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カーブ!カーブ!の果てに取り残された土地?:岩手県北東部山間・高山地域【流域を考える旅vol.2】

岩手県北東部の山間・高山地域の南部、岩泉町市街地付近を流れる小本川の下流域はグルングルンと急カーブな蛇行が連続する河川です。
今回はこの流域に見られる興味深い場所のお話です。

場所の確認

小本川は岩手県北東部、岩泉町を西から東へ流れています。

市町村図示_名前

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

小本川位置図

図中の赤丸より下流側で急カーブの蛇行が増えてきます。


取り残された??

さっそくズームして地形を見てみましょう。

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少し「奇妙」な場所があります。

取り残された

赤線で囲った場所、やや幅広く細長い範囲で緩やかで少しノッペリした感じの地形です。周囲と比べても目立ちますよね。
沢がそれぞれ東西に流れて小本川へ合流してますが、源流が非常に接近していて分水嶺としては弱弱しい。

さらにアップで見てみましょう。

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ゆるやかな土地ですし、やはり集落がありました。まだつと読むようです。
そしてこの東を南北に流れる川は小本川の支流ですが、「松橋」のあたりは谷幅が広く、平坦な土地が広いですね。

取り残された_昔の川?

もしかしたら昔の小本川は、このように「馬立~松橋」を流れていたかも知れません。
そしてそれが本当かも?と思える地形が周囲に見られます。
赤点線で囲った場所は標高が高めですが、平坦な地形です。
これらは高い場所で標高300~320mくらい。馬立の谷は高い場所で300m程度です。
河川は地面を浸食し、だんだん低い場所を流れます。つまり昔は少し高い場所を流れていました。
ですので過去の小本川が図のように流れていても不思議ではないですね。


地質も確認してみる

また地質を見ると、さらに「なるほど」となります。

取り残された_地質

過去の小本川が馬立を流れてたとして、現在の支流をなぞると、このような流路が想定されます。
小本川がナゼ途中から断層沿いを流れなくなったのか疑問でしたが、これで分かりました。
以前は少なくとも松橋付近までは断層沿いを流れてたのが、オレンジの地質を避けるように南へ曲がったと見えますよね。

このオレンジ色の地質は、新生代古第三紀(恐竜が絶滅した直後の時代)の「デイサイト~流紋岩の貫入岩体」です。
デイサイトとはマグマの成分が安山岩と流紋岩の中間のもの。
地上に溶岩として噴出はしませんでしたが、地表に近い場所で冷えた岩石です。これは硬いです。
断層の活動の影響を受けたとしても、周囲より硬いと思われます。
また分布のカタチを見ると、断層の活動とほぼ同時期かも知れません。というのは、断層に切られてないし、断層を切ってもいないから。

少なくとも周囲のもっと古い地層よりは断層活動の影響は少なく硬い地質なのでしょう。だから河川が削りにくく、より削りやすい南へ進路を変えたと考えられます。

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でも下流域はこのように、狭窄部の多い深い谷です。
おそらく長い年月の間に、どこかが堰き止められ河川が氾濫することは何度もあったでしょう。

取り残された_昔の支流

そのうちに、青点線の「かつての支流」の侵食が進み、現在の流路になったと考えることもできそうです。

いかがでしたか?
急カーブの蛇行の多い小本川。長い年月の間にアチコチで流れる場所を変えてきた歴史があるのかも?と考えると興味深いですよね。

お読みいただき、ありがとうございました。

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