池だらけな農村地帯のナゼ?:岡山県中央部山間地域【ふるさと探訪vol.13】
岡山県の中央部山間地域は全体的に山がちですが、起伏は大きくはなく、やや台地のような地形が広がっています。
そのため場所によっては、山間部でも集落が広がっています。
今回はその中でも、特徴的な地域を紹介します。
場所は?
再確認しましょう。
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
中央部山間地域は上図の④です。
吉備中央町全域と、その周囲8の市町それぞれの一部地域になります。
今回はこの中でも吉備中央町北東部~岡山市北部~久米南町のあたりを見ていきます。
地形を見る
では行ってみましょう!
北東を流れる川は旭川(あさひがわ)。
途中は川幅が非常に狭く、V字谷の渓谷です。
両サイドの山地も含め、険しいイメージですよね。
特に中流域はダム湖になっていて、河川沿いに一切集落はありません。
でも周囲の山地をよ~く見てみると、緩やかな場所に田畑がつくられ、人が住んでいるのが確認できます。
ここは尾根のテッペンが平坦で、人が住んでいそうですよね。
やはり農村地帯になっています。
地質は約1億年~8400万年前の火砕流堆積物(ピンク色)です。
一見、硬そうな地質ですが、古い地質ですので変質や風化が進み、柔らかめで耕しやすいのかも知れません。
拡大するとこんな感じ。尾根も谷も幅が広く平坦ですよね。
今度は対岸の東の山地を見ましょう。
だいぶ小さい縮尺ですが、段々畑または棚田みたいのが見えませんか?
拡大しました。やはり、段々になっていますよね。
やはり農村地帯でした。
地質は先ほどと同じ時代の安山岩の溶岩類。
これも一般的には硬そうな地質ですが、変質・風化が進んでいるのでしょう。
少し南の地域を見てみると、また雰囲気が違います。
尾根が細かくて緩やかな地形は少なそう。
でも拡大してみると、段々の地形がたくさん!
しかも、やたらと池が多くないですか??
池だらけ農村のヒミツ
もちろん農村地帯なら水は必要ですし、池は重要です。
でも、これはいくら何でも多すぎませんか?
これまで見てきた他の農村よりも随分と多い。
これはおそらく、自然に出来たものだからではないかと思います。
地形をよく見ると、尾根や谷が細かく複雑に入り組んでいますよね。これが池が多いヒミツであろうと、私は睨んでいます。
3Dで見ると分かりやすいですね。
尾根や谷が小刻みに入り組んでいて、モコモコしています。
そして池が異様に多い。
ウッヒョー♬
モコモコすぎて、目がチラチラしちゃいますね(笑)
地質は・・・一面、紫色です!!
古生代ペルム紀(約3億~2.5億年前)の斑レイ岩です。
斑レイ岩とは、玄武岩質のマグマが地下深くでゆっくりと冷え固まったもの。もともとは海洋プレートの一部でした。
黒っぽい岩石で、ゆっくり冷えたので結晶のツブツブが大きい(1cm前後くらい)のが特徴です。
結晶の粒が大きいと、温度変化(季節変化や昼夜の変化)による収縮・膨張の影響が大きくなり、粒と粒がバラバラになりやすくなります。
斑レイ岩(出典:産業総合研究所)
特に花崗岩はマサ化と呼ばれ、良く見られる現象です。
また斑レイ岩の場合、部分的に蛇紋岩化している場合もあります。
蛇紋岩とは、玄武岩や斑レイ岩が水の影響で変質してできる岩石です。
風化すると軟らかくてロウソクの蝋のような質感で、爪で簡単に削れます。そして水に触れると粘土になるんです。
蛇紋岩(出典:産業総合研究所)
このマサ化と蛇紋岩化の影響で、長い歴史の中で頻繁に小規模な地すべりや土砂崩れがあちこちで起こったと考えられます。
そのために尾根や谷が細々と入り組んでいるのでしょう。
崩れた土砂が谷を堰き止め、池ができたと考えられます。
この地域は土砂崩れの多い地域である一方で、土地は耕しやすく池も沢山あって農業に適していたのでしょう。
日本人は災害の多い土地でも、それと向き合いながら、一方の恵みの方も享受して生きてきました。
この地域は、その代表的な場所と言えるかもしれません。
以上、お読みいただきありがとうございました。
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