ギザギザな谷地形は新しい?:北海道北東部山間地域③-①~③-②【流域を考える旅vol.7】
北海道北東部の③地域は、沿岸部ほど新しい地質が出ています。
今回はそんな沿岸部付近の川と地質の関係のお話しです♪
まずは地形!
見てみましょう。
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
まずは位置のおさらい。対象地域は上図の③になります。
沿岸部は平坦な地形を中心とし、東がサロマ湖から続く低標高平地が多め、西は台地の方が多いという傾向です。
さあ、拡大してみましょう。
東に見えるのがコムケ湖です(※対象地域外)。
海岸線にほぼ平行なかたちで標高が高くなりつつ、大小様々な川が並んでいますね。
この川、よく見るとガリ―浸食のようなギザギザしたものと、そうでないものが見えませんか?
また山も尾根が細かいものと、そうでないものが見えます。
川を詳しく見る
さらに拡大してみましょう!
対象地域の西半分を拡大しました。
かなりギザギザしてますよね。小さい川や大きい川の支流に見られます。
東半分です。西ほどではないですが、ここもギザギザの谷地形があります。
さらに拡大です。
やはり海に近い地域の方が谷が細かく刻まれているように見えます。
だいだいの範囲を囲みました。赤点線内に小刻みな谷地形が目立ちます。
南東の方にも同じような傾向が続きますが、さらに南東では逆に広くノペッとした谷が多くなります。
地質は?
あれだけ地形の傾向の違いがハッキリしてるということは、地質が原因であろうと思います。見てみましょう!
こちらが西半分。ガリ―浸食のようなギザギザ地形を赤点線で囲いました。
これにシームレス地質図V2をかぶせてみます。
お!だいたいの傾向は見えます。
もう少し拡大!
赤点線内は「薄い水色」「薄い緑色」「薄い黄色」がメインです。
・「薄い水色」
新第三紀中新世(約1500万年~700万年前)の泥岩(海の地層)
・「薄い緑色」と「薄い黄色」
第四紀更新世中期(約100万年~70万年前)の段丘堆積物(河川の砂や礫など)で、「薄い黄色」のほうがやや新しい地質。
それぞれの地質は以上の通り。
新第三紀中新世の泥岩は岩石は岩石ですが、まぁまぁ柔らかいです。
もちろん、モノによって違いはありますが、たいがいはハンマーで叩くと「ボクッ」と鈍い音がして割れます。
第四紀の段丘堆積物は未固結~半固結で岩石にはなっておらず、柔らかめ。
どちらも水に浸食されやすい地質だと考えられます。
一方、南西の灰色や黄色は中生代白亜紀~新生代古第三紀(約8600万年~4800万年前)の古い時代の泥岩(灰色)や砂岩(黄色)です。
これらは古くて硬いので浸食に強く、ガリ―浸食状のギザギザ地形にはなりにくいのでしょう。
新しすぎてもダメ?
今度は東部の方を見てみましょう。
2か所を赤点線で囲みましたが、東の方はイマイチかもしれません。
アップにしました。
細くて深めの谷はできていますが、小刻みなギザギザは見えませんよね。
ちょっと弱弱しい雰囲気。
そしてここより東になると、幅の広いノペッとした谷が多くなります。
地質図をかぶせました。拡大しましょう。
まず東側を見てみましょう。
西にも分布していた「薄い黄色」がメインです。
う~ん?地質は同じなのに、東の谷が弱弱しいのは何故なんでしょう?
さらに南東のコムケ湖の方まで見ていくと「さらに薄い水色」がメインになっていき、これは約1万年前の河川堆積物などで、さらに新しくなります。
つまり同じ時代の段丘堆積物でも、南東ほど段々新しくなるのでしょう。
新しいと地層は柔らかくサラサラと崩れやすい。
つまり谷は狭く深くはなりにくく、広く浅くなりやすい。
その影響で、谷のカタチは南東になるにしたがい「細く弱弱しい(浅い)→幅の広いノペッとした谷」と変わっていくのでしょう。
ギザギザの谷地形は地層の硬軟の絶妙なバランスで出来ているのですね!
ちなみに西の小さな、この範囲。
北は新生代中新世の泥岩で同じ地層ですが、南の黄色は古い時代の砂岩です。つまり硬めの地層です。
ここで何故ガリ―浸食状の谷ができるのか?は、どうやら別の理由がありそうです。
それについては、また次回!
お読みいただき、ありがとうございました。
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