和だろうか?色々な銃火器があり、 様々な兵器があり それら暴力を集めるのが好きな人がいる安い日常の雨の中 去勢された暴力がムクムクと目覚めて 電車に乗り、ガタンゴトン学校へ歩いてゆく。
2023年11月1日 16:44
感傷を嫌う君が夕暮れに黄昏れる時、欺瞞や身勝手さが鮮血のように滲む。白鷺は私達を警戒しながら虫を食べて、秋に仮装する人々に君の苛立ちは育つ。自由を愛するなら公平を憎むべきだ、愛はいつだって身勝手なものなのだから。身を震わせて鳴いてみればわかる高揚に靡かず毎日震えていれば、いつか歌になれる。だが書かれた言葉はいつか消失する、絶望に耐えられない祈りは宙吊りにされて残るのは簡素な足
2023年10月10日 14:22
雨が降る度に寒くなり雨が上がる度に秋は更けてゆく。都会は外国人が増えた。東京というロマンコーヒーの美味しい季節だ。最近は文章が上手く書けない思考の濁り、感性の劣化切れ味の悪くなる刃物のようだ。何かを捉えようとすると固くなり、何かを流そうとすると甘くなる知覚のシャッタースピード致命的な物忘れ文章という不完全な器を満たして行く言い訳だ君は永遠に沈黙する。緩慢な動きに合わせ
2023年9月24日 16:47
会話は点々として患者達は寝室で時間を潰す。果てしない時間と空気が二重扉の中で渦巻いて続き夏は薬で老いさらばいた。君が語る美しさ健康的で恒常的な輝きは狂人にはまぶしくも儚い満ちるが如く散りゆく思考だ。秋の息吹でテーブルは沈黙する。タバコが吸えない女性が突っ伏し空腹を訴える。理由もなく叫ぶ女性が看護師に怒られた。暗く、不健康な精神病院で、一体何に感動すれば良いのだろう?
2023年8月19日 19:09
きっと愛は憎しみに変わるだろう、けれど慈しみは残るだろう、その醜い変容の過程を転がり落ちる悲しい肉体が私なのだ。宙ぶらりんの体から愛はうつつを抜かすもの君が決めつける幾つものルールを、私は何一つ取り除けない。建物の隙間、影に含まれた光、広大な建造物の精密な細工、君は恍惚としている。君の興味は神秘性なのか?いつから愛しているのか、もう今はわからない。きっと隣で話した時
2023年2月1日 21:11
気が狂う 闇を押し付ける病院の寝息 カーテンで区切られた圧迫感が まもなく死のうという老人達の眠気を拭う。 もう一滴も眠らずに死ぬ者達に どのような慰めがあるだろう?「それでも一生懸命生きて」と誰がいえるだろう? そんな開けない夜が 私の眠りをはばむ。 #詩
2023年1月27日 22:03
重い気配に息を殺され軽い世界病を移されコラージュの祭典回転、発展、肺死んで配信だ。血を吐いてくれこの痛みでしか償いえない官能を串刺して灯火を落としてくれ。いくつもの記憶と予感の残骸が、いつか雨となってお前を隠したらいい。
2023年1月27日 19:54
曇り空に黒い繭を吐く。軽い綿のような感触で中身は血液が入っている。そこから赤い糸が抽出されて私は君に繋がろうとする。空っぽの魂が沢山の空洞を通して真っ赤に溶けながら生きる意味になろうとする。けれど糸は必ず切れ雨は降り始める。糸は散り散りに溶けて誰にも繋がらない。それと知っていながら私は繭を吐く。 #詩