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お隣さん、お前もか!!?:石川県南西部高山地域【災害から身を守るvol.8】

石川県金沢市南西部の大池平は石川県民の自然保養地として親しまれている場所です。ここには地すべり地形が見られるのですが、よく見ると近くにも似たような地形が!!

お隣さん!

では早速、地形を見てみます。

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スーパー地形(カシミール3D)より抜粋
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

大池平は見つけられたでしょうか?

大池平地すべり_隣も

こちらですね。赤点線が細い尾根で、北東にも似たように囲まれています。
今回はこの北東の地域が主役です。

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アップで見てみましょう。
ウム・・やはりこちらも地すべり地形でした!

どこがどう地すべり地形なのか?

私は見慣れているのですぐに分かりますが、普通は分かりにくいですよね。
順を追って説明しますね。

お隣地すべり_01

まずはじめに赤線で囲った部分。
普通の山は頂上からなめらかに斜面が続いていきます。
ところが地すべりは、背後の亀裂部分がへこむため、斜面の途中に頂上のような凸地形ができることがあります。
これを専門用語で分離小丘(ぶんりしょうきゅう)と言います。

次に陥没地形側部の谷地形です。
上の図の青線のうち上側の方は「くの字」に曲がっていますね。
これは地すべりの背後の亀裂左側部(側壁とも言う)の亀裂がつながり、凹地系になって水が流れるようになったためです。
下側の青線は右側部の亀裂が単独で谷地形をつくっています。

そして頂上付近の急崖。これは地すべりが前へ動いていく一方で、取り残された山が崖になるためです。

地すべり地形
地すべり地形の模式図:鈴木(2000)より
画像6

分離小丘は断面図で見ると分かりやすいと思います。
図の青線の方向で切ってみます!

地すべり断面_分離小丘

小さいものも含め、斜面の途中に小山があるのがお分かりかと思います(※赤矢印)。

地すべりのカタチ

では地すべりのカタチを見てみましょう。

お隣地すべり_02

大枠ではこの範囲と考えられますが、小さいブロックもありそうです。

お隣地すべり_03

こちらです。さらに小さいブロックがありそうですが、ここではやめておきますね。(※対策工事する際は細かく検討します)

この地すべりは地名にちなんで黒瀑山(くろたきやま)地すべりと名付けましょう。

双子の地すべり?

大池平地すべりと黒瀑山地すべり、色々と似通っているんです。

地すべり2つ

まず、青点線で描いた、周囲を取り囲む尾根の方向が似ています。
そして決定的なのは移動方向
地形的特徴から想定される移動方向がほぼピタリと同じです。

地質は約2000万年前の流紋岩溶岩火砕岩(水中でマグマがバリバリに割れた凝灰岩の一種)。
一般的に考えたら、ガチガチに硬くて地すべりになりにくい地質です。
もし地すべりになるとしたら、溶岩や火砕岩などの地層の境界面、つまり層理面がすべり面になった場合だと思われます。

また細い尾根は節理面(せつりめん)という、地層中にできた割れ目が原因だと考えられます。

2つの地すべりとも一連の同じ地層グループに属してます。
であれば当然、層理面節理面ともに同じような方向ですので、似た地すべりになったのでしょう。

地すべり2つ_地質図
20万分の1地質図幅「金沢」:地質調査所 より
地すべり地形分布図2
地すべり地形分布図:防災科学技術研究所より

念のため地すべり地形分布図を確認したら、ちゃんとありました。
上が黒瀑山地すべり、下が大池平地すべりです。

最後に注意点を・・

大池平とその隣接地は地すべり地形だとお話ししました。
地形図から読み取れる特徴から「まず間違いない」と考えています。
今現在、動いているかどうかは分かりません。(※現地調査が必要)
でも少なくとも過去に動いたのは間違いないと思います。

では即「怖い場所」かと言えば、そうではありません
地すべりは活発に動いたとしても年間数cmレベル。
動きが大きい場合は年間m単位で動く場合もありますが、その時は国や自治体が調査し、警戒態勢になります。

ですので、そのレベルではない場合は

・普段は人は立ち入らない(レジャーなどに限る)
・建物や道路など重要な構造物がない
・地すべりのすぐ下流に集落や重要な施設がない
・雨の日やその数日後は人が立ち入らない

以上の条件であれば、過剰に恐れるものではありません。

特に日本人・・我々のご先祖様は、地すべりと共存してきた歴史があります。それについては、またいずれお話ししたいと思います。

以上、お読みいただき、ありがとうございました。


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参考文献

鹿野和彦・原山 智・山本博文・竹内 誠・宇都浩三・駒澤正夫・広島俊男・須藤定久(1999) 20 万分の1 地質図幅「金沢」,地質調査所.

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