経験則が持つ意味とは?:"地すべり地形"で頭の体操~その1-4~:埼玉県中西部平坦~中山間地域【災害から身を守るvol.34-4】
埼玉県秩父市のとある地域では、多くの地すべり地形が並んでいます。
地すべり地形は災害を引き起こす場合がありますが、地形的特徴があるため、事前に見抜くことができる場合が多くあります。
事前に見抜いて準備をしておけば、災害を防いだり軽減できるため、地すべり地形を見抜くテクニックは非常に重要です。
さて、前回から引き続き「お題」の地すべりを解読していきましょう。
「経験則」の意味とは?
前回は「地すべりの厚さ(最大層厚)は、地すべり幅の1/7程度」と言う経験則を紹介しておきながら、「それだけでは不十分」とお話ししました。
その理由をお話しする前に、そもそもこの経験則が持つ意味について説明したいと思います。
地すべりは摩擦とのせめぎ合い
この世のすべての物質がそうなのですが、摩擦が無ければ一定の場所にとどまることはできないですよね。
地すべりも摩擦がゼロなら、あっという間に崩れます。
普段は動かないけど大雨が降ると動く・・地すべりとは、そんな絶妙な摩擦のバランスを持っているのです。
地すべりの摩擦を担っているのは「すべり面」です。
すべり面には種類があり、縦断図では主に、上図のように主部(低角度)と背面部(急角度)に分けられます。
主部は、秩父市のこの地すべりの場合、泥岩の層理面を起源にしていると考えられます。もともと層理面という分離面があり、しかも摩擦の小さい泥岩なので、そこが滑りやすいと言うことです。
すべり面の中で一番すべりやすい(摩擦が小さい)のが、このすべり面主部で、それ以外は摩擦は大きめです。
実は地すべりは、すべり面主部とそれ以外の面の摩擦のせめぎ合いで、停止したり動いたりしていると言っても良いのです。
横断図で検証してみる
横断図を見てみましょう。
こんな感じで切ってみましょう。
これはそれっぽく適当に描いたものです(;^_^A
実際に想定されるすべり面ではないので、あしからず。
すべり面主部は層理面と並行で泥岩の内部にありますが、すべり面側部は切り立っているため、泥岩~砂岩~礫岩とまたがっていますよね。
紙やすりをイメージすれば分かりやすいと思いますが、目が粗いほど、こするのに力を入れねばなりません。つまり摩擦が大きい。
地質も同じで、特殊な場合を除き、摩擦力は礫岩>砂岩>泥岩の順番になります。つまりすべり面の背面部や側部は摩擦が大きめです。
そして上図を見てピーンと来た方もいるかも知れません。
地すべりの幅に対して、深ければ深いほど、すべり面側部は長くなりますよね?これはもちろん、すべり面背面部も同じことになります。
こんな感じです。
地すべりの幅は同じで、すべり面深度が浅い場合と深い場合(上図)で見比べてみましょう。
抵抗力が強いのは下図の方だと直感的に分かると思います。
つまり「地すべりの厚さ(最大層厚)は、地すべり幅の1/7程度」と言う経験則の意味とは、摩擦の小さいすべり面主部と摩擦の大きい側部・背面部のバランスと言うことなのですね。
すべり面の横断形状を考える
そこで重要になってくるのが「すべり面の横断形状」です。
つまりは、横断図で見た場合のすべり面のカタチのこと。
上図でのすべり面のバランスは、あくまですべり面形状が左右対称の場合です。地すべりは自然現象です。必ずしも左右対称とは限りません。
と言うことで、次回ではすべり面の横断形状を検証していきましょう!
お読みいただき、ありがとうございました。
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