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開いたあと、ギュッと閉じる!:北部山間地域【都道府県シリーズvol.27長野県part1】

長野県は盆地でも標高が300m以上と全体的に標高の高い県です。
今回はそんな長野県の北部山間地域の地形と地質についてお話しします。

場所の再確認

場所を確認しましょう。

区分

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

長野県の北部山間地域は上図のです。

地域範囲

9市町村それぞれの一部地域になります。


地形を見る

では行ってみましょう!

地域範囲_地形
画像3

上が地域範囲をかぶせたものです。
起伏も多いですし、バラエティに富んだ地形ですね。
火山らしき地形が縦に3つ並んでいるのが目立ちます(一番北は新潟県)。
また火山の周囲は火山噴出物の影響か、なだらかな地形になっています。


大地の成り立ち

地質図を見てみましょう。

地質図_地域範囲

この地域は地質学の世界で有名な「フォッサマグナ」の北西部に相当します。フォッサマグナとはラテン語で「大きな溝」という意味で、ドイツ人地質学者のナウマンが名付けました。
中生代白亜紀以前(約6600万年前以前)の古い地質でできた岩盤が、この場所で深くまで落ち込んでいて、その溝を新しめの堆積物(約2500万年前以降)が埋めるようなカタチになっています。

日本が大陸から切り離される際に真ん中で真っ二つに割れた跡と言われていますが、まだまだ詳細はハッキリ分かっていません。

このフォッサマグナの西の端っこは糸魚川(いといがわ)ー静岡構造線という断層です。

地質図_地域範囲02

地質図では断続的に描かれて目立たないので、赤線でなぞってみました。
正確ではありませんが、だいたいこんな感じです。

この地域の大地の成り立ちは、大きく分けて3つのステージになります。


〇ステージ1:海洋プレート起源の地層が大陸に付加し、堆積物が覆う

①:古生代オルドビス期~シルル紀(約4億8500万~4億2000万年前)橄欖岩(かんらんがん:玄武岩が地下深くで冷えた)や蛇紋岩(じゃもんがん:橄欖岩が化学変化したもの)、古生代ペルム紀後期(約2.7億~2.5億年前)混在岩(泥岩など海底堆積物が大陸にくっつく際にグチャグチャになった)が大陸の一部になる。

②:中生代ジュラ紀前期(約2億~1億7400万年前)海や河川などの堆積物がたまり、その後の新生代古第三紀前期(約6600万~4800万年前)の火山活動で流紋岩質の溶岩類が噴出します。

地質図_01

赤で囲った範囲の濃い紫色が橄欖岩・蛇紋岩、灰色が混在岩です。
北の囲みの南部の緑色、南の紫の中にポツンと見える緑色がジュラ紀の堆積岩、北の囲み東部の薄茶色が流紋岩溶岩類です。


〇ステージ2:新第三紀中新世~第四紀更新世中期(約2000万~70万年前)
日本は大陸から離れ、海や河川などの堆積物が溜まったり、火山活動が起こったりします。
東西で割れて広く深い溝ができたため、大量の堆積物が溜まり続けます。

地質図_02

赤の実線はさきほどの古い地層。これらと赤点線で囲った場所以外の全てが、このステージで堆積しました。
水色や灰色、薄い黄土色が砂岩泥岩などの堆積岩類で、西の濃い灰色や薄茶色が火山岩類(玄武岩や安山岩)です。

そして広がった溝は、ある時から閉じ始めたため地層が圧縮されて褶曲(しゅうきょく:地層が曲がること)します。

地質図_03

5万分の1地質図の断面図の位置を上図の赤線で図示しました。
線の位置は目分量で図示したため正確ではありませんし、色使いも違いますので「曲がっている」のをイメージしていただければ良いかと思います。
①、②断面図とも左が北方面です。

断面図図_①

①断面図:5万分の1地質図幅「戸隠」より

断面図図_②

②断面図:5万分の1地質図幅「中野」より


〇ステージ3:第四紀更新世中期~現在(約70万年前~現在)
地域範囲外の西と範囲内中央付近で火山活動が起こります。
中央付近の火山は南北方向に3つの火山が連なり、南が一番古く北ほど新しい火山です。

地質図_02

赤点線で囲った範囲です。茶色が安山岩玄武岩質安山岩の溶岩類で濃い色ほど新しい地層です。
周囲の薄い緑色は火山噴出物が崩れて堆積した扇状地などです。
また北西の灰色(黄色で囲んだ範囲)は地すべり堆積物です。この縮尺の地質図でわざわざ図示するということは、大きな地すべり地帯なのでしょう。

今回は以上となります。
フォッサマグナが圧縮した様子を断面図での地層の曲がり具合で実感できたでしょうか?
お読みいただき、ありがとうございました。


この地域の記事はコチラ👇


参考文献

長森英明・古川竜太・早津賢二(2003)戸隠地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅).産総研地質調査総合センター,109p.

赤羽貞幸・加藤碵一・富樫茂子・金原啓司・宇野嘉一(1992)中野地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅).地質調査所,109p.

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