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硬いハズなのに柔らかい!のナゾ:北海道北東部山間地域③-②【災害から身をまもるvol.17】

前回は北海道の北東③地域のギザギザした谷がなぜできたか?について私の考えを紹介しました。
でもその中で「ここはナゼ?」と思う場所がありました。今回はその謎を追っていきます!

場所の再確認

もう一回、その場所を見てみましょう。

北海道全域_地形区分

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

このの地域内の・・・

位置図

②(つまり③ー②)の中の赤丸の場所です。

位置図02

紋別市の北西部になります。


どんな地形?

では対象の場所の地形を再確認しましょう。

ガリ―浸食範囲_0302

細く深く谷が刻まれるガリ―浸食のように見える谷が並んでいます。
このような地形は柔らかい地質にできやすいのですが・・

ガリ―浸食範囲_03地質03

北側は新第三紀の泥岩(柔らかめ)なのに対し、南は中生代白亜紀~新生代古第三紀の古い時代の砂岩(硬め)です。
北側ならともかく、南側にガリ―浸食が見られるのはなぜ?というのが前回生じた疑問です。


詳しく見てみよう!

ということで、拡大して詳しく見てみましょう。

画像6

やはり細く深く刻まれた谷が目立ちますね。山を挟んだ反対側(東側)とは雰囲気が違います。

画像7

さらに拡大!
うむむ!!この時点で、この地域がどういう場所か分かってしまいました。

地すべり地形

ズバリ!「地すべり地形」です。
現在動いているかは別として、過去に地すべり活動があったのは、地形的特徴からまず間違いないと思います。
上図で赤で囲ったように少なくとも5つの地すべりを判読しました(※筆者の見解です)。

地すべり地形_JShisMap02

地すべり地形分布図:J-SHIS Mapより(筆者一部加筆)

地すべり地形分布図を確認しますと、やはり同じように地すべり地形に区分されていました。こちらの方がもう少し細かいですね。
それにしても、地すべりが多いですよね。
尾根を挟んだ反対側(東側)にもたくさんあります。


地すべりだから削れやすい

まず地質図を見てみましょう。

地質図_地すべり図示

このように冒頭でお話ししたように地質図では泥岩砂岩が図示されていますが、ここは地すべりになっています。
つまり、本当は地すべり堆積物が上を覆っている場所だと考えられるのです。地すべりが動くうちに地層(岩石)はボロボロになっていきますので、当然やわらかい。
そのため水の流れで削られやすく、ガリ―浸食ができたのでしょう。


地質図は何に着目してるか?が問題

ということで「硬いハズの砂岩になぜガリ―浸食が?」の答えは、「本当は地すべりだった」ってことでした(笑)

じゃあ何で「砂岩」と描かれてるの??と思いますよね。

これは地質図が何を目的につくられているか?の問題なんです。
ほとんどの場合は「地下に何があるか?」を示すためにつくられています。

地面には普通、がありますよね。これを専門用語では表土と言いますが、基本的に地面は表土に覆われています。
ですので地表に見えるものだけで地質図をかくと、ほとんど表土になってしまう。それでは訳が分からないですよね。

そのため地質図は基本的に数m地下にある地質を表現しています。
このとき、地すべりは微妙なんです。小規模なら省略したり、大規模なら図示したりなどなど・・。
その地質図をつくった専門家が何に着目するかに左右されてしまいます。
そして地すべりの場合は「地すべり地形分布図」として別の図に記載されてるので、地質図では省いてしまう専門家が多いのです。

腑に落ちない人も多いと思うかもしれませんが、専門家も人間ですので勘弁してあげてください(;^_^A
というのも、このあたりの地質図、担当者は相当悩みながらつくったんだろうな~と、見ていて感じました。
それについては、別記事でお話ししようと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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