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化石の壁と足あと:石川県南西部高山地域【古生物シリーズvol.2】

石川県南東部の高い山々が連なる地域の中でも、手取川流域では恐竜の山地として有名な手取層群と呼ばれる地層が分布しています。
今回はその中でも有名どころの化石たちを紹介します。

手取層群とは??

手取層群とはジュラ紀中期から白亜紀前期の約2億~1億年前の泥岩や砂岩、礫岩の地層です。
この時代の日本はユーラシア大陸の一部でした。

手取層群の代表的な地層は石川県の手取川付近に見られるのでその名前がついていますが、福井県・岐阜県・富山県・新潟県にも分布しています。

手取層群分布図

手取層群の分布図:石川県白山自然保護センター(2010)より

桑島化石壁って?

手取川ダム沿岸で、国道157号線の対岸に見える手取層群のです。
昔から葉っぱの化石が採れることで有名だったらしく、天然記念物に指定されていました。
そのためあまり調査されていなかったのですが、もともとの桑島化石壁が手取川ダムに水没する前に大規模な発掘調査が行われました。
現在の化石壁は、もともとの化石壁よりも上の崖です。
この化石壁の手前に道路があるのですが、崖からの落石が危険なため、背後にトンネルが掘られました。この時も化石がたくさん発見されています。

それらの調査の結果、植物化石だけでなく、恐竜の歯や爪の化石、トカゲカメ哺乳類昆虫など多数の動物化石も発見されています。
時代は約1億3000万年前、ジュラ紀です。

桑島化石壁

桑島化石壁の写真:石川県白山自然保護センター(2010)より

桑島化石壁_ティラノサウルス類歯

桑島化石壁から発掘されたティラノサウルス類の歯の化石
出典:石川県白山自然保護センター(2010)

恐竜の足跡化石!!

桑島化石壁から少し離れた場所で、恐竜の足跡化石が発見されました。
場所は手取川ダム沿いの桑島化石壁の東の方の山奥です。

手取川ダム

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

足跡化石発見場所

手取川から5km以上も東の、道路も無い山奥です。これは気軽に行けるような場所ではないですね(笑)

そして、足跡化石はこれです!

恐竜足あと化石

恐竜の足跡化石:松岡ほか(2001)より

結構分かりやすくないですか?

研究者によるスケッチもお見せしましょう。

恐竜足あとスケッチ

足跡スケッチ:松岡ほか(2001)より

足跡は全部で3つ残っており、同じ恐竜のものだと考えられています。
これだけハッキリしているので、種類もだいたい想定されており、獣脚類だろうと論文に書いてありました。
獣脚類とは、ティラノサウルスなど肉食恐竜類のことです。
足跡のサイズからすると、ラプトル(ジュラシックパークでも出て来る小型の肉食恐竜)の仲間かも知れません。

約1憶年も昔の恐竜の足跡が、こうやって現代に蘇るなんて、感慨深いですよね。

ちなみにこの化石は河床にあるので、川の流れに削られる危険があるとのことで、「保護する必要がある」と論文に書いてありました。
その後どうなったのかは検索する限りでは見つかりませんでしたが、無事保護されてることを祈ります。

桑島化石壁の向かいには博物館があるので、今度、是非行ってみたいと思います。

https://city-hakusan.com/learn/hakusan_dinosaur_park/

今回は、以上となります。
お読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

石川県白山自然保護センター(2010)桑島化石壁.白山の自然誌30、p.21.

松岡廣繁・伊左治鎭司・長谷川善和・山口一男 ・高田考大(2001)石川県尾口村目附谷上流の手取層群に新しい恐竜足跡化石産地を発見.群馬県立自然史博物館研究報告(5),P.39-48.

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