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西は平穏、東は火山:北東部山間地域③の地質【都道府県シリーズvol.12:北海道part1】

北海道はとても大きいので、全体が見える縮尺にすると地形図が簡略化されてしまうという問題が発生!
拡大するとイメージが全く変わってしまう(;'∀')
そこで地形区分を2~3段階に分けることに。1段階目の区分は下図の通り。

北海道全域_地形区分

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

前回ではルーレットで決めた北東方面の③地域(上図参照)をさらに地形区分したところまで進んでいます。
それぞれ、③-①、③-②、③-③と名付けています。

地形区分③_番号


谷幅が広い!

この地域の地形を見て真っ先に目が行くのは「川」です。特にこの川。

地形のみ

この地域の中央部を流れる河川です。

中央河川

赤点線で囲った川です。上流まで河川幅が広いです。近くの河川と比べても目立ちますよね。
ちなみに東の川も谷幅広いですが、地域外なのでまた別の機会に(笑)
他にも「川の曲がり方」とか色々と気になる地形があります!


地質は?

気になる地形があるということは、何かしら地質的な"原因"が潜んでいたりします。さてどんな地質なのか?

この地域はそこまで広くは無いので、区分した3地域をまとめて地質の紹介をします!

地形区分③_地質図

20万分の1地質図幅「紋別」:地質調査所より(※筆者一部加筆)

今回は対象地域がほぼほぼ1枚の地質図に収まっています(笑)
はじっこは少し切れてしまってますが、まぁいいでしょう。

赤点線が北東部山間地域③の範囲。青線より北が③-①、緑線より北が③-②、南が③-③地域です。

全体的に見ると、地質の傾向は東西で2つに分けられます。

・西側地域:ある程度大きい範囲で各地質が分布
・東側地域:様々な地質が小刻みに分布し、全体としてモザイク状

こんな感じでしょうか。
もう1つの傾向は、西側は古い地質が多く、東は新しめの地質が多いです。

ではそれぞれの地域を見てみましょう。


③-①地域の地質

さきほどの地質図を拡大してみます。

地形区分③_地質図③-①

主に1万年前より新しい川や海岸の堆積物が中心です。
また泥炭層があちこちに点在しています。泥炭は植物遺骸が分解されずに溜まってできたもの。
この地域の東にはサロマ湖やコムケ湖など海跡湖が多いので、おそらくここでも海跡湖もしくは小規模な水溜まりや湿地があり、そこで育った植物が泥炭になったのでしょう。


③-②地域の地質

地形区分③_地質図③-②

この地域では、北の沿岸部と中央やや東の地域に黄色で塗られた地質が見られます。この辺りは新第三紀中新世の後期(約800万年前くらい)の砂岩・泥岩・凝灰岩などです。
また中央やや東には濃い目の茶色が見られ、これも約800万年前玄武岩溶岩です。一部にはハイアロクラスタイトと呼ばれる角礫状のものもあるとのことで、海底火山だったと考えられます。
「ハイアロクラスタイト」については、いずれ別記事で紹介したいです。

また南の方には薄茶色や緑色の地質が広く分布していますが、これらは③-③の地域にもありますので、以下でまとめてお話しします。


③-③地域の地質

地形区分③_地質図③-③

この地域では東西で雰囲気が違っていますよね。
主に西側に広く見られる薄茶色の地質は、中生代白亜紀~新生代古第三紀約1億年前~3000万年前くらい)の砂岩粘板岩(※弱い変成で硬くなった泥岩)などの古い地層です。
そして北西のピンク色は、その古い地層に貫入した花崗岩です。

これらの古い地層の上に、新生代第三紀(約1500万年前~500万年前くらい)が載っています。
西に点在している濃い水色やオレンジや黄緑色の地質は、砂岩・泥岩・礫岩・凝灰岩などの堆積岩類です。
また東部に広く分布している緑色の地質も砂岩・泥岩などの堆積岩ですが、その他は様々な火山の地質です。
モザイク状でカラフルになっているのは火山の地質で、玄武岩・安山岩・流紋岩など色々な成分のマグマが噴火したようです。


北海道の北東山間地域③は、白亜紀~古第三紀は砂岩や泥岩がメインで安定した環境だったのに、新第三紀に一転して東部地域で火山活動が活発になったのですね。

今回は以上となります。
お読みいただき、ありがとうございました。


この地域の記事はコチラ👇


参考文献

佐藤博之・山口昇一(1984)20万分の1地質図幅「紋別」、地質調査所.

松波武雄・八幡正弘・松下勝秀(2002)5万分の1地質図幅説明書「上渚滑」 ,北海道立地質研究所,54 p.

松波武雄(2002)5万分の1地質図幅説明書「滝上」 ,北海道立地質研究所,37 p.

岡 孝雄・田近 淳(2008)5万分の1地質図幅説明書「立牛」 ,北海道立地質研究所,92 p.

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